Debianの末裔対決:最終章

ここ何週かに渡って「Debianの末裔対決」と題したレビュー記事を連載してきたが、本稿はその最終章である。これまで、LibraNetLindowsOSMepisXandrosについて見てきた。本稿では、今までのレビュー内容をもう一度振り返ってみようと思う。また、読者には今回の連載記事に関するフィードバックをお願いしたい。今後のLinuxレビュー記事の参考にさせていただく。
背景

どのレビューでも、同じハードウェアを使用した。マシンは、Fry’s Electronicsで購入した安価なデスクトップマシン。800MHzのVIAプロセッサ、128MBのDRAM、30GBのハードディスク、52倍速のATAPI CD-ROMドライブが搭載され、メインボードにはAC97 Codecのサウンドカードと3Dグラフィックアクセラレータビデオカード、SiS630Eチップセット、そして10BaseT/100BaseTXのNICが組み込まれている。ほかに、Sampo Alphascan 711S 17インチモニタも使用した。レビュー中、これらのハードウェアに障害や問題は発生しなかった。すべてのディストリビューションが問題なく動作した。

レビューでは、各ディストリビューションをインストール、接続、セキュリティ、ソフトウェア保守、無料(代金に含まれた)サポートの5つのカテゴリで比較した。価格も紹介したが、これは実際にテストしたバージョンの小売価格とした。この5つのカテゴリについてそれぞれスコアを付け、その平均を総合評価とした。

インストール

手間がかからず、初心者にもやさしい一方で、経験を積んだ上級ユーザが自分の好みに合わせてセットアップできる余地も十分に残してあるのが、理想的なインストールと言える。インストールを終えた時点で、セキュリティが確保され、接続の設定が完了し、すぐに使える状態になっていれば、何も言うことはない。

このカテゴリでは、LindowsOSとMepisがトップを分け合った。LindowsOSの評価が高くなったのは、ほかのディストリビューションに比べてインストールが際立ってやさしかったからだ。Mepisについては、インストールがやさしい点と、上級ユーザ向けの選択肢が広く用意されている点を高く評価した。

接続

キーボード、マウス、モニタを除外したテスト環境で、接続性を試した。LAN上のDHCPサーバ経由でインターネットにアクセスし、また私が普段使用しているデスクトップマシンに接続されているCUPSプリンタで印刷機能を調べてみた。一番スコアが高かったのは、またもやLindowsOSとMepisであった。どちらも、ユーザが何を入力しなくても、インターネットと共有プリンタに接続した。動作にも、まったく問題がなかった。

セキュリティ

このカテゴリの評価は、インストールから始まる。理想は次のとおりだ。サービスはデフォルトでオフ、ファイアウォールはデフォルトで有効になっていること。優れたセキュリティ対策が積極的に取り入れられ、特にスーパーユーザと通常ユーザがきちんと区別されていること。インストール作業の最後に、セキュリティフィックスのチェックがリアルタイムで実施されること。セキュリティフィックスがあれば、自動的に適用されること。インストール完了後も、ユーザがセキュリティフィックスのチェックと適用を簡単な作業で行えること、そしてそうした作業が奨励されること。

このカテゴリでは、MepisとXandrosがトップを分け合った。Mepisは、ファイアウォールが自動的にインストールされ、セキュリティ対策も申し分ない。公開されているほとんどのサービスが、デフォルトではオフになっている。Xandrosでも、積極的にセキュリティ対策が取り入れられている。たとえば、rootでGUIを実行すると、デスクトップの背景が明るい赤になり、ユーザに注意を促すようになっている。ファイアウォールはインストールされなかったが、その代わりにほぼ万全の対策が取られていた。インストールの最終段階で、ユーザはセキュリティアップデートをチェックし、必要に応じてインストールすることが強く推奨される。適用するのも簡単で、一度クリックするだけだ。

ソフトウェアの保守

ソフトウェアの保守に関しては、LindowsOSとXandrosがすばらしい。Click N Runの使い勝手は抜群だ。Xandros Networksも負けず劣らずである。

サポート

パズルの最後のピースはサポートだ。MepisとXandrosがトップにランクされた。Mepisのユーザは、MepisのWebサイトに開設されたフォーラムでオンラインサポートを受けることができる。実際にフォーラムを覗いてみると、Mepisの作者であるWarren Xが非常に積極的にユーザのさまざまな問題に対処していることがわかる。同じWebサイトには、Mepis専用のHowToがある。#mepisというIRCチャンネルも、irc.freenode.netに用意されている。

Xandrosには、電子メールによる技術サポートが付いてくる。Deluxe Editionは60日間、Standard Editionは30日間だ。Webサイトには、FAQ、検索可能なナレッジベース、ユーザフォーラムが用意されている。Mepisと同じく、IRCチャンネルがirc.freenode.netに用意されている。

結論

1つ確かなことは、DebianのDNAが優秀なLinuxディストリビューションへと引き継がれていることだ。その最後の勝利者として登場したのが、92点の評価を獲得したMepisである。第2位が88点を獲得したLindowsOS、次いでわずか1点差87点のXandrosが続く。最後に取り上げたLibraNetは80点という結果に終わった。

確かなことはもう1つある。スコアを見ただけでは、各ディストリビューションを正当に評価したことにはならないことだ。どのディストリビューションも大変すばらしい。比較に使用した基準とは別にそれぞれの良さがある。その気持ちを込めて、各ディストリビューションに何か特別な賞を贈ろうと思う。

LindowsOS

WindowsからLinuxへの移行を考えている友人に勧めるなら、文句なくLindowsOSだ。「最優秀初心者大賞」を授与したい。レビューでも触れたが、このような優れたLinux製品に出会えるとは思っていなかった。優れたディストリビューションとして今後さらにLinux市場の信頼を勝ち得ることを願っている。そのために何よりも必要なのは、コミュニティの関与とサポートだ。ほかのLinuxディストリビューションと同じような状況になればと思う。

Mepis

岩だらけのウェストバージニア州で生まれた小さなディストロが、すべてのカテゴリで高いスコアを獲得し、頂点に立った。Mepisに弱点があると言われても私は信じない。Mepisのコミュニティを作れば、熱狂的ファンが大幅に増えるはずだ。「成功する可能性大で賞」を授けたい。

Xandros

私の印刷環境では、インストールの重要な部分でバグが見つかった。この不運がなければ、Xandrosが最高スコアを獲得していたはずだ。見た目がよく、初心者にもベテランのLinuxユーザにも魅力を感じさせる。「最優秀ルックス賞」を授与したい。

LibraNet

私のスコアだけでLibraNetを判断しないでいただきたい。私にはLibraNetの良さがわからないだけだ。私がただ1人の評者というわけでもない。初心者には向かないディストロだが、とても印象的な設定ツールが1つある。今回の連載で取り上げたディストリビューションだけではなく、私がこれまで目にしたあらゆるディストリビューションの中でもとりわけすばらしい。AdminMenuは、システムのほぼすべての要素を調整できる、美しくエレガントで力強いツールだ。LibraNetには、誰もが欲しがる「Debianユーザなら誰でも選択するで賞」を授与したい。

今度は読者の番

これで言いたいことはすべて言った。今度は読者の意見をお聞きしたい。末裔対決という形で比較したが、どう思われただろうか。今後、同様のレビューがあれば読みたいと思われただろうか。基準についてはどうだろう。カテゴリはこのままでかまわないだろうか。インストールよりもセキュリティに重みを置いた方がよいだろうか。どのアプリケーションがインストールされるかよりも、インストールされたアプリケーションの数の方を重視した方がよいだろうか。ぜひコメントを寄せていただきたい。