GNOMEデスクトップでEpiphanyよりFirefoxに高評価を与える理由

Mozilla FoundationとGNOME Foundationの協力や結束に関する最近のさまざまな報道を機に、私は、GNOMEのWebブラウザEpiphanyとMozillaのFirefoxとを比較してみることにした。Epiphany 1.0.6とFirefox 0.8をDebian “Sarge” GNU/Linuxシステムにインストールして、1週間ほど使ってみた。その結果、Firefoxの方が間違いなく優れたブラウザだという感想を抱くに至った。

Firefoxは完璧なものではない。実のところ、Firefoxに関して私が問題と思っている点のいくつかは、Epiphanyに関して私が気に入っている点のちょうど裏返しである。Epiphanyは完全にGNOMEネイティブのツールキットで作られているため、その見た目や使用感は、まさにデスクトップコンポーネントの1つのようだ。その点に関しては、Firefoxはまだ少し違和感があるように思える。たとえば、Firefoxのメニューシステムが周囲に溶け込んで見えるのは、実際にメニューを使っていないうちだけだ。いざメニューを使い始めると、GNOMEネイティブのメニューとの違いにすぐに気付く。Firefoxのメニューのタイトルは、クリックしたときに強調表示ではなくへこんだ表示になるし、メニューのリスト項目には、GNOMEのテーマの色がデフォルトで適用されない。

また、FirefoxのPrint(印刷)ダイアログボックスとSave As(名前を付けて保存)ダイアログボックスにも、統一性に関する問題を見付けた。GNOMEネイティブのダイアログではなく、Mozilla標準のダイアログが使用されているのである。このため、周囲のデスクトップからは浮いて見えてしまう。

端的に言うと、Firefoxは、GNOME Human Interface Guidelinesに準拠すれば、ずっといいものになるだろう。このガイドラインは、GNOMEのデスクトップ上で違和感のないルック&フィールを持つアプリケーションを開発するための支えになるという明確な目的のもとに書かれている。Firefoxが一級品のGNOMEコンポーネントとみなされるようになるためには、ツールキットの問題と統一性に関する問題が修正されることが必要だ。

とはいえ、Firefoxには、Mozilla Foundationによる専門的なテクニカル・サポートが付いている。一方Epiphanyは、Firefoxと同じGeckoレンダリング・エンジンをベースとしているものの、こうしたサポートをはじめ、いかなる種類の商用サポートも用意されていない。また、私は最近、Mozillazineのオンライン・ユーザ・サポート・フォーラムを初めて覗いてみたのだが、そのスレッドの数、投稿の数、ユーザの数に完全に圧倒された。私は、フォーラムというものについては大ベテランでもなければ初心者でもないが、39,000人以上の登録ユーザと500,000以上の記事を抱えるMozillazineのフォーラムは、私がこれまでに見てきた中では最もボリュームが大きい。これは単なるコミュニティではない。1つのムーブメントである。

Firefoxの長所は他にもたくさんある。たとえば、Windowsマシンでも利用できる点だ。これは、ユーザがオープンソースへ移行するうえで大いに助けとなる。使い慣れた環境でオープンなアプリケーションに徐々に接していくことができるからだ。

Firefoxには、ブラウザに別のテーマを適用できる機能がある。このため、ユーザがFirefoxの見た目を周囲のデスクトップより際立つものにしたいと思ったら、そうすることができる。これはEpiphanyではできない。デスクトップのテーマに常に追従するように設計されているからだ。

Epiphanyは、現在のGNOMEではどのデスクトップ上でもなじんで見える。ブックマークの処理などで、非常に斬新なアイデアもいくつか組み込まれている。だが、EpiphanyはFirefoxよりもずっと若いブラウザだ。FirefoxはMozillaブラウザを大きなベースとしており、そのMozillaブラウザは、由緒あるNetscapeブラウザをベースとしたものなのだ。Epiphanyには未熟なバグもいくつか残っており、その結果として安定性が低く、またユーザビリティに欠ける部分もある。これとは対照的に、Firefoxはきわめて安定している。

私がEpiphanyを使っていて煩わしく思うことが多かったのは、たいていはちょっとした不便さである。たとえば、Ctrl+Tを入力して空のブラウザ・タブを新しく開いた後で、手を伸ばしてマウスをつかみ、ロケーション・バーをクリックしなくてはならない。新しく開いたタブのロケーション・バーに自動的にフォーカスが当たらないからだ。

また、明白なバグもいくつか見られた。たとえば、Yahoo! Mailを利用するときに、オンラインの連絡先リストを開き、メールを送る相手を選んで、連絡先リストを閉じたとする。すると、Epiphanyは自動的に検索モード(あるいはそれと似た状態)に入ってしまうようで、検索ダイアログ(Ctrl+F)をいったん開いてからClose(閉じる)を押すまでは、メールの本文を入力することができなかった。

Firefoxが持つ安定性と使いやすさがEpiphanyに備わるまでには、かなりの時間と労力がかかるものと見込まれる。この状況を見ると、こんな疑問がわいてくる。その労力とスキルを、既に上を行くブラウザに投入すればいいのではないか、と。

私は、FirefoxがGNOMEのデフォルトのブラウザになる準備が現段階で整っているとは思わない。だが、そのような動きは避けられないと思うし、期待を寄せてもいる。Firefoxはすばらしいブラウザだ。Mozillaはすばらしいコミュニティだ。いつの日か、きちんと統合されて安定性や使い勝手に優れた、クロス・プラットフォームで一流のWebブラウザがGNOMEに搭載され、商用のテクニカル・サポートも用意されている――そんな日がやって来るのを、私は心待ちにしている。

Alex Combas──1997年からLinuxにハマっている。最近、自らのレストランを初めてオープンしたばかりだ。