データセンターを中心に普及が本格化するサーバ仮想化技術

 Computerworld 米国版が9月11〜13日にアリゾナ州で開催した「Infrastructure Management World」コンファレンスでは、ITマネジャーやアナリストの多くが、企業のデータセンターなどで、管理コストとハードウェアのコストを節減するために、サーバ仮想化技術を本格的に導入されるようになってきていると指摘した。

 まず、コンファレンス会場で6人のITマネジャーにインタビューしたところ、サーバ仮想化は、マイナス面のない技術であり、トレンドとしても、それぞれのIT部門にしっかりと根づいていると評価する回答が得られた。

 また、来場者400人を対象にコンピュータを使って行ったアンケート調査では、その半数以上がすでにサーバ仮想化技術を導入しているか、導入する計画だと回答した。調査会社IDCによると、サーバ仮想化技術の普及率は、年を追うごとに増加しているという。

 仮想化技術の普及が進むなか、ITマネジャーの間では、経費節減のためオープンソース仮想化製品の導入を検討する動きも出ているが、こうした考え方に懐疑的な人々も少なくない。

 今回Computerworld紙がインタビューした6人のユーザーは、いずれもVMwareの市販仮想化ソフトウェアを使っているが、XenSourceのオープンソース・ソフトウェアをテストしているユーザーも見られた。

 キャピタル・ワン・ファイナンシャルのコーポレート・テクノロジー担当バイスプレジデントを務めるリー・コンドン氏は、「仮想化は、消えることのないトレンドだ」と断言する。同社は、3カ年計画で仮想化ソフトウェアをWindowsベースのサーバに追加しようとしており、この計画が実現すれば、サーバの台数を1,600台から1,100台に減らすことができるという。

 コンドン氏によると、同社ではすでに「実質的な」コスト節減効果が出ているという。ただし、その具体的な効果は明らかにしていない。

 一般に、仮想サーバの運用には、それほど多くのサーバ管理者(およびサーバ本体)を必要としないとされている。コンドン氏によると、キャピタル・ワンは、この技術を使うことで、クレジットカード会社という従来のイメージを突き破り、包括的なサービスを提供する銀行へとすばやく脱皮することができたという。

 新しい事業部門が使用する財務アプリケーションを追加する場合、そのつど専用サーバを導入するという旧来の方法ではなく、サーバの集合体にアプリケーションを追加するという手法で対応することができるからだ。

 コンドン氏によると、従来のシステムでは、新たにサーバを配置するのに8週間程度の期間を必要としていたが、今では2週間で済むようになったという。つまり、キャピタル・ワンが成長していくうえで必要だったアプリケーション開発サイクルの大幅な短縮を実現できたわけだ。

 コンドン氏は、仮想サーバの導入により、基幹業務用であろうとなかろうと、「あらゆる」アプリケーションを稼働させることができるというメリットを現実に享受できるようになったと評価する。ただし、アナリストの中には、組織にとって重要でない日常業務にサーバ仮想化技術が使われる例が多いと指摘する人も見られた。

 コンドン氏は、ソフトウェアの名前は明らかにしなかったものの、オープンソース仮想化製品の評価作業も行っていることを明らかにした。同氏は、テストの実績を見て、オープンソース・ソフトウェアを使うかどうかを判断するとしている。

 デトロイト地域に9つの病院を持つデトロイト・メディカル・センターは、3年前から仮想化ソフトウェアを使っており、それぞれに4つの仮想サーバが稼働する20台のサーバを今後さらに増強していく方針だ。同センターのテクニカル・サービス担当ディレクター、ジョン・カラス氏は、仮想化プロセスのおかげで、サーバ管理者を増やすことなく、サーバを40%増強することができたという。

 しかしカラス氏は、医療環境でオープンソース・ソフトウェアを使うことに懐疑的な見方をしている。「だれにも相談することができないという点が問題だ。だれかに相談できるようにするためには、サポート費用を支払わなければならないことになる」(同氏)

 140台のサーバで170の仮想サーバを運用しているアメリカン・モダン・インシュランス・グループの業務担当ディレクター、マイク・シムソン氏も、オープンソース製品に対しては懐疑的だ。同氏は、「オープンソースに関する私の考え方は、『IBM製品を買ったのが原因でクビになった者はいない』という格言と一致する」と指摘する。

 シムソン氏は、仮想化技術を使うことでサーバのメンテナンス費用を節減することができたとしているが、具体的な金額は明らかにしていない。

 サーバ仮想化技術は、比較的規模の小さな企業でも使われている。従業員100人の広告会社レジスターは、VMwareの製品を使って1台の物理サーバ上で仮想サーバを3台稼働させている。

 同社のIT担当ディレクター、ダン・ピーターソン氏は、VMware製品のコストがかさむことから、XenSourceへの移行を検討しており、現在製品のテストを行っていると語る。VMwareの管理ソフトウェアは言うまでもなく有料であり、同社はこの費用を節減したいと考えている。そのため、オープンソース製品をテストするのに何のためらいもなかったという。

 IDCによると、仮想サーバの出荷本数は急激に増加しており、3年前にほとんどゼロであった出荷実績が2006年には50万本近くに達する見通しという。IDCでは、2009年の仮想サーバ出荷本数を12億本と予想している。

 IDCのアナリスト、ミッチェル・ベイリー氏によると、昨年ITマネジャーを対象に実施した調査では、サーバ仮想化技術が広く普及していることが明らかになっており、最近の調査(詳細は未発表)でも、さまざまな用途でさらに普及が加速化しいることが判明したという。同氏は、コンファレンスの聴衆に対し、「仮想化技術の普及の速さにショックを受けた」と語った。

 ベイリー氏によると、現在市販サーバ仮想化製品の市場を支配しているのはVMwareであり、MicrosoftやSWsoft、カサットなどと熾烈な戦いを繰り広げているという。

 同氏は、仮想化製品の普及がこのまま進めば、今後は、仮想環境を効率的に管理するためのツール製品にトレンドが移ってくると指摘している。先ごろオプスウェアが仮想化システムを管理するための戦略を発表したのも、その一例と言えるだろう。

(マット・ハンブレン/Computerworld オンライン米国版)

提供:Computerworld.jp