米国政府、ICANNを引き続き監督下に

 米国政府は今年9月29日、インターネットのDNS(ドメイン・ネーム・システム)管理に関して民間非営利団体のICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)と結んでいた契約が9月30日に終了するが、今後もICANNを監督下に置くと発表した。

 米国商務省の声明によると、今後3年間は、同省がICANNの監督を続け、ICANNの組織としての安定性、透明性、信頼性に関する審査を18カ月ごとに行うという。この点について、ICANNの広報担当者も、「18カ月ごとに実施される審査の結果を参考にして、ICANNの完全独立化の検討が進められる」と話している。

 一方、ICANNでは、これとは別の声明も発表している。同声明によれば、1998年にICANNと商務省の間で取り交わされた覚書は、ICANNの完全独立を見据えて、何点かの「大幅な改訂」が施されたという。例えば、覚書は当初、米政府の役割を「規範的」なものと規定していたが、今回、取り組みの進め方やその対象について、ICANNが任意に決定できるようになった。また、商務省に対して、6カ月ごとにICANNの取り組みの進捗状況を報告するという規定も廃止された。ICANNは今後、商務省ではなく、インターネット・コミュニティ全体に対して、1年ごとに進捗状況を報告することになるという。

 ICANNの議長兼CEO、ポール・トゥーミー氏は記者会見で、「商務省との契約を更新したことは確かだが、規定は、以前よりはるかに緩やかで、完全独立に向けた建設的な要素を持つものになった」と話した。また、ICANNの理事長であるビント・サーフ氏も、「今回の改訂でICANNが獲得した立場には、非常に満足している。外部からの助力を得ずとも機能できる組織へと脱皮するため、さらに階段を上っていこうと決意している」とコメントした。

 こうした商務省やICANNの声明に対し、多くの識者は、ICANNの独立はとうに実現されていてしかるべきとの見方を示している。米国がDNS管理に深くかかわることで政治的な摩擦が生じ、結局は、インターネットの国際的な発展が阻害されているというのだ。

 対照的に、米政府がICANNを監督下に置くことは必要不可欠であると考える人々も存在する。米政府が手を引いた場合、ICANNがDNS管理業務全体を単独で実行できる保証はどこにもなく、インターネットのセキュリティと安定性が揺らぐおそれがあると、彼らは主張している。

 今回の件に関して、商務省は7月に公聴会を開き、意見書も募集していた。同省には、およそ700件のコメントが寄せられたという。同省は、「商務省の関与の下で、ICANNの完全独立化へのプロセスを引き続き進める」という意見が大勢を占めたことを明らかにしている。

(ホアン・カルロス・ペレス/IDG News Service マイアミ支局)

提供:Computerworld.jp