IBM、SMB市場での競争力強化に向け「z9」メインフレーム基盤を強化――仮想化/セキュリティ機能を拡充し、コミュニティ・サイトを新設

 米国IBMは6月21日、急成長するSMB(中堅/中小企業)市場で繰り広げられているHP(HP)やSun Microsystemsとの顧客獲得競争に勝ち抜くことを目指し、新たにWebコミュニティ・サイトを開設するとともに、仮想化ソフトウェア「z/VM」の強化版およびITセキュリティ・ソフトウェア・スイート「Tivoli zSecure」の新版の提供を開始することを明らかにした。

 新サイト「IBM DESTINATION z」は、顧客がサーバからメインフレームへの移行ノウハウを共有できる仕組みを備えており、オンライン・ユーザー・コミュニティとして機能する。

 一方、z/VMの強化版は、従来より多くの仮想メモリをサポートしている。また、Tivoli zSecureの新版は、脅威の監視やコンプライアンスの徹底を支援する。

 新たに提供が開始されるTivoli zSecure V1.8.1は、IBMが今年第1四半期にコンサル・リスク・マネジメントの買収によって取得した技術を利用して開発された。IBMは、2011年までに総額1億ドルを投じてメインフレーム・プラットフォームを簡素化する戦略を展開しており、同社の買収も同戦略の一環として行われた。

 この戦略は、ハイエンド・サーバに代わる選択肢として同社のメインフレーム・コンピュータ「System z9」の販売を拡大することを目的としている。

 IBMはz9のエンタープライズ・クラスのモデルを大企業に、ビジネス・クラスのモデルを中小規模企業に販売している。IBMのシステム・アンド・テクノロジー・グループのSystem z担当ゼネラル・マネジャー、ジム・スターリングス氏は、顧客は省電力型のメインフレームを利用することで、SunやIntelのプロセッサを搭載したサーバを使用するよりもコストを抑制できると強調している。

 「メインフレームは顧客の信頼を得ており、これは10年以上にわたって見られる傾向だ。その要因は、メインフレームの電力効率の高さにある。高速なチップを多数搭載するサーバは、膨大な電力を消費する。だが、そうした電力コストの負担は小規模企業にとっては大きすぎる」(同氏)

 スターリングス氏によると、メインフレームはその効率的なアーキテクチャにより、金融サービス会社やヘッジ・ファンドなど、膨大なデータ処理を必要とする顧客にとって魅力的な選択肢になりつつある。メインフレームに魅力を感じる顧客層は急速に拡大しており、その中には中堅の銀行なども含まれるという。

 同氏は、「SMB顧客は、2年ごとにインフラを更新するのはコスト的に無理だと考えている。その理由は、ハードウェアが高いというよりも、むしろ管理担当者のトレーニングに膨大な費用負担がかかることにある」と説明する。

 「顧客からは、『経済性の観点から、メインフレームへの移行を進めたい』という声が聞かれる。彼らは、どのプロセッサが高速だといった宗教論争には関心がなく、経済性に優れたソリューションを求めている」(スターリングス氏)

 IBMがメインフレーム事業に1億ドルを投資するのは大きな賭けだが、この戦略は成功する可能性もある。実際に、IBMの2007年第1四半期決算では、売上高が前年同期比6.6%増の220億ドル、純利益が8%増の18億ドルという好業績を達成しているからだ。同社はその要因として、ソフトウェアとSystem z部門の堅実な成長を挙げている。

(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)

米国IBM
http://www.ibm.com/

IBM DESTINATION z
http://www.ibm.com/systems/destinationz

提供:Computerworld.jp