FSF、WinHEC 2006会場外で反DRMキャンペーンを開始

今朝(5月23日)、Free Software Foundation(FSF)は、シアトルで反DRM(デジタル著作権管理)キャンペーンを開始した。Windows Hardware Engineering Conference (WinHEC) 2006の参加者がビル・ゲイツの基調講演を聴くためにWashington State Convention and Trade Centerにやってくると、FSFメンバーの小グループと地元の有志が黄色いハザード・スーツに身を包んで彼らを迎え、マイクロソフト製品はDRMテクノロジが搭載されているという理由で ─ これはこのキャンペーンの中心的なスローガンでもあるが ─ 「発想からして欠陥」だと訴えるパンフレットを手渡した。

抗議行動の1時間後、NewsForgeはPeter Brown(FSF常任理事)と、このイベントを準備したHenri Poole(FSF理事)に会い、キャンペーンの次のステップについて話を聞いた。

Brownによると、この日のイベントは、今後数ヶ月にわたって全米各地で展開される反DRM抗議行動の第一弾だ。「メーカーに圧力をかけ、DRMを消費者問題として提起するために、この活動をマイクロソフトを始めとするDRMディストリビュータに対してたたみかける予定です。私たちが発信するメッセージはこうです。”このようなデバイスは、意図的に欠陥を持たせて流通させられる” “このようなデバイスは、本当ならはるかに多くのことができるのに、ハリウッドと大手メディアの強い要求からわざと欠陥のあるものとして作られる” “このようなデバイスを自宅あるいはポケットの中でネットワーク化すると、実質的に自分の行動を監視させるシステムを大手メディアのために作ることになり、自宅と自分の行動を制御する力を彼らに与えるも同然になる”」

ゲリラ・イベントとして計画されたため、この日の抗議行動は数日前まで秘密とされた。Electronic Frontier Foundationがシアトルのメンバーに警報を発し、昨日になって情報がBellingham Linux Users’ Groupメーリングリストに投稿されたものの、シアトル・ダウンタウンのPike St.と7th Ave.が交差する角に朝8時に集合した約40人の支援者は、いったいどんな方法で抗議行動を展開するのか、そこで実際に路地に潜り込んでハザード・スーツに着替え、コンベンション・センターの正面へ行進するまで、ほとんど知らなかった。

DRM protest in Seattle
シアトルの反DRM抗議活動

「チラシを手渡し、話しかけ、あたりを走り回ってから、隊列を組んで行進し、ちょいと騒いでやりました。基本的には、みんなハザード・スーツの中だったので、顔はわからない状態でね」と、Pooleは笑う。

今回の行動へのWinHEC参加者の反応は「驚くほど好意的」(Brown)だった。少なくとも1人の参加者は、一緒に記念写真まで撮られた。「たいていの人は話に応じ、仲間に入りたい、”俺たちもDRMは大嫌いさ”と言ってくれました。拒否反応を示したのは、たった数人です。ある人は「なんだい、最新の映画が観られなくなってもいいのか?」と言いましたね。得られたコメントがそれでした。問題の核心をぐさりと突いてますよ」

通行人も全般的に友好的だった。Brownは言う。「ここはマイクロソフトのお膝元、テクノロジの街ですからね。大勢の人がこの問題を知ってます。そう、みんなとても好意的だったんですよ」

警備員はコンベンション・センターのエントランスから見ていたが、「僕らの行進を眺めてニヤニヤしてましたよ。おもしろかったんでしょうね」とPooleは言う。

シアトルのニュース局のカメラマンであるデモ参加者を除き、地元の報道メディアには取り上げられなかったが、BrownとPooleは気にしていない。「手始めの小さいイベントです。驚きなのは、米国で技術屋がこういった活動をやったのはこれが始めてだということです」とBrownは言う。

BrownとPooleは2人とも、抗議行動は目的を達し、しかも関係者を初めての社会への直接行動に踏み切らせたと口を揃える。「本当に驚きでした。みんな楽しんでいたんですよ」とPoolは言う。

このイベントは、最近のDRM立法化の動きに反対してフランスで行われた街頭寸劇とゲリラ・イベントに触発されたものだ。

今後の活動を調整するため、FSFはdefectivebydesign.org Webサイトを設置した。Brownが「アクション・センター」と呼ぶとおり、このサイトは、反DRM関連資料へのリンクという役割と、活動の参加者が地元の同調者と連絡するための手段という役割の、両方でポータルになることを意図している。「活動を[1つの地域で]起こすのに十分な臨界点に達したら、その地域での状況に合わせたイベントを、それがアップル・ストアの出口調査になるか、ハリウッド映画か製品のリリースを狙った行動になるかはともかく、実行に移す予定です」とBrownは言う。

今後のキャンペーンは、FSFと、技術的な問題を専門とする活動のコンサルタント CivicActionsとの共同作業となる。「実際にリソースを調整し、管理するのは彼らです」とBrownは説明する。彼がキャンペーン・マネージャに任じたのはGregory Hellerだ。「僕らが提供するのは活動の背景となる思想の力ですが、市民活動グループとも協力関係にあります。これは提携であって、クローズド・ショップではありません」

また、このキャンペーンに関してFSFと協力関係にある他のグループとして、フランスでの反DRM抗議行動に参加したEUCD.INFO、国際的な学生グループFreeCulture.orgなどもある。

キャンペーンが拡大すれば、コンピュータに詳しい人たちがその周辺で社会活動への参加者として新しい役割を持って関わるようになると、Brownは期待する。「技術屋として、僕らはメッセージを発する責任があるんですよ。言葉づかいはわかってますし、自分たちの畑ですから。これは、僕らが発信できるメッセージなんです」

抗議行動の準備を振り返ってBrownはこう言っている。「正気の沙汰じゃありません。24時間休みなく、と言いたいですが、それが4週間ですよ。まったく常軌を逸してます」さらに、NewsForgeに掲載された記事「フリーソフトウェアを陥れる罠」を引き合いにして続ける。「このフレーミングを僕らは正しい方向に修正しようとしているんです。僕の考えでは、defectivebydesign.orgでこれができています。消費者問題について語っているんです。実際、僕らは自由なユーザを対象にしています。今回の場合は、僕らの普段の仲間ではなく平均的な人間にとって意味するものについて語っているんです」

Bruce Byfield氏はセミナーのデザイナ兼インストラクタで、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリストでもある。

NewsForge.com 原文