K12LTSPを使用したBrandon小学校の技術改革

アトランタ学区の2人の父兄ボランティアが、同学区のコンピュータ環境に大きな変革をもたらしている。それまで使われていたWindowsワークステーションを、シンクライアントとLinuxの環境に置き換えたのだ。2人が使用したのはK12LTSPである。

Daniel HowardとWilliam Fragakisは、Brandon小学校の「壊れた」コンピュータを直すのに膨大な時間をとられていた。学校のコンピュータはどれも遅く、頻繁にフリーズし、Howardの言葉によれば、「ハードウェアやソフトウェアやマルウェアの問題を山ほど抱えていた」。Howardはこう語っている。「何度も何度も『コンピュータが動かなくなった』と言われ、そのたびに何時間もかけてOSをインストールし直したり、ウィルスにやられたドライバを探し出したりしなければならなかった」。生徒たちはコンピュータの使い方を教わっていなかった。不満を抱えた教師たちが、コンピュータの時間を授業計画に組み込んでいなかったからだ。「教師たちはインターネットやオフィスアプリケーションにしかコンピュータを使用していなかった」。学校にはWindows 98や古いハードウェアをアップグレードする予算がなかったため、HowardとFragakisは校内のコンピュータをなんとか動作可能な状態に保つことに時間を費やしていた。

2005年5月、Brandon小学校のPTA会計に余裕ができたので、校内のコンピュータ環境を改善するには何をするのが一番いいかということで2人に提案が求められた。「そこで我々は、最新型コンピュータをネットワークにつなぐだけでは何の解決にもならないし、一番いい予算の使い方とは言えないと答えた。考えてみるから、我々に任せてもらえないだろうかと返事をしたんだ」とHowardは語った。2人が見つけたのはK12LTSPだった。このディストリビューションは、Brandon小学校の問題を解決するのにうってつけに思われた。K12LTSPを使用すれば、古いハードウェアをハードディスクなしでネットワークから起動するシンクライアントに変えることができるし、ライセンス料金も不要になる。K12LTSPを使用している他の学校の校長にHowardとFragakisが電話で話を聞いてみたところ、どの校長からも、K12LTSPのシステムは大成功だという答えが返ってきた。「『いつでもきちんと稼動している』という話だったので、これこそが正しいソリューションだと確信するようになった。PTAや校長らを説得するのは簡単だった。彼らにとっては、効果が上がりさえすればどんなソリューションでもよかったからだ」。

K12LTSPはFedora Linuxをベースにしているので、それまで教職員が使っていた教育用ソフトウェアの互換性についてはいくつか疑問点があった。しかしそれも大きな問題にはならなかった。「CD-ROMアプリケーションはあまり使われていなかったし、よく使われているプログラムの1つ、Accelerated ReaderはWebベースで配布されていた。標準アプリケーションを使用していた教職員らも、Webベースのアプリケーションに切り替えることに協力してくれた。Web版のアプリケーションは数多くあった」とHowardは語っている。そもそもK12KTSPには、OpenOffice.org、GIMP、Ximian Evolutionなどの基本的なソフトウェアアプリケーションがいくつも付属している。ただし例外として、ある教室では「2,000ドル相当のレガシーソフトウェアを使用しなければならない特殊な事情があるので、その教室にだけはWindows PCを残してある」ということだ。

今や、それ以外の校内PCはすべてK12LTSPを使用している。HowardとFragakisは、2006年の最初の数ヶ月を費やして、追加の端末を導入し、それらを35台のサーバに接続した。大部分のハードウェアは地域の企業が寄付してくれたもので、それに加えて学校側がPTA会計の余剰分で60台のシンクライアントを購入したことで、デスクトップの台数は合計250台になった。「350MHzのPentium II搭載PCでもシンクライアントとして使用するには十分であり、もし企業がこのような旧型PCをどこかに引き取ってもらおうとすればいくらか支払わなければならないところだ」とHowardはSchoolForgeのメーリングリストへの投稿の中で語っている。

「結果として、以前はきちんと動作するPCが1教室あたり1台程度だったものが、今では5~6台になった。教室によっては、8~9台のところもある。教師らも、コンピュータを積極的にカリキュラムに取り入れるようになってきた。教室に1台か2台しかないのであれば、それは珍しいおもちゃにすぎない。しかし5台あれば、クラスの3分の1の生徒が触れられるので、活動の中心にすることができる。これが大きな転換点になった」。

Howardは、企業から寄付された余りのラップトップ端末のスペース管理をどうするかという問題に対して画期的な解決策を考え出した。特別な移動式のカートを作り、生徒が自分の椅子のところに引き寄せてきて、すぐにコンピュータを使用できるようにしたのだ。生徒1人1人にコンピュータが必要とされる特別なクラス活動のときには、このカートを教師が予約することができる。HowardはSchoolForgeの投稿に次のように書いている。「各教室にある5~9台のシンクライアントに12台のラップトップステーションを加えれば、一時的に1人1台の環境を実現することができる。これらのラップトップは常に使用可能な状態になっているので、あるグループから別のグループに引き渡すときは、現在のアカウントからログオフして別のアカウントにログインするだけでよい。また、カートにはUPS電源バックアップが装備されており、それぞれのラップトップはカート上のK12LTSPサーバに直接接続されている。このカートにはプリンタも装備されている」。

デスクトップをLinux化したことは、Brandon小学校にとってさまざまな面でカンフル剤になった。HowardとFragakisの見積もりによれば、Brandon小学校は中古のハードウェアに無料のOSをインストールすることで、Windows XP PCをインストールした場合にかかったであろうコストの90%を節約することができた。しかもこの見積もりには、運用面やサポート面でのコスト節減は含まれていない。しかし、最も大きなメリットは、金額には換算できないものである。

「デスクトップがフリーズしない、あるいは問題をすぐに解決できるということは実に素晴らしいことだ」。2人のもとには、コンピュータが「ただ普通に動作する」という贅沢を実現してくれたことに対して教師や生徒から感謝の言葉がそれこそ山のように寄せられた。

Brandon小学校のケースでは、コンピュータを身近なものにするという効果があった。生徒はただコンピュータについて学ぶのではなく、コンピュータを利用して学習を進めるという状況を自然なこととして受け止めるようになっている。「以前は、子供をコンピュータの前に座らせて『これがマウスだよ』と教えることに重点が置かれていたが、今ではコンピュータがごく普通のものと考えられている。コンピュータはもはや学習のテーマではなく、電卓や教科書と同じようなただの道具と見なされているのだ」とFragakisは述べている。

オープンソースの威力を示す明らかな証拠は、Brandon小学校の試験成績が向上していることだ。Atlanta Journal Constitutionの報告によると、Brandon小学校は標準テストにおいて学区内で1位、ジョージア州で3位の成績を収めている。HowardはSchoolForgeに次のように書いている。「成績は向上しており、特に算数の成績は大きな伸びを示している。どの教師からも、Linux PCのおかげでさまざまな状況が改善されているという話を聞いている」。

アトランタ学区はBrandon小学校のコンピュータ環境の徹底見直しを高く評価し、最新のシンクライアント上でK12LTSPを使用するパイロットプログラムを6地域の小中学校で開始している。HowardとFragakisはこのパイロットプログラムには参加せず、Brandon小学校のITニーズに専念している。

2人はどちらも、Brandon小学校の技術改革はオープンソースなしにはあり得なかったという点で意見が一致している。Howardは次のように述べている。「オープンソースは将来的な成功の鍵を握っている。教育とオープンソースには関連性がある。それは、コラボレーションによって学ぶという性質だ。子供たちはお互いに教えあっている。一部の新し物好きの子供が、何か新しいやり方を見つけ出して、それを他の子供に教えてやる。これは創造と共有というオープンソースの哲学の反映と言える」。

NewsForge.com 原文