ITプランニングの真価

わたしはマネージャあるいはコンサルタントとして広範なITプロジェクトに携わってきた結果、ITプランニングの重要性を認識するようになった。ITプロジェクトを成功に導く重要な要素であるにもかかわらず、プランニングに十分な関心が寄せられていないことが多い。

年月をかけてわたしが導き出したITプランニングの原則には以下のものがある。

  • 効果的なプランニングとITプロジェクトの最終的な成功には直接の相関関係がある。プロジェクト開始前に徹底的なプランニングを入念に行うほど、最終的な結果もよいものになる。
  • 過剰と見なされることもあるが、プランニングに時間と資金を投入すれば、結果の質が高くなるという見返りがある。
  • 作業内容を明確に把握しないうちに性急に”作業に取り掛かる”傾向は、プロジェクトにとって大きなダメージを招くことがある。
  • 過去のITプロジェクトの失敗を客観的に分析すると、プランニングの不備がその失敗に及ぼした影響がわかる。ここでいう”失敗”とは、そのプロジェクトが実運用に至らなかったという場合に限定されない。当初の計画どおりの結果を実現できなかったプロジェクトや、時間と経費の当初の見積もりを超過したプロジェクトも含まれる。
  • 総合的なプランニングへの取り組みには、その過程において、プランニングに携わる者は提案された手法やアクションの波及効果を十分検討せざるを得なくなるという副次的利点がある。考えられるあらゆる影響をプロジェクト開始前に想定しておけば、作業の進行に伴って表出し得る問題を回避しやすくなる。

プランニング工程強化の説得

組織のIT部門が妥当な品質水準の成果物とサービスを一貫して提供できるようにするには、よく練られたITプランニング工程を実施する必要がある。堅実なプランニングには、時間的な計画のほかに効果的な実現を促す適切な原則が必要であり、そうした原則をあらゆるITプロジェクトのライフサイクルに組み込むことが大切だ。

堅実なプランニングの必要性を論じることと、それを組織に導入して運用することは別の話だ。適切なプランニング工程が組織の上層部から支持されない限り、プランニングを一貫して効果的に実施することは難しい。上層部の支持を得るのは簡単なことではないが、それがないと、プランニングを退屈で不毛な作業と見なす者たちは、プロジェクトを急いで始める必要があるという誤った感覚でプランニングを避けて通ろうとしかねない。

ITプランニング強化が上層部から支持されても、ほかから反対の声が出ることもある。ITプランニング強化環境への移行は、何よりも社風などの組織文化に大きく関わる問題だ。組織文化を変えるのは骨の折れる試みではあるが、努力する価値がある。

ITプランニング強化に取り組むなら、以下のような言い分の反対意見を想定しておくことが必要だ。

  • 「プランニングは増長するIT官僚主義の悪い例だ」
  • 「このプロジェクトはとても重要で競合他社に絶対に勝たなければならないから、プランニングなどという無用のお役所的作業にかまけるひまはない」
  • 「柔軟性が必要なのに、プランニングサイクルに束縛されたら柔軟性が制約されてしまう。それよりも、まずは暫定的なプランを立てて、作業を進めながら必要な調整をしていく方がよい」
  • 「プランニングは”分析麻痺”の一形式に過ぎない」
  • 「ITがプランニングに関わっていられる限り、何も結果を出さなくていい」

ITプロジェクトのプランニング強化の成功は、反対意見にどう対抗できるかにかかっている。こうした反対意見を無視したりはねつけたりせずに、事実に基づく具体例を挙げて反論し、反対意見の誤りをはっきりと指摘することが大切だ。

反対意見への反論は、プランニング強化の必要性について上層部を説得する材料になる。上層部の支持を得ることは、努力する価値がある。ほかの多くの場合と同様、上層部が承認すればほかの者も足並みを揃えるからだ。いやいやながら同調する者もいるだろうが、ともかく従うようにはなる。皮肉なことに、プランニングへの反対が最も強いプロジェクトこそ、プランニングを最も必要としているものなのである。

入念なプロジェクトプランニングの利点

ITプランニング強化が事業にもたらす利点を主張すると、この概念を説得しやすくなる。堅実なプランニングがなぜITアプリケーションプロジェクト開発で成果を上げるかといえば、一番の理由は、プロジェクトに関連する問題点、手法、選択肢が入念に検討されることだ。最善のソリューションが必ずしもプランニング工程で生まれるとは限らないが、主要な選択肢を検討し、最も適切なものを選択したという確信は得られる。

わたしはかつて、ある組織でプランニングを最大限に重視してITマネージャの仕事をしたことがある。結果として、その組織はITプロジェクトに必要なプランニングを行うために、積極的に時間、資金、労力を投入した。プランニング工程は必ずしも堅実なプロジェクトの保証にはならなかったし、実際、決して成功とはいえないものもあった。それでも、ITプロジェクトの全般的な成功水準は高く、開発作業を進める上で予期しない問題が突然持ち上がることはめったになかった。

IT開発改善の努力は、組織全体に利益をもたらす。現在の組織でITプロジェクトの成果がかんばしくないなら、いまこそプロセス全体におけるプロジェクトプランニング強化の重視を検討してみるときである。

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