Thunderbird 2.0プレビュー版リリース

7月中旬のFirefox 2.0ベータ版に続き、Mozillaは電子メールクライアントThunderbird 2.0のプレビュー版をリリースした。かなり力の入った出来のおかげでFirefoxは大いに注目を集めたが、Thunderbirdもまたコンピュータを利用するうえで不可欠な操作を日常的に行うための信頼できる電子メールリーダである。本稿ではThunderbird 2.0の新機能を紹介しよう。

Thunderbirdのバイナリファイルはi386 Linux、Mac OS X、Windowsのものが用意されている。ここでは2.0アルファ版をUbuntu Dapper Drake上でテストした。どんな電子メールクライアントであれ、新しいバージョンのインストール前には ― 今回のように最終リリース版でない場合は特に ― メッセージのバックアップをとっておくべきである。また、ほとんどのThunderbird 1.5向け拡張機能は2.0プレビュー版では動作しないので、注意してもらいたい。

週末を利用してこのThunderbird 2.0プレビュー版を使ってみたが、クラッシュやデータの損失に見舞われることは一度もなかった。このアプリは非常に高速だ。もちろん、チェックするメールアカウントの数や種類にも寄るだろうが、最初の起動、メッセージの取得ともにすばやい。インタフェースは基本的に変わっていないが、いくつかの変更点については説明の必要があるだろう。

新機能による改善点

今回のプレビュー版における変更内容は大きなものではない。ちょっと見ただけでは気付かないしれないが、「Tag」と記されたツールバーの上に新しいボタンがある。このボタンは、ユーザ定義可能なタグを使ってメッセージにマークを付与するという新しい機能を担っている。デフォルトではこれまでのThunderbirdのラベル群と同じ内容のタグ群が用意されているが、このタグ機能はこれまでのラベル機能に代わるものだ。

タグ機能には、ラベルにはない3つの利点がある。1つは、タグはいくつでも定義できること(ラベルは5つまでに制限されていた)。2つ目は、1つのメッセージに対していくつでもタグを付けられること(ラベルは1メッセージにつき1つ)。そして3つ目は、タグは(ラベルと違って)目新しさがあって注目されており、最近流行りのWeb 2.0にも対応していることだ。その一方で、従来のThunderbirdのラベルは0~5のホットキーに対応していて、どれか1つキーを押すと、対応するタグ(正確にはラベル)の付いたすべてのメッセージを自動で表示できた。しかし、こうした機能は今回のタグではまだ使えないようだ。

もう1つ、見過ごされそうな新しい機能が、フォルダリストの上にある左右の対になった小さな矢印ボタンに隠されている。これらのボタンを使って新たな「Folder Views」の切り換えを行うことができる。これまでのバージョンでは、システムに設定されたメールフォルダすべてを含む折り畳み可能なツリー構造1つしか表示できなかった。今回のバージョンには、未読メッセージを含むフォルダだけを表示するビュー、最近参照したフォルダを表示するビュー、「お気に入り」フォルダを表示するビュー、の3つが追加されている。この追加は、私にとって予想外かつありがたいものだった。私のThunderbirdは5種類のメールアカウントにアクセスするように設定されており、「Local Folders」内のフォルダをネストさせても、画面上にすべてを表示できないほどのフォルダが並んでしまうからだ。

Firefox 2.0と同様、新しいThunderbirdにも、入力と同時に検索候補を表示できる検索機能が備わっている。ツールバーの検索フィールドへの入力が進むにつれ、一致するメッセージの一覧が更新されながらフォルダコンテンツペインに表示される。この検索バーは、デフォルトでメッセージの件名(subject)だけが検索の対象になっている。その他のヘッダに対して検索を行うにはプルダウンメニューを用いる。しかし、この検索候補の提示機能は、現在表示されているフォルダの中身にしか適用されない。より広い範囲で検索を行うには、旧来のSearch Messagesツールを使わなくてはならない。

Firefoxで密かに行われていた変更のいくつかはThunderbirdにも加えられている。拡張機能(Extensions)とテーマ(Themes)は、アドオン(Add-ons)と呼ばれる1つのツールによってまとめて管理されており、最終的にWebサイトaddons.mozilla.orgとの間で用語が統一された形になっている。

従来機能の改善点

上で述べたほど重要なものではないが、Thunderbirdの既存機能にもいくつかの改善が見られる。まず、メール着信通知の部分がかなり変更されている。このポップアップウィンドウは、バックグラウンドでの定期的なメールチェックでサーバ上に新しいメールが見つかると少しの間だけ表示されるものだ。また、毎度のことだが、ジャンクメールやスパムのフィルタリング機能も更新されている。

今回のリリースノートやこのプレビュー版のリリースについて書かれた個人のブログで、新しい「Conversations」機能に触れているものを何度か見かけた。そのほとんどはGmailのconversationビューに言及していたのだが、その点が気にかかった。Bugzillaで検索したうえで今回の2.0プレビュー版を使ってみたところ、私にはこの「Conversations」が現行バージョンのThunderbirdにあるスレッドメッセージとまったく同じものに見えるのだ。おそらくGmailでconversationsと呼ばれているので、Mozillaもそれにならったのだろうが、それを新機能と呼ぶのはどうも納得がいかない。

新しくリリースされたものは皆同じだが、このプレビュー版でも何百というバグが修正されており、その中にはかなり重要なものも含まれている。個人的に嬉しかったのは「Address Book」コンポーネントのいくつかのバグが修正されていたことだ。ただし、(LDAPディレクトリが読み取り専用であるという)大いに不満な点への対処はまだ行われていない。

未搭載の機能

前述の新機能と同じくらい注目に値するのが、今回のプレビュー版には実装されていないが2.0最終版に搭載予定の機能として挙げられているものだ。

中でもタブによるメッセージ表示が注目されている。Firefoxには何年も前からタブがあったので、多くのユーザと同じで私もタブなしではブランジングできなくなってしまった。同様に、Thunderbirdの1つの画面の内部で、タブを使って一度に複数の電子メールメッセージを開けるようになるのを待ち望んでいる。これは非常に意味のあることだ。

タブを使って何を分離して何を分離すべきでないか、というBugzillaでのこの機能についての議論はほぼ終わっている。具体的には、アカウントは別々のタブに分けて開くべきだろうか、それとも個々のメッセージを分けるだけでいいだろうか、また、新しいタブでメッセージを開いてからフォルダを変える場合、新しいタブにはこのフォルダの変更を反映させるべきだろうか、といった問題だ。Webブラウザのタブとは異なり、フォルダと電子メールには階層構造があるため、ユーザを混乱させずに表示内容を再構成することは難しい。すべてについて妙案があるわけではないが、こうしたタブ表示のコンセプトには単純に実現するだけで済む便利なものもあるので、うまく取捨選択してもらいたいものだ。

また、関心の度合いは低いだろうが、フォルダ内の未読メッセージの要約情報をツールチップ形式で表示するフォルダサマリ・ポップアップという機能もある。我々のように多数のメーリングリストからメールを受け取るユーザには、この機能が新しい「Unread Folders」ビューと連携する形で追加されると非常にありがたい。

ここに記したものも含め、搭載が延期されている機能が次回のベータ版、そして最終的な正式リリース版で利用できるようになることを願っている。今のところ、ThunderbirdとFirefoxとの関係はそれぞれのプレビュー版にも引き継がれており、その派手さと反響の大きさではFirefoxには及ばないものの、Thunderbird 2.0プレビュー版は日々信頼して使える確かで安定したソフトウェアに仕上がっている。

NewsForge.com 原文