FSFが新しいGPLコンプライアンス・エンジニアを採用

Free Software Foundation(FSF)は、長くボランティアを務めてきたBrett SmithをGNU一般公有使用許諾契約書(GPL)のコンプライアンス・エンジニアとして採用した。 彼は5年以上にわたりこの職務に就いてきたDavid Turnerの後任となる。 SmithとTurnerはいずれも、引き継ぎがスムーズに行われ、現在のポリシーが引き続き発展するだろうと述べている。

GPLコンプライアンス・エンジニアは、FSFを代表する顔としての性格が濃い職務である。 FSFのコンプライアンス・ラボを統括するコンプライアンス・エンジニアは、GPL違反の報告を調査し、違反者にGPLを遵守させる役割を担う。 初めてこの職務を務め、主としてその職務内容を規定したTurnerによると、報告の約半数は事実と判明するという。 残りの半数は、彼の経験によると、「確認できないか誤り」である。 多くはGPLソフトウェアを開発しているフリー・ソフトウェア・プロジェクトや企業を相手とする事例だが、GPLと矛盾する標準使用許諾契約書にかかわる事例も増え続けている。

コンプライアンス・エンジニアは、常に半ダースもの違反事例をかかえており、毎週1件から2件の新しい報告を受け取る。 「中には簡単に片づく事例もあります。書簡を送付し、それで解決するものです」Turnerは言う。 「しかし残念ながら、何か月もかかってしまう込み入った事例もあります。」

確認された報告に関して、Turnerは自らが「低姿勢戦略」と名付けた方針をFSFが策定する手助けをした。 すなわち、FSFでは弁護士を通じて停止措置の書簡を送付したり、法的措置や公表に踏み切ると言って脅したりするのではなく、違反者と一対一で協議して、彼らにGPLの遵守を促す方針をとっている。 「裁判沙汰にすればもう少し迅速に片づけることができるでしょうが、もっと友好的なやり方のほうがコミュニティの形成に有利であると判断したのです」Turnerは言う。 「敵対的な団体を相手にしているという感情を企業に持たれるよりも、今後再びGPLソフトウェアを使ってもらうほうが望ましいからです。」

Turnerはガールフレンドと暮らすためにニューヨークに移り住み、9月からフリー・ソフトウェア会社でプログラミングの仕事を始める。 FSFでは職員がボストンの本部周辺で働くことを望んでいるため、彼の離職は避けられない。 とはいえ、彼はGPLv3の草案作成に力を貸すなど、さまざまな形でFSFを支援し続ける予定である。

Turnerは過去を振り返り、次のように言う。「この仕事に就くことができてよかったと思います。 しかし、もう警官の役割をするのに疲れました。 GPLを実施するのは正しい行為であり、自分が人々を助けているということはわかっています。 それでも、私の考えは罪に問われた犯罪者を摘発する側より、いつも彼らを弁護する側のほうに傾いていました。 おそらく、それは私の生い立ちのせいでしょう。私の両親は、ともに公選弁護人の仕事をしていたときに出会ったのです。 ともかく、私は正しいことをしてきましたが、常に楽しんでいたわけではありません。 ですから、プログラミングに戻れることを喜んでいます。 それに、GPLコンプライアンス・ラボをBrettの手に委ねることにわくわくしています。」

Smithは2001年から、当時FSFの事務局長だったBradley Kuhnに参加を促されてボランティアを務めてきた。 それ以来、彼はWebマスターおよび見習いとして、製品を出荷し、一般的な電子メールに回答する役割を果たしてきた。 ここ数か月は、一般的な使用許諾の質問に回答する作業の手助けをしてきた。 「彼は問題をよく理解しています」Turnerは言う。 「また、[フリー・ソフトウェア]活動にも個人的にとても熱心に取り組んでいます。」

Smithは、おおむねTurnerが始めたポリシーを継続するつもりだと語っている。 GPLの遵守を促すためのTurnerの低姿勢戦略について、Smithは次のように言う。「このポリシーは効果を上げています。 多くのベンダがGPLを遵守するようになっており、成功の方程式に手を加えるようなことはしません。」

その一方で、Smithは変えようと考えている部分をすでに明らかにしている。 「コンプライアンス・ラボの認知度をさらに高めたいと考えています」彼は言う。「それにより、人々に我々の活動を認識してもらい、FSFのソフトウェアだけでなく、あらゆる種類のフリー・ソフトウェアに関する疑問や懸念を我々に相談できることを知ってもらいたいのです。この[ポリシー]には、人々が使用許諾について語るコミュニティでの認知度を高めることや、Webサイトに掲載する情報を増やすことも含まれます。」

Smithは、報告された違反を調査する過程をより形式化することも検討している。 「それこそ、私が採用された目的の1つなのです」ということ以外、彼は詳しい説明をしなかった。

Smithは8月21日から仕事を開始している。新しい職務に就いて2日目の感想を語る彼は、新しい役割を楽しんでいるようだった。 「刺激的な仕事です」彼は言う。 「ここにいることにとても満足していますし、良い仕事をしたいと思っています。」

Bruce Byfieldは、コース・デザイナ兼インストラクタ。またコンピュータ・ジャーナリスト としても活躍しており、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿している。

NewsForge.com 原文