卓越したDTPプログラムScribus

Linux向けの新しいデスクトップパブリッシング/レイアウトプログラムScribusは、これまでに見た新しいフリーソフトウェアのなかでも最高に印象的なものだ。以上。反論は認めない。

もちろん、完全無欠はありえない。バグ取りと修正は必要だし、機能を追加したりディストリビューション固有のインストール構成や癖に対応することも必要だ。ドキュメントも書かなければならない。しかし、ToDoリストにこういった作業が残っていても、ScribusはSeabiscuitよりもはるかに整った姿で出発点に立っている。Scribusには、フリーソフトウェア界の至宝の1つとして GIMPの仲間入りをする明るい未来がある。

デスクトップパブリッシングの熟練者なら、私よりも簡単にScribusを使いこなせるようになるだろう。私のDTP経験といえば、数年前にニュースレターを作成したことぐらいである。しかも、使ったのはQuarkやFrameMakerのような本当のDTP製品ではない。DeScribeというOS/2のフル機能ワードプロセッサだ。

最近になってFrameMaker 6.0をかじり始めたが、以上が私のDTP経験のすべてである。しかし、Scribusを手にしてから、FrameMakerでできることより多くのことをScribusでできるようになるまでは、あっという間だった。たとえば、作成した文書のできばえを確認するために、紙とインクを無駄づかいする代わりにPDFファイルを作成することも覚えた。

ScribusのライセンスはGPLに従っている。最初のバージョンは、2001年にPythonアプリケーションとしてリリースされた。2001年中頃のバージョン0.3で、元のPython版がC++に移植された。Scribusの存在を知ったのは、数週間前のNewsVacに1.0リリースに関する記事へのリンクを見つけたのがきっかけだ。

付属のドキュメントを見る限り、Scribusは主にFranz Schmid1人の手によるものらしい。ほかに2人が開発に貢献したとも書かれているが、1人であれ3人であれ、非常に少ない人数であることに変わりはない。

Scribusを試用するにあたって、私はまずScribus 1.0と英文ドキュメントをScribus Webサイトのダウンロードページ に記載されたミラーサイトの1つからダウンロードした。Scribusをインストールする前に、QT3の開発ヘッダおよびライブラリ(バージョン3.03以降、3.12推奨)とGhostscriptフォントおよびPostScript Type 1フォントまたはTrueTypeフォントを用意する必要がある。今回はRed Hat 9とXimianをベースとするデスクトップにインストールしたので、up2date qt-develを実行しただけでインストール作業は完了した。ほかのディストリビューションでは、別の手順が必要かもしれない。

LittleCMSライブラリはオプション扱いになっているが、PDFを作成する場合には必須だ。今回はLittleCMS WebサイトからLittleCMSをダウンロードし、untarしてからmakemake installを実行した。このライブラリをmakeするために設定の有効/無効を切り替える必要がある場合は、includeサブディレクトリのlcms.hを使用する。私の場合はその必要はなかった。

Scribus設定スクリプトは実行時にLittleCMSを探すので、Scribusをインストールする前にLittleCMSをインストールすることをお勧めする。LittleCMSがないと、Scribusはカラー管理をビルドに含めない。つまり、この設定ではPDF文書を作成できない。LittleCMSのインストールが後になった場合は、Scribusを再インストールする必要がある。

KDEは使っていないので、私のデスクトップにおけるQTの状態はひいき目に見ても整頓されているとは言えなかった。インストールしてあるバージョンは3.1なのに、QTDIR環境変数は前のリリースを指している有様だった。この問題に気が付くまで、Scribus設定スクリプトは「異常なし」と書かれた健康診断書を出そうとはしなかった。.bashrcファイルを開き、正しいバージョンを指すようにQTDIRを修正すると、ようやく問題は解決された。それはそうと、KDEユーザーはScribusでドラッグアンドドロップ機能を利用できる。今のところKDE以外ではサポートされていない。

私を手本とはせずに、試行錯誤を繰り返してみることだ。Scribusを動かしてみてはドキュメントを参照し、顔に付いてる鼻ほどには目立たない次の小さな一歩をどう踏み出すかを習得する。最初にドキュメントを最後まで読み通すことが重要だ。役に立つヒントや情報がたくさん書かれている。よくできた簡単なチュートリアル(フランス語から英文に翻訳されたもの)も活用したい。表紙から本文、そして裏表紙までの文書作成がひととおりこれで学習できる。

このとおりにしなかったばかりに、テキストファイルを作成しても、テキストボックスを作るまではそのファイルから「Get Text」をできないことに、私はしばらく気が付かなかった。それ以上に時間がかかったのは、取り込もうとしているファイルの全テキストを表示するには、一連のページにあるテキストボックス同士を連結する必要があることだ。やり方がわかってしまえば、手順はどれも簡単だった。たとえば、テキストボックスを移動するには、テキストボックスツールのアイコンをクリックし、ページにドラッグするだけだ。テキストボックスの連結も、テキストボックスを選択して「Chain Text」ツールをクリックするだけで実行できる。

最初にも書いたとおり、以前にワードプロセッサでニュースレターを作成したことがある。Scribusはもちろんワードプロセッサではなく、どこを切ってもDTPプログラムだ。CMYKカラー、PDF作成とインポート、4色カラー分離、EPSサポートなどが揃っている。Scribusは掛け値なしに本物だ。

いやいや、愛用のeMacをすぐに投げ出すつもりはない。かといって、OS Xを最新バージョンにアップグレードし、最新のAdobeデスクトップパブリッシングツールを入手するつもりもない。FrameMaker 6.0の習得も続ける。FrameMakerのドキュメントは十分に整備されているので、DTPの基本を学ぶには便利だ。FrameMakerで学んだことは、Scribusにも簡単に適用できるだろう。しかし、私のハートはすでにScribusに、この初めてのLinux向け最新フリーソフトウェア・デスクトップパブリッシング・ソリューションに奪われてしまった。