長期に使えるUbuntu Dapper

先週、Ubuntu 6.06 LTS(別名Dapper Drake)が満を持してリリースされた(LTS: Long Term Support)。いろいろテストしてみて、リリース日が当初の4月からずれ込んだことにはそれなりの価値があることがわかった。

本稿を書くに当たって、Ubuntu Dapperとその変種(KubuntuXubuntu)を複数のシステムでテストした。最初のシステムはラップトップ(Pentium 4 3.06GHz CPU、1GB RAM、ATI Radeon R250ビデオ・カード、Prism社製無線カード)である。Ubuntu Dapperは、私がメインマシンとして用いているデスクトップ(AMD64 3000+、2GB RAM、120GB SATAハードディスク、Nvidia GeForce 6600 GT)でも動いている。最後に、ThinkPad T43(Pentium M 1.86GHz CPU、512MB RAM、ATI Radeon Mobility M300)にUbuntuをインストールしてテストした。

インストール、アップグレード、ハードウェア・サポート

Ubuntuの過去3回のリリースでは簡単ながら使いやすいテキストモードのインストーラが付いてきた。テキストモードに満足できぬユーザーがいるため、今回のリリースではUbiquityというGUIインストーラがライブCDに同梱された。テキストモードのインストーラと同じく、ユーザーのタイムゾーンやログイン名とパスワードなど、わずかの質問に答えるだけでインストール作業を進めることができ、テキスト形式のメニューがGUI形式のウィザードになったと思えばよい。インストール作業は短時間で済み、Windows XPやMac OS Xのインストールほど難しくない。実際、サポート対象ハードウェアであれば、Windows XPよりもずっと簡単にインストールできる。

私が見る限り、Dapperのハードウェア・サポートは満足できるレベルだ。ラップトップの無線チップとの動作に問題はなく、デスクトップ(およびラップトップ)マシンのビデオカードの検出やX関連の設定は完璧で、サウンドカードもきちんと検出、設定された。

だが、構成が通常と違うとUbuntuはまごつくようだ。私がSkype通話用に使用しているPlantronics社製ヘッドセットにUSBサウンドカードが付属しており、Dapperはこれを検出して/dev/dsp1として問題なくセットアップするが、このUSBサウンドカードを引き抜くとループに陥る。Totemなどのアプリケーションはオンオードサウンド – Plantronics社のデバイスではない – を使うよう設定してあったのに、USBサウンドカードを引き抜くとサウンドが消えてしまった。この問題は再起動で解決するが、PlantronicsデバイスをUSBに接続してデフォルトのサウンドデバイスをオンボードサウンドにリセットする方法でもサウンドサポートを復活できた。これのよい点は、USBサウンドデバイスを接続したとき、GNOME内にUbuntuの小さなダイアログが表示され、新規デバイスの検出を知らせてくれることだ。このダイアログにはサウンド設定を開くボタンもある。

Ubuntuを使用していく上で、これはLinux全般に言えることでもあるが、ラップトップのサスペンドとハイバネーションがまだ行き当たりばったりだ。私のThinkPadでは完璧なのだが、Pentium 4搭載のラップトップではそれほどうまくいかない。ハイバネーションへ移行はするが、そこから復帰しないことがやや気に入らない。Ubuntuよりもラップトップ側の問題だろうが、Ubuntuをラップトップで使おうと考えているなら、この点を承知しておくに越したことはない。

2つのシステムにCDからインストールしようと思ったが、結局、AMD64を搭載した筆者のデスクトップからアップグレードすることにした。AMD64では既にBreezyが動いていたので、最新リリース情報の中に書かれていた指示に従い、gksudo "update-manager -d"を用いてアップグレードを行った。これでGUIアップデータが起動し、その中のDapper移行オプションを選択した。

dist-upgradeは思ったほどスムーズに進まなかった。自分でコンパイルしたパッケージがいくつかインストールしてあったことが問題となったようだ。たとえば、Ubuntuパッケージ間の衝突を解消するためにPerl Tkパッケージを削除するしかなく、衝突しているパッケージを手作業で削除し、うまくいくまでアップグレードプロセスを何回がやり直す羽目となった。

Dapperの長所をフルに引き出したければ、アップグレードよりもインストールを選択した方がよいかもしれない。たとえば、Dapperを新規インストールするとGNOMEにAlacarteメニュー・エディタが現れるが、dist-upgradeしたシステムでは旧来のSmegメニュー・エディタのままである。アップグレードは、特にデスクトップ・マシンでは、いろいろ微妙なことが起こるものである。

Apple iBook(1.0 GHz CPU、512MB RAM)でライブCDも試してみた。Ubuntu PPCはiBookで問題なく動くようだが、無線カードが立ち上がらなかった。サウンド、ビデオ、その他は問題ない。無線だけ手動で設定する必要があるようだ。iBookでUbuntuを使うことに関心がある方は、Ubuntuforums.orgのAirPortカードの設定に関するスレッドを読むとよい。

デスクトップの選択

今回リリースされたDapperには3種類のデスクトップが用意されている。Ubuntu(GNOME)、Kubuntu(KDE)、Xubuntu(Xfce)だ。私は3種類すべてをインストールしたが、どれが優れているかは一概に言えない。一番長く使用したのはKDEだ。だが、XfceとGNOMEの使い心地もなかなかのものだった。

UbuntuのデフォルトのデスクトップであるGNOMEは、Linuxを初めて使う人に適しているだろう。メニューの全体的なレイアウトが直観的にできているからだ。Applications、Places、Systemの各メニューが巧く区分けされている。だが、Applicationsメニューに「Run Command」オプションがなくなっているのは、何かの間違いではないかと思う。

いずれのデスクトップもオフィスツールやマルチメディア・ソフトウェアは充実しているが、Xfceのデフォルトのパッケージ選定には物足りなさを感じる。XubuntuにはBitTorrentクライアントが含まれておらず、ゲーム関連のメニューも一切ないのだ。KubuntuにデフォルトでFirefoxが含まれていないと知ってビックリするユーザーもおられるかもしれないが、KDEのAdeptパッケージマネージャかGNOMEのSynapticパッケージマネージャを使えば簡単に追加できる。

私自身、XubuntuのデフォルトのXfce設定が好きとは言えないが、Xubuntuチームは多少なりともGNOMEデスクトップと同じに見えるよう設定したのだ。GNOMEほど重くせずにGtkベースの軽量デスクトップ環境を手に入れたいユーザーにとっては思わぬ贈り物かもしれない。しかし、場数を踏んだXfceユーザーが求めるものとは違うように思う。

GNOME、KDE、Xfceのどれも気に入らないときは、UbuntuのリポジトリからEnlightenment、Blackbox、Fluxboxなどのウィンドウ・マネージャを入手すればよい。追加パッケージをすべてインストールしたところ、これらのウィンドウ・マネージャがGDM chooserに追加されたのは嬉しかった。これまでの私の経験では、他のディストリビューションでもウィンドウ・マネージャの追加パッケージはインストールできたが、それらをディスプレイ・マネージャのメニューに実際に組み込む作業はユーザーに任されていた。

Dapperの新機能

最近リリースされるLinuxディストリビューションは、あまり大きく変化しない傾向がある。微調整や既存の機能への追加に改良の重点が移り、ビックリするような真新しい機能が登場することがなくなったからだ。これはDapperも同じである。多数の小さな改良がデスクトップに加えられている。

最初に気づいた改良点のひとつは、Kubuntuにソフトウェア・パッケージ通知ツールが追加されたことだ。apt-get updateapt-get upgradeを定期的に実行するのを忘れがちは人には役立つだろう。Kubuntuに簡易パッケージ・インストーラ(Adeptベースのウィザード)も追加された。メニューから「Add/Remove Applications」オプションを選択すると起動される。この簡易パッケージ・インストーラを使えば、インストール後にパッケージを簡単に追加できる。パッケージがメニュー(Office、Graphics、Gamesなど)別にまとめられているので、パッケージを探すとき迷わずに済む。Breezyがリリースされたとき、UbuntuにSynapticベースの同じようなインストーラが提供されたが、これがKubuntuに追加されたのは嬉しかった。Xubuntuではこの簡易パッケージ・インストーラの存在を確認していないが、Xubuntuには現在もSynapticがある。

Deskbarも追加された。ほとんど何でも検索できるGNOMEアプレットだ。デフォルトで、GoogleなどのWebサイトのほか、ローカルディスクのファイルとフォルダを検索でき、辞書検索も実行できる。Beagle検索ツールとの連携もうまくいく。Beagleパッケージはデフォルトではインストールされない。Beagleデーモンに関係すると思われる速度低下がわずかながら見られたので、これはこれでよい。

KDEには、KerryというBeagleフロントエンドも含まれている。Deskbarほどの機能(たとえば、Googleや辞書検索など)はないが、ローカル検索は行える。DeskbarとKerryはどちらもチャットログ、メール、MP3メタ情報などから文字列を検索する。

無論、Dapperには最新のGNOMEも含まれている。GNOME 2.14のツール類をすべて利用できるわけだ。UbuntuにはデフォルトのGNOMEブラウザとしてEpiphanyではなく、Firefox 1.5.xが付属する。ただし、必要ならEpiphanyを別途インストールすることもできる。

Kubuntuに同梱のKDE 3.5.2はもはや少し古い。5月31日にKDE 3.5.3がリリースされ、それよりも前にDapperのリリースが予定されていたからだ。3.5.3にアップグレードしたければ、いくつかのリポジトリを追加した上で、アップグレードを実行する必要がある。

今回リリースされたXubuntuは正に最先端のものである。ベータ版のXfce 4.4が同梱されているので、近々アップデート予定のXfce 4.2を使わずに済む。デフォルトのアプリケーションとして、OpenOffice.orgの代わりにGnumericとAbiWordが、またNautilusの代わりにThunarファイル・マネージャが含まれており、結果としてローエンドのハードウェアへの適合性が向上している。

Ubuntuのデフォルトのメディア・プレイヤーはTotemだ。私はTotemにそれほど夢中なわけでもない。ムービー・プレイヤーとしてはよくできているが、私が通常使うMP3プレイヤーとしてはそれほどよくはないからだ。しかし、Banshee Music Player(Ubuntuリポジトリから入手可能)とamaroKは実に良い。これはデフォルトのKubuntuパッケージに含まれている。私はメディア・ファイルにデフォルトのアプリケーションを設定することにしているが、こうした操作はKDEに若干分がある。GNOMEでは、ファイルを右クリックし、Propertiesを選択し、Open Withタブでアプリケーションとオープンするファイルを選択する。KDEでは、Propertiesを選択するとダイアログが表示される。しかし、スパナの形をした小さなアイコンが唯一の目印で、そこにマウスを合わせると初めて「edit file type」と表示される(無論、これはKubuntuというよりもKDEの問題である)。

マルチメディアに関してUbuntuに同梱されるのはフリーソフトウェアのみであり、MP3の再生やエンコードを有効にしたり、Flashなどのフリーでないフォーマットへの対応を行うのはユーザーに任される。MP3やGoogle Videoを再生しようと考えているなら、Ubuntu wikiの限定フォーマットを有効にする方法に関するページは必見だ。

全般的にデフォルトのパッケージ選定は平均的なユーザーに適したものとなっているようだ。私にとって理想的なものとは言えないが、これを出発点に使いやすいデスクトップを作ればよい。この点は、Ubuntu、Xubuntu、Kubuntuのいずれも同じである。また、Linuxの世界に存在する主なパッケージは、Ubuntuのリポジトリからすべて入手できると考えてよい。

UniverseリポジトリとMultiverseリポジトリが有効なら、UbuntuのリポジトリからVMware PlayerとSun Javaを直接インストールできる。ことにVMware Playerオプションは便利だ。VMware Playerの実行に必要なすべての追加パッケージもインストールされるので大幅に手間が省けるからだ。VMware Playerの手動インストールは手間がかかるので、誰もやりたがらないものである。

ただし、Sun Javaをインストールする場合は、必ずSynaptic(GUIパッケージ・マネージャ)を使うこと。apt-get installを使おうとするとエラーとなるが、GUIインストーラでのみSun Javaライセンスを表示するよう設定されているからだろう。GUIフロントエンドよりもapt-getを直接使いたいと考えるユーザーがまだいることをUbuntuのパッケージ作成者は忘れないでほしい。

Dapperの欠点

今回リリースされたDapper Drakeには良いことばかりでなく、わずかながら不満もある。Ubuntuの最大の難点は、やはりサウンドである。サウンドは通常問題なく機能するが、複数のアプリケーションが同時にサウンドカードを使おうとすると、処理がうまくいかなくなる。たとえば、amaroKでMP3を再生しているときVMware Workstationを開始すると、/dev/dspがビジーとのエラーが返される。Audacityが開いているとき、amaroKまたはXMMSを使おうとしても同じことが起こる。アプリケーションによっては同時再生がうまくいくこともある。たとえば、GaimはamaroKの動作中でもサウンドイベントを再生できるが、それ以外だとそうもいかない。

これは以前から問題となっていたことで、修正案が出されているが、今回のリリースでは、なぜか対策が講じられなかった。

Ubuntuのプリンタサポートについては、多くのUbuntuユーザーが不満を述べている。私はブラザーの1270Nネットワーク・プリンタを使用しており、初日からUbuntuで完璧に動作した。私がこのプリンタを使うことに決めたのは、Linuxに対応していることがわかっていたからだ。

今回のDapperにはOpenOffice.org 2.0.2が追加された。これはデフォルトでKubuntuとUbuntuに同梱され、Xubuntuには同梱されていない。Breezyで提供された先行公開版のOpenOffice.org 2.0はややバグが多かった。今回のリリースも少しバグがあるようだ。Excelドキュメントを表示しただけでOpenOffice.orgがクラッシュした。Sun JavaではなくGNU Java Compilerを使用していることが関係しているのかもしれない。

デバイス・サポート

デジタル・カメラや音楽プレイヤーなどの人気デバイスをサポートしなければ、Ubuntuといえども一人前のデスクトップOSとは言えない。私が試したコンシューマ・デバイスに関する限り、Ubuntuはほぼすべてのデバイスで完璧に動作した。

HFS+フォーマットのiPodを接続すると、RhythmboxまたはBansheeでiPodに保存されている曲をすぐ聴くことができるのには驚いた。RhythmboxとBansheeのどちらもiPodを別の音楽ディレクトリとして開く。Kubuntuはやや興ざめだった。iPodを接続するとダイアログが表示され、そこで新しいウィンドウを開くかどうか質問される。KonquerorウィンドウにiPod上のファイルが表示されるわけだ。

Linuxで動くか調べるために、旧式のCreative Labs Nomad Jukeboxも接続した。デフォルトでは失敗したが、Nomad関連のライブラリとGnomadおよびKZenExplorerをインストールしたらうまくいった。私はKZenExplorerがことに好きだ。KonquerorからKZenExplorerウィンドウにドラッグ・アンド・ドロップするだけで曲をJukeboxに追加でき、任意のディレクトリと同期を取ることができる。まだしばらく使えるかもしれない。

Ubuntuでは、Konica Minoltaのデジタル・カメラDiMage Z20も使えた。ただ、Kubuntuのデフォルトの動作は残念なものだった。Ubuntuの下でUSBコネクタを接続すると写真をgPhotoにインポートするオプションが表示されたのである。

Ubuntuのデバイス・サポートで本当に期待はずれだったのは、Treo 650を接続しても何も起こらなかったことだ。Palm関連の各種パッケージはすべてインストールしたのだが。KPilotは少しは動くが、「Could not start the KPilot daemon. The system error message was: Could not find service ‘kpilotdaemon’」というメッセージを出してすぐ止まってしまう。

長期戦の構えはできたか?

全般的に言って、Ubuntu 6.06 LTSは、堅牢なオペレーティング・システムだ。使いやすく、ソフトウェアの選定は初心者向きで、開発者やパワーユーザーのことも考えられており、だいたいにおいて、すぐ使える。

私は、Ubuntuが、難しい設定なしで使える、真のオープンソース・ソフトウェアである点も気に入っている。必要ならフリーでないパッケージを簡単に手に入れることもできるが、デフォルトは無料である。

多少欠点もあるが、Dapperは自宅とオフィスでの使用に耐える堅牢なデスクトップOSだ。Ubuntuは、デスクトップについては3年のサポートを、サーバーについては5年のサポートを約束している。経験を積んだLinuxユーザーばかりでなく初心者にも是非お勧めする。

NewsForge.com 原文