Ubuntu Developer Summit Paris: 新たな同盟、新たな地平線

先週、Ubuntuの次期リリース(コードネームEdgy Eft)を計画立案するために60人を超えるUbuntu開発者がパリに集まった。公式には、この会議は開発者サミットと称され、カンファレンスではない。連日、2~10人からなるグループが、仕様のブレインストーミング、ドラフト化、ブラッシュアップに取り組んだ。このようなセッションが全部で60以上あり、多いときで10のセッションが並行して開催された。これらの仕様は ─ 来週には確定される予定だが ─ Canonicalスタッフによる優先順位の決定と承認をへて、次期リリースの機能における目標として活用される。

このカンファレンスに関する前回のレポートで、検討された仕様の多くはざっと紹介した。仕様を見ればUbuntuの各リリースが目指す機能の目標がわかるが、一方で開発者サミットでは、対話のきっかけが作られ、新しい発想やパートナーとの接触があり、将来において大きな役割を果たすUbuntuイニシアチブの種もまかれる。招待状を送って参加者を招き、スポンサーの資金を基に”部外者”をカンファンレンスに呼ぶことにより、新しい顔ぶれとトピックが開発者サミットに加わったが、これを手がかりにCanonicalの優先順位とUbuntuの未来を推測できる。

たとえば、Ubuntu 6.06 LTS(Dapper Drake)では、開発者はUbuntuのサーバ機能に重点を置こうとした。そのため、モントリオールで開催された前回のUbuntuカンファレンスの参加者で、高度なサーバ用語に通じていないのは数人だった。

以下のプロジェクトはどれもパリの最新のサミットで検討された代表的なトピックであり、Edgyまたは将来のUbuntuリリースで期待される人物、グループ、またはテクノロジを表している。

KDE

Ubuntuは、短期間のうちに多くのGNOME開発者が配布手段として利用する選択肢となった。UbuntuのCDがトレードショーのGNOMEブースで配布されることは非常に多い。だが、KDEとKubuntuについては同じことはいえない。KDEコミュニティには、KDEデスクトップがUbuntuの2等市民であるという共通認識がある。Canonicalはこの意識を変えたいと思っているらしく、KDE陣営から多数の新顔をカンファレンスに送り込んだ。その結果、KDEは以前のUbuntuカンファレンスよりも大きな存在感をパリの開発者サミットで示した。有名なKDEベースのKnoppixライブCDの作者Klaus Knopperの姿もあった。

Canonicalには、KDEパッケージ開発にフルタイムで従事する開発者が1人いる。おおむねGNOMEパッケージと同じ開発体制である。もっとも、GNOMEを使用し、テストと機能開発の過程に手を貸すコアUbuntu開発者の数は、いまだに圧倒的に多い。次の開発サイクルでコミュニティにおけるKubuntuの役割に関する認識をCanonicalが変えられるかはわからないし、目に見える変化を実現するためにこれまでに十分な資金を投じたか、あるいは必要なコミュニティのリソースに対して働きかけてきたのかもわからない。

Ubuntu Forums

Ubuntuの発足当時、Webフォーラムのたぐいは一切なかった。Ryan TroyがUbuntu Forumsを独自に作成し、初期の経費を負担して、このギャップを埋めたのである。完全なフォーラム群を作成する代わりに、UbuntuはRyanのフォーラムに”公式”のお墨付きを与え、後になってフォーラムのホストをCanonicalのデータセンターにあるハードウェアに移行した。とはいえ、いくつかの理由から、フォーラムのコミュニティとそれ以外のUbuntuコミュニティの間には、明らかなギャップが残っている。

フォーラムとそれ以外のプロジェクトをもっと親密にするための討論と対策のため、Canonicalは数人のフォーラム・スタッフをサミットに招待したが、参加できたのはフォーラムのモデレータRoald “Ubuntu-Demon” Hopmanの1人だけだった。政治的な立場から、このグループは現在のフォーラム・スタッフと解決の手続きを既存のUbuntu管理/会員システムと統合できるかどうかを論じた。

rPath

最も注目されるグループの1つは、主にRed Hatの元社員で構成される企業rPathだ。同社は、事業の中核を計算機器用のカスタムGNU/Linuxディストリビューションの開発に置き、独自のディストリビューションrPath Linuxを提供している。

おそらくさらに興味深いのは、rPathのシステムのビルドにConaryが利用されていることだ。Conaryは、CanonicalのLaunchpadベースSoyuzアーカイブ・マネージャと多くの類似点を持つディトリビューション・リビジョン管理に基づいて構築されたアプリケーションである。また、両社は独自の分散型バージョン管理システムを構築している。

どちらも分散型のリビジョン管理を使用してカスタム・ディストリビューション構築/保守のサービスとサポートを提供しているので、rPathとCanonicalは明らかなライバル関係にあるように見える。だから、rPath開発チームの主力がパリに姿を現したことは意外だった。ふとしたことで立ち話になって、2つのチームは熱心に情報、経験、知識を交換していたようだ。両社のシステムがそれぞれ先進的であり、重要な技術的な相違があることは明らかだ。2つのグループの関係が将来どうなるかは不明である。

Guadalinex

スペインのアンダルシア州政府が開発したディストリビューションGuadalinexは、Ubuntuの最初の派生物として2004年にリリースされた。その後も非常に多くのユーザに利用され、注目を集める派生物だが、GuadalinexではCanonicalが期待するような完全な形では同社のLaunchpadが利用されていない。また、Guadalinexは独自のライブCDインストーラを作成したが、これはその後Canonicalで大幅に書き直された。Guadalinexと同じ進路を他の派生物もたどることをCanonicalが望んでいるのは明らかだが、Ubuntu開発者とその派生物との関係をもっと密接にしない限り、Ubuntuベース・ディストリビューションの健全な生態系を構築するという目標は達成できないだろう。

One Laptop Per Child

かつての$100ラップトップ・プロジェクトであるOne Laptop Per Child(OLPC)に関心を持ち、取り組んでいる数人もカンファレンスに参加していた。MIT Media Labの研究者であり、ラップトップ・プロジェクトの参加者であるこの私と、今月からOLPCへの参加を決めたIvan Krsticもその仲間だ。2人とも別の資格(IvanはUbuntu Server Team管理者で、私はUbuntu Community Councilの一員)で参加していたが、このプロジェクトに関心を持つ他の数人は、OLPCとUbuntuについて論じるセッションへの参加と運営のために参加した。

カンファレンスで明確になったのは、Canonicalとコミュニティ・メンバーの両方がOLPCについて行動を、おそらくEdubuntuプロジェクトの下で、起こす意欲を持っていることだった。明確でないのは、それが具体的にどんな行動になるのか、EdubuntuプロジェクトにおけるOLPCの位置付けがOLPCパートナーのRed Hatで進められている活動との関連という意味でどうなるのか、という点だ。

Launchpad

あるグループの存在感のなさは顕著だった。Ubuntuカンファレンスでは、常に参加者のほとんど半分はLaunchpadチームに所属するCanonicalの社員である。しかし今回、参加したのはLaunchpadチームのほんの一部。確かにLaunchpadは成熟を迎えつつあるが、プロジェクトにはまだ磨かれていない部分が多い。おそらく、カンファレンスでUbuntu開発者とLaunchpad開発者が仕様を作成するために直接に協力する場面がなかったことは、新しい機能の開発からバグ修正とユーザビリティへと方向転換がなされたことを意味する。コミュニティの多数に歓迎される変化だろう。

カンファレンス参加者の部分的なリストは、Ubuntu wikiで閲覧できる。

Benjamin Mako HillはUbuntu Community Councilの一員であり、Canonicalの元社員(2004年5月~2005年9月在籍)。現在は、MIT Media Labに勤務し、One Laptop Per Child Projectに参加している。

NewsForge.com 原文