Aaron Seigo氏、aKademyおよびKDE4について語る

KDE開発者たちはアイルランドのTrinity College Dublinに集まり、aKademyと呼ばれるKDEコミュニティの年次大会を開催しているが、今回は1週間をかけてKDEとフリーデスクトップのコラボレーションについて討議し、KDE4の進むべき方向を見定めるという。そして先の月曜日、KDEの開発者であるAaron Seigo氏はダブリンにて私たちの取材に応え、aKademyおよびKDE4の現状について語ってくれた。

Seigo氏の語るところ、今回のaKademyにて土曜から日曜にかけて行われるカンファレンスの予定は、過去に行われたものとは趣を異にしているとのことだ。従来のaKademyでのカンファレンスはユーザを中心に据えたものであったが、「今年は、テクニカル的な側面に専念することにしました」とSeigo氏は語る。講演のほとんどはKDE 4をテーマとしたものであり、新規のアプリケーションやテクノロジについて語る演者たちも、今回は単なる討論だけではなく具体的な実演が行えたとのことだ。

KDE 4の進捗状況

Seigo氏の説明では、KDE 4の開発状況は「非常に良好」とされている。Krashの愛称で知られる最初のテクニカルプレビューは、既に8月の段階でリリース済みである。「あそこまでたどり着くのは大変でした。進捗が滞ったのは、あのコード部(ベースライブラリ)については詳しい人間が少なかったので、作業に就ける人数も限られてくる……、という訳で、この問題は少々やっかいでしたね」。

Seigo氏によると、Krashとベースライブラリが出そろったことで、アプリケーション開発者たちは「髪の毛を掻きむしって悩むことなく」生産的なアプリケーション構築を始めることができるようになった、ということになる。

「実のところライブラリに関してはまだやり残している部分があるのですが、既にアプリケーション開発者たちはKDE 4プロセスに参加し始めています。何にせよ、目に見える形で作業が進展するのは、気分の良いものです。士気の向上という点で、歓迎すべきことでしょう」。

開発者およびハードコアテスターたちはKrashを叩き台にした検証作業を始めているが、こうした活動はKDE 4が一般ユーザの手に渡るまで継続されることになる。Seigo氏によると、KDEチームは、aKademyの残りの日程を使って今後のスケジュールや記述すべきコードについて検討をする予定とのことだ。

KDE 4に取り込まれる新機軸

ここでKDE 4の全機能を一覧するのは時期尚早であるが、Seigo氏が説明したKDE 4で実現されるいくつかの新機能は、バージョンアップに値する魅力を備えたものであった。

KDE 4ではSolidというハードウェアライブラリを用意することで、Linuxユーザの作業環境を改善するという。「(これは)接続中のハードウェア環境をアプリケーション側が簡単に認識できるようにするものです。例えばネットワーク接続を解除したとしても、今後はKMailから“サーバが見つかりません”というメッセージが延々と表示され続けるような事態はなくなるはずです。同じくプレゼンテーションやビデオを再生するごとに、(KDEが)じゃまなポップアップを表示することもなくなるでしょう」。

これまでのLinuxユーザにとって、オーディオやメディア関係の設定は鬼門の1つであった。特にオーディオについては、雑多なサウンドデーモンを扱い分けねばならず、それがユーザにとっては大きな負担となっていた。何しろ、使用するプログラムが異なれば必要なサウンドデーモンも異なるというだけでなく、Linuxのベンダが異なればデフォルトで用意されているサウンドデーモンも異なるという有様なのである。

Seigo氏によると、KDE 4におけるPhononの採用はこうした混乱状況を解消するのに大きな貢献をするはずであり、開発者たちもより簡単にマルチメディア機能をアプリケーションに実装できるようになる、とのことである。

「Phononの登場は、採用すべきメディアエンジンに対するOSベンダの認識を変え、やがてはすべてのアプリケーションがこれを利用するようになるでしょう。KDEのaRtsサウンドシステムを選ばす、XineやGStreamerを使う者もいるでしょうが、Phononの素晴らしさは、これらのフレームワークすべてをカバーする形で上位に位置する1つの統合フレームワークを構築できたということなのです」。

Phononのもたらすその他のメリットとしてSeigo氏が挙げているのが、開発者がマルチメディア機能をアプリケーションに組み込む際に、今後は何百行ものコードを記述することなく「わずか10行以下のコード」を用意するだけでマルチメディアの再生機能を実装できる点だ。

Seigo氏によると、当座の目的はKDE 4を「’07年の前半」に完成させることだと言う。KDE 4がリリースされれば、KubuntuやopenSUSEなどのディストリビューションは、即座にその採用に着手し始めるだろう。事実openSUSEおよびKubuntuにおいては、既にKrashパッケージが利用可能な状態になっている

もっともSeigo氏の説明するところでは、“主流”ディストリビューションは概して新規リリースのパッケージの取り込みには時間をかけるものなので、ユーザがKDE 4を手にするのは2007年後半になってからになるかもしれない、とのことだ。

Linux.com Audiocast – Aaron Seigo氏インタビュー

Linux.com Audiocast – Aaron Seigo氏インタビュー(MP3形式)

Linux.com Audiocast – Aaron Seigo氏インタビュー(Ogg形式)

FOSScastのイントロ曲はKevin MacLeod氏より。Creative Commons “Attribution 2.0”でライセンスされています。

NewsForge.com 原文