Reiserファイルシステム開発続行か

ReiserFSファイルシステムとReiser4ファイルシステムの開発者であるHans Reiser氏が、米カリフォルニア州オークランドで逮捕された。別居中の妻Nina Reiserさんの行方不明に関与しているとの疑いだ。このニュースを受け、フリー/オープンソースソフトウェアコミュニティでは、Hans Reiser氏の会社Namesys社とReiserファイルシステムの今後への影響が懸念されている。

Hans Reiser氏はReiserFSとReiser4のリード開発者として知られる。ジャーナルファイルシステムであるReiserFSとReiser4は、始終称賛と酷評の対象となっている。Hans Reiser氏は、 Reiser4をカーネルに組み込むために奮闘してきたことでも知られ、それがなかなか認められないことについて声高に発言してきた。2つのファイルシステムの開発元である米Namesys社は小さな会社だが、米Linspire社と米国国防総省国防高等研究事業局(DARPA)の出資も受けている。

Namesys社のWebサイトにある番号に電話をかけても、女性が電話に出て「ノーコメント」と言うだけで切られてしまう。だが、Namesys社の複数の関係者は、会社とファイルシステムの今後について公にコメントすることをいとわなかった。

Namesys社の元リリースマネージャOleg Drokin氏は「Hansが逮捕されても有罪にならない限り、何の影響もないと思います」と話した。「もし有罪となったらNamesys社にとっては問題でしょう。会社の運営はHansが一人でやっているのですから」

Drokin氏によると、特に重要なのは、ロシア在住者の多いNamesys社社員に今後も給与が支払われるかどうかだという。支払いが止まるようなことになれば「当然ながら仕事を続けられない者も出てくるでしょう」。

だが、Drokin氏はそのような事態にはならないと考えている。「Hansは当初から自分が疑われる可能性を考えていました。自分がいなくても社員が業務を続行できるように手を打っていたと思います。Namesys社自体もしばらくは安全だと私は見ています」

Namesys社の元マーケティング担当者、テクニカルライターであり、Reiser氏の父であるRamon Reiser氏の話もDrokin氏のコメントを裏付ける。Ramon Reiser氏によると、Namesys社は常に2つの点を最優先にしてきたという。「既成概念の枠を超えてファイルシステムを1970年代レベルから21世紀レベルに引き上げること」と「1983年にバークレー大の学生だったHansが描いた新しいファイルシステムを実現するのに尽力してくれたロシア人ウクライナ人プログラマの幸福」だ。「父親として、この2つが今も最重要であると証言できます」と同氏は話した。

Namesys社のホストマスタでシステム管理者であるLex Lyamin氏は、Linuxカーネルメーリングリストへの電子メールで、Hans Reiser氏が拘束されたり有罪となったりした場合には、 「Namesys社の経営に代理人を任命する」と述べている。

他の関係者が公表したコメントでも、少なくとも短期的にはReiserのファイルシステムの途絶は考えにくいとしている。Lyamin氏は、ReiserFSの現在進行中の開発活動はほとんどがバグ修正だけだが、SUSEを開発しているNovell社員たちによっていくつか新機能も追加されているという。ReiserFSは既にカーネルの一部になっており、今後もそのまま進むと思われる。

これに関連して、Drokin氏は次のように述べている。「Reiser4にはそれほど大きな影響はないでしょう。今もReiser4の作業に従事している多くの者は真剣に取り組んでおり、Reiser4が実際にvanillaカーネルにマージされるまで仕事を投げ出すようなことはしないはずです」

Lyamin氏も当面Reiser4への影響はないという考えだ。「確かに今は多少動揺もストレスもありますが、まったく予想していなかったとは言えません」同氏は、短期的、つまり今後半年ほどは「パッチを作ったり、レビューを進めたりして、これまでどおりに続けていきます」と述べている。

長期的にはどうかというと、Reiser氏が有罪となれば「問題は難しくなる」とLyamin氏はいう。だが、Lyamin氏は、事態は「わたしたちが望む方向」に行くだろう、と慎重な表現で希望を示した。

他の関係者もReiser4コミュニティの作業続行への希望を表明している。Namesys社の元チームリーダーGeorge Beshers氏は次のように話している。「次世代ファイルシステムに関するHansの着想には興味深いものがたくさんあります。そうした新機軸をじっくり評価するためにもReiser4を存続させることがLinuxコミュニティにとって最善でしょう」

Nina Reiserさんの所在もHans Reiser氏の立件の行方も今はまだわからない。混乱と心痛の中にいる父Ramon Reiser氏はこう述べている。「Namesys社のロシア人とウクライナ人の優秀なプログラマたちがReiser4の開発を続けられるように、私にできることなら何でもするつもりです。数年後にはReiser5、その5年後にはReiser6を完成させてこそ、Linuxそしてこれからの新しいオペレーティングシステムにふさわしい本格的なファイルシステムを実現できると信じています」

Bruce Byfield:コースデザイナ、インストラクタ、コンピュータジャーナリスト。NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿している。

NewsForge.com 原文