レビュー:バージョン11になったSlackware

今月初めにSlackware Linux 11がリリースされ、このディストリビューション開発の継続期間は13年に達した。最初のLinuxディストリビューションではないが、現存するものとしては最も歴史のあるSlackware Linuxは熟成の兆しを見せ始めている。

Slackware Linuxの最初のバージョンは、1993年7月16日にPatrick Volkerding氏の手でリリースされた。SlackwareはSoftlanding Linux Systemというディストリビューションをベースにしたもので、ソフトウェアを一連の「シリーズ」に分けた複数の3.5インチフロッピーディスクからインストールするようになっていた。

昔と変わらないSlackware

主だった部分は以前と変わりがないか、少なくとも大きな変化はないことがわかって、ある種の安堵感を覚えた。Slackwareのソフトウェアはこれまで通り、シリーズに分かれている。ただし、選べるソフトウェアパッケージが増えているのでベースシステム(Aシリーズ)とX11(Xシリーズ)以外にもシリーズがあり、必要になるフロッピーディスクの枚数は24枚以上に及ぶ。SlackwareのバイナリとソースはCDでは6枚、DVDなら1枚を要するまでになっている。

私は1996年からたびたびSlackwareを使ってきたが、そのインストーラは当時からそれほど変わっていない。Linux向けのGUIインストーラが登場するまでの間、Linuxユーザを迎えてくれていたのは、こうした信頼に足るテキストメニューのインストーラだった。

それが良いか悪いかはユーザの経験レベルによる。私は無駄のない最小構成のインストーラが最も優れていると思っているが、大部分のユーザにとってはインストールルーチンでの自動処理が最善と思われる操作も一部ある。たとえば新しいシステム、またはLinuxパーティションが存在しないシステムにSlackwareをインストールする場合は、Slackwareのセットアッププログラムを実行する前に、今なおfdiskやcfdiskを使用して手動でパーティションを設定する必要がある。

このようにインストーラには余計な機能を持たせない方針に従っているため、Slackwareのインストーラはあまり多くのシステムリソースを必要としない。他のいくつかのディストリビューションでは、システムにLinuxを入れるためだけに多大なリソースを必要とする、機能的に肥大化したインストーラを使用するが、Slackwareのシステム要件は16MBのRAMと486系のCPUというささやかなものだ。

なかなか変わらないSlackwareのコンポーネントはインストーラだけではない。他のディストリビューションでは、古くなってきたSystem Vのinit設定の置き換えを進めているが、Slackwareはさらに古いBSDスタイルのinitをいまだに使用しているのだ。

Volkerding氏は、たとえ他のディストリビューションの大多数がずいぶん前に新しいバージョンを採用していても、時として新しいパッケージへの移行に慎重な姿勢をとることがある。その最も顕著な例がカーネルの選択である。2003年の12月にカーネル2.6が出ているにもかかわらず、Slackwareのデフォルトのカーネルは現在も2.4のままである。カーネル2.6もSlackwareに含まれてはいるが、2.6のリリースからほぼ3年が経過しても2.4にこだわっているのは意外だった。

またSlackwareは、Apache 2.2.xではなくApache 1.3.xをデフォルトにしている数少ないディストリビューションの1つであり、しかもApache 2.2.xのパッケージは用意されてさえいない。SlackwareがApache 2のリリース直後に同シリーズに移行しなかったときも驚いたが、あれから2年も経っているのだ。さらに、Slackwareに付随するGNU Compiler Collection(GCC)のバージョンは3.4.6だが、すでに大半のディストリビューションはGCC 4.xシリーズに移行している。

だからといってSlackwareのセキュリティリリースが現行のものになっていないわけではない。一部のパッケージではバージョンの古いものもあるが、Slackwareに含まれているのは旧シリーズでも最新のリリースであり、ほとんどのパッケージは最新のバージョンになっている。たとえば、Slackware 11にはVim 7.0.109、Firefox 1.5.0.7、Thunderbird 1.5.0.7、Perl 5.8.8、KDE 3.5.4(Slackware 11のリリース時点では最新だった)が含まれている。

ハードウェアの問題

今回、Slackware 11のインストール先として、2種類のシステムとVMware Workstation 5.5の環境を用意した。VMwareの仮想環境では問題なくインストールできたが、仮想化されていないハードウェアへのインストールでは多少の問題が発生した。

最初にインストールを試みたのはPentium 4ベースのノートPCで、1GBのRAM、ATIのビデオカード、RealTekイーサネットチップセット、Radeon R250ビデオカード、Intersil Prism 2.5無線LANチップセットを搭載したものだった。ビデオカード、トラックパッド、USBにはうまく対応できたが、無線LANチップセットまたはRealTekのイーサネットデバイスとは相性が良くなかったようだ。SlackwareでノートPCの無線カードが自動的に設定されないことは知っていたが、オンボードのRealTekイーサネットが使えなかったOSはSlackware 11が初めてだ。

続いて、512MBのRAM、Centrino無線チップセット、ATIのビデオカードを搭載したIBM ThinkPad T43でSlackwareのインストールを試してみた。先のマシンよりも普及しているノートPCなのでうまく行くだろうと期待したのだが、そう甘くはなかった。Slackwareはブートアップ時に完全にフリーズしてしまったのだ。

さらに、Athlon XP 2600+、1GBのRAM、VIAのオンボードイーサネット、Nvidia GeForce FX 5500、SoundBlaster Liveサウンドカードを備えたワークステーションと17インチ液晶モニタという環境で試したところ、今度はうまくインストールできた。オンボードのネットワークインタフェースカード(NIC)とSoundBlaster Liveも正しく認識され、モニタ本来の解像度1280×1024に合わせるためにX環境の調整が少し必要だった点を除けば、何の問題もなくスムーズに進んだ。

ここに記した問題にはインストール後のトラブルシューティングで解決できるものもあるが、私が試したノートPCが「問題のある」ハードウェアだったわけではない。同じノートPCで他のLinuxディストリビューションをいくつか動作させてきた実績があり、そのときにはハードウェアの検出やセットアップについての問題は一切発生しなかったからだ。SlackwareがこうしたノートPCで何の調整もなしに「素直に動作」しなかったのは残念である。

Slackwareを使ってみる

インストール時に私が選んだのは「すべてをインストール」する方法だったが、この場合はKDE、Xfce、Window Makerに加えてさらに2つのウィンドウマネージャ/デスクトップ環境など、トータルで約3GBものソフトウェアがインストールされる。GNOMEはもう含まれていないが、自分で探せばdropline GNOMEなどSlackware向けのGNOMEパッケージが見つかるだろう。またSlackwareには、かなりの量のデスクトップ生産性ソフトウェアや、Apache、PHP、Python、MySQL、OpenSSH、GCCといったLAMPパッケージも含まれている。

Slackwareはそのままでも優れたベースシステムだが、Debian、Ubuntu、Fedora、openSUSEに比べるとパッケージの選択範囲が限られている。最小構成のシステムがお好みなら、インストール時のパッケージ選択メニューで必要なものだけを残すことによって、私の場合よりもずっとスリムなインストールを選択することもできる。

新しいシステムのブート後、私がまず行ったのはrootでログインして「Welcome to Linux (Slackware 11)!」のメッセージを読むことだった。このメッセージには、CUPSやLPRngを用いた印刷の設定、検出できないハードウェアへの対処、CD作成機能の設定に関するヒントがいくらか記されている。だが、こうした説明はどう見てもLinuxを初めて使うユーザにふさわしい内容ではない。たとえば、そのままでは動作しないハードウェアに対処するためのアドバイスは次のように記されている。

1. カーネルモジュールを使って該当するサポートを読み込みます。この状況に対応するには、おそらくこの方法が最も簡単でしょう。必要なモジュールが読み込まれるように/etc/rc.d/rc.modulesを編集します。
2. 必要なドライバも含めてカーネルをリコンパイルします。

熟練したLinuxユーザなら、これを読んで「なるほど、単にinsmodを使ってモジュールを読み込んで、今後はリブート時にモジュールが読み込まれるようにrc.moduleを編集しておけばいいのか」と納得するかもしれない。しかし、Linuxに慣れていない人や、こうした手作業を必要としないディストリビューションからLinuxを始めた人は、困惑するか、別のディストリビューションのインストールCDに手を伸ばすかのどちらかだろう。

Slackwareのインストール途中に設定が行われるのはrootユーザだけで、一般ユーザの設定はまったく行われない。そのため、「はじめに」のメッセージを読んだあと、adduserユーティリティを使って一般ユーザの設定を行ったうえで一般ユーザとしてログインし直し、startxを実行してX環境を立ち上げ、Slackwareのデスクトップ環境を試すことになった。デフォルトのデスクトップ環境はKDEになっているが、xwmconfigを使えば容易に変更できる。

Slackwareに含まれているパッケージは最小限の変更しか行われていないため、KDEをはじめとするアプリケーションは、開発元のプロジェクトがリリースしているのとほぼ同じものである。この点は、ソフトウェアにパッチをあてて特定のユーザに合うようにデスクトップ環境を設定している多くのディストリビューションと異なっている。そこにはSlackwareの理念ともいえる何かが存在することは確かだが、なかには少し手を加えたほうが良かったのではないかというパッケージもあった。

たとえば、WindowMakerのアプリケーションメニューにはOpenOffice.orgのエントリが含まれているが、SlackwareではOpenOffice.orgがインストールされないため、このメニューを選択して起動しようとしても何も起こらない。WindowMakerのアプリケーションメニューには、少なくともシステムに何がインストールされているかを反映させる必要があるだろう。

また、Slackwareはそのままの状態でも、マルチメディアサポートの点で他のディストリビューションよりいくらか優れている。最近のほとんどのディストリビューションは、MP3のサポートを敬遠したり、QuickTimeムービーをサポートしたりしているが、Slackwareにはどちらも用意されている。しかもSlackwareのMP3は再生ができるだけでなく、MP3エンコーディング用のLAMEも備えている。さらにOggも用意されているので、ライセンスや品質上の理由からOggを好む人にはその選択も可能だ。Flashはデフォルトではインストールされていないが、Firefoxを使えば簡単にダウンロードしてインストールすることができた。

訂正:LAMEはSlackware 11ではなく、実はdropline GNOMEに含まれていたものでした。混乱を招く記述があったことをお詫びします。

Slackwareへのパッケージのインストールは、installpkgおよびpkgtoolユーティリティを使って簡単に行えるが、Slackware 11には、ネットワーク経由でパッケージを処理するslackpkgというAPTライクなツールも用意されている。このツールはデフォルトではインストールされないが、Slackwareのインストールメディアの追加パッケージのディレクトリに収録されている。

DebianのAPTと同様に、slackpkgではネットワーク経由でのパッケージのインストール、アップデートの実施、パッケージの削除が行える。またslackpkg searchを使えば、パッケージ一覧から検索を実行することもできる。インストールや削除、アップグレードに使う分には問題ないが、この検索機能には少しチューニングが必要かもしれない。「pysol」で検索をかけてもkdebaseやkdeartworkのような関係のない結果がほんの少し返ってくるだけだった。

さらにslackpkgツールには、APTや他のディストリビューションでは見た覚えのない機能が1つある。それがclean-systemコマンドで、「標準」のSlackwareインストール環境に含まれていないパッケージをすべて削除するというものだ。

結論

Slackware 11はこれまでの長い伝統を守り、熟練ユーザ向けの飾り気のない安定したリリース内容になっている。システムに手を加えることを厭わない人にとっては、優れたデスクトップシステムになる可能性がある。結論としては、昔ながらのスタイルとUnix式のやり方を好むユーザの要求を満たすのがSlackwareであり、正しく動作させるためにカーネルのリコンパイルや設定ファイルの編集が苦にならないユーザに適したディストリビューションだといえる。一方、「何もしなくても動作する」ことを期待する新規ユーザには向いていない。とりわけ、始めから広い範囲のハードウェアをサポートし、コマンドラインについての理解がほとんど不要なGUIの管理ツールを備えたFedoraやUbuntuのようなディストリビューションと比較した場合には、その傾向が顕著である。

NewsForge.com 原文