Gaim 2.0の初見レビュー

Gaim 2.0のリリースが数週間後に迫っている。Gaimチームは先週、数々の新機能を加え、ユーザインタフェースを改善したbeta4をリリースした。Gaim 2.0の体裁はGaim 1.5を純粋に改善したものとして整えられているが、なかには必ずしも良い方向に変わっていない機能もあり、Google Talk向けの音声サポートもまだ動作していない状態だ。

ここしばらく、具体的には昨年の12月からずっと、Gaim 2.0はベータ版のままである。Gaim 2.0最終版(またはbeta4)がおなじみのディストリビューションの安定版リリースに採用されるまでには、まだしばらく時間がかかるだろう。今回、Gaimプロジェクトがリリースしたのは、いくつかのFedora Coreリリース用のRPMとソースのtarball、それに数種類のWindows用バージョンである。使っているディストリビューション用のGaimパッケージが存在しない場合は、ダウンロードしたソースのtarballを展開し、./configureを実行したうえで一般ユーザとしてmakeを行い、make installの実行をrootとしてか、sudoを使って行えばよい。ただし、すでにシステムにGaimがインストールされている場合は、必ずそのアンインストールを行ってからソースからのインストールを始めること。

また、少数の必要な開発パッケージがインストールされていない場合は、そのインストールを行わなければならないかもしれない。Ubuntuであれば、sudo apt-get build-dep gaimを実行することで、Gaimのコンパイルに必要なパッケージがダウンロードされ、依存関係のあるすべてのパッケージを取得できるはずだ。

Gaim 2.0 main window
Gaim 2.0のメインウィンドウ ― クリックで拡大

さらに、ベータ版をインストールする前に既存のGaimプロファイルディレクトリのバックアップをとっておこう。ホームディレクトリの下にある.gaimというディレクトリがそれだ。私の場合は昨年12月からずっとGaim 2.0のベータ版を走らせているのでまったく問題なかったのだが、特にたまっているチャットのログを保存しておきたいなら、やはり~/.gaimディレクトリのバックアップを行うのが得策だろう。

Gaim 2.0の変更点

Gaimのサポートするプロトコルの一覧には、2.0シリーズになって少し変化が見られる。Gaim 2.0は引き続きAIM、Yahoo!、MSN、Groupwise、IRC、Zephyrをサポートしているが、Gadu-GaduとNapsterはデフォルトのサポート対象から外されている。GaimのFAQには、担当のメンテナがGaimチームにいないのでGadu-Gaduの正常な動作を維持するのは難しく、「手に負えなくなった」場合にはデフォルトのビルドから除外される可能性があると記されている。Gadu-GaduをサポートしたGaimを自らの手でビルドすることは可能だが、デフォルトでは用意されておらず、Fedora CoreとUbuntuのどちらのビルドにも含まれていなかった。またGaim 2.0には、QQ、Simple(SIP)、Sametimeの各プロトコルのサポートが追加されている。

Gaim 2.0の見た目は1.5から大きく変化している。もともとGaimのインタフェースはAOLのAIMクライアントにかなり近いものだったが、今回は独自の外観になっている。Gaim 2.0を初めて立ち上げると、「Buddy List(仲間リスト)」ウィンドウと「Accounts(アカウント)」ウィンドウが表示される。アカウントを定義した後は、「Buddy List」ウィンドウだけが起動時に表示されるようになる。最初のログインウィンドウが姿を消しているのは、Gaimでは前回の終了時に使っていたサービスに対するサインインが自動的に行われるからだ。

「Accounts(アカウント)」ボタンは、Gaimツールバーの一番上のメニュー項目に移動している。それぞれのアカウントに個別のメニュー項目があり、各項目には、アカウントに関連付けられたプロトコルによって決まるオプションを示すサブメニューが付いている。アカウント情報のGaim内部での編集やアカウントの有効/無効の設定を行う標準のメニュー項目のほか、IRCアカウントではサブメニューから「Message of the Day(MOTD)」を表示でき、Jabberアカウントではパスワード変更のメニュー項目があり、AIMアカウントでは連携用の電子メールアドレスを変更できる、といった具合だ。

また「Preference(設定)」ダイアログは完全に作り直されており、前よりもかなり良くなっている。以前のレイアウトは少しわかりにくかったが、今回はタブ付きのダイアログになっている。このダイアログのほうがずっとユーザフレンドリであり、探しているオプションも簡単に見つかる。

Gaim 2.0 preferences dialog
Gaim 2.0の設定ダイアログ ― クリックで拡大

「Preference」ダイアログに含まれていた「Plugins(プラグイン)」関連の部分は、専用の設定用ダイアログに姿を変えている。それぞれのプラグインに有効/無効を切り替えるトグルボタンが存在し、追加の設定があるオプションには「Configure Plugin(プラグインの設定)」ボタンが用意されている。

Gaim 2.0にはよく知られたプラグインが揃っており、その大半は1.5シリーズでも利用可能だったものだ。なお、Log Readerは新しいプラグインで、これを利用するとIMログをAdium、MSN Messenger、Trillianから読むことができる。Linux以外のプラットフォームを使っていてGaimに乗り替えようとするユーザには便利なプラグインだろう。

私が愛用しているプラグインの1つがPsychic Modeである。いくつかのネットワークでは、誰かが自分宛てのメッセージを入力し始めると、最初のメッセージが書き終わらないうちにこのプラグインが通知してくれるのだ。この機能は「メッセージ入力中に仲間に通知(notify buddies that you are typing to them)」オプションを相手側が有効にしていなければ働かないが、私が見たところ、ほとんどのIMクライアントではこのオプションがデフォルトで有効になっているらしく、多くの人はわざわざ設定を変更する必要はない。知人が自分宛てのメッセージを書き始めると、Gaimがそのスクリーンネームと「胸騒ぎがします(You feel a disturbance in the force.)」といったメッセージを記したチャットウィンドウをポップアップ表示してくれる。幼稚に思われるかもしれないが、私の場合は、技術に疎い知人が私宛てのメッセージを書き終わる前に先手を取ってメッセージを送るという遊びを楽しんでいる。最初は相手もそんなこともあるかと不思議がる程度だろうが、3日も4日も続ければきっと不気味に思う人が出てくるはずだ。

Gaim 2.0で気に入っているもう1つの機能が、受信メッセージのフォーマットを無効にできる点だ。フォントのサイズと色をほとんど読めないようなものに変更してAIMを使っている数人の仲間とチャットしたことがある。それはまるで、ボソボソとつぶやいている人と音質の悪い携帯電話で話をしようとするようなものだ。「受信メッセージのフォーマットで表示(Show formatting on incoming messages)」オプションを無効にすることで、こうしたフォーマットの問題は解消される。

さらに、今回のバージョンではファイル転送機能も改善されているようだ。以前、Gaimを使ってAIMのネットワーク上にいる仲間との間でファイル転送を試したときには、まったく機能していないように見えた。だが、今回はファイル転送がうまく機能しているようだ。2つのAIMアカウントに同時にログインしていくつかのファイルをやりとりした後、今度はWindowsのAIMクライアントを使っているAIMネットワーク上のユーザとファイル転送を試してみた。どちらの場合も、問題なくファイルを送ることができた。

テキスト版のgaim-text

Gaim 2.0のリリース内容には、GUI化されたアプリケーションでマシンを低俗化させたくはないが、GaimがサポートするすべてのIMプロトコルにアクセスしたい、というユーザにおあつらえ向きのテキストモード版Gaimが含まれている。gaim-textはGoogle Summer of Codeの一環として作られたもので、まだいくつか粗削りな部分はあるが日常的に利用するには十分な完成度に達している。

このテキストモード版の利用は、ショートカットの使い方を覚えてしまえば、とても簡単だ。またショートカットはすべてAltキーで始まるので、覚えるのはそれほど難しくない。Alt-nというショートカットキーで次のGaimウィンドウに移動、Alt-cでウィンドウを閉じる、といった具合だ。

gaim-textのmanページにはショートカットの一覧が示されているが、おそらく必要になるはずのショートカット1つが記載されていない。アカウントや設定などのメニューへとつながるオプションウィンドウを開くために使うAlt-aである。また、利用できるショートカットの一覧を表示するためのAlt-hまたはAlt-?のようなショートカットはぜひ用意してもらいたいところだ。

Gaimとgaim-textはプロファイルを共有するので、試しにgaim-textを使ってみる場合でも、そのためにアカウントや設定を再定義する必要はない。ただgaim-textを立ち上げるだけで、必要な準備は整うわけだ。

また、マウスの類が必要であれば、Gaim Ncurses Toolkit(GNT)の設定ファイル~/.gntrcに次の2行を追加することでマウスのサポートを有効にできる。

[general]
mouse = 1

テキストモード版で1つだけ不満に思うのは、ログアウト前の確認がないことだ。Alt-qキーを押すとすぐに終了し、コマンドラインに戻ってしまう。キーボードに適した小さな指に恵まれなかった人は、Alt-w(ウィンドウを閉じる)をちょっと押し間違えてAlt-qとやってしまうことがある。私はテスト中に少なくとも2回、この間違いでうっかりgaim-textを終了させてしまった。

いまひとつな「万能向け」マーカ

Gaim 2.0は、1.5シリーズを全体的に改善したものにはなっていない。2.0における変更点のほとんどは納得できるものだが、新しいステータスシステムがどうにも気に入らない。私の場合は、AIM、3つのJabberアカウント、IRC、それにYahoo!のIMネットワークへのサインインにGaimを使っており、IRCとJabberアカウントの1つは仕事用、AIM、Yahoo!、残り2つのJabberアカウントは個人的なやりとりに利用している。つまり、IRCは利用するけれど、AIMと私的なJabberアカウントでは「不在」にしたいときがあるのだ。

Gaim's complex account status setup
Gaimの複雑なアカウントステータスの設定 ― クリックで拡大

Gaim 2.0では、直観的にわかりづらい「何にでも使える」ステータスマーカを利用している。カスタムのステータスメッセージを作成することでアカウントごとにステータスを設定できる。だが、この設定方法は少しわかりにくく、ユーザは必要以上の負担を強いられることになる。Gaim 1.5.xではきわめて直接的な方法で各アカウントにステータスを設定できたので、それが踏襲されなかったのが名残り惜しい。

また従来のGaimユーザは、メニュー上の「無効にする(disable)」という表示を「オフラインにする(offline)」と読み替えるとともに、アカウントごとに起動時に自動的にサインインするかどうかを指定できた1.5シリーズの「Account(アカウント)」ダイアログから、それ以前のスタイルのダイアログに逆戻りすることになる。今のところGaim 2.0には、私が探した限り、そうしたアカウントごとに自動ログインを設定できるオプションが見当たらないため、前回の終了時にログインしていたすべてのサービスに再びログインすることになってしまう。たとえ以前Gaimを終了したときには6種類のサービスにログインしていても、Gaimの再起動時に私が自動的にログインさせたいのは1つだけなのだ。

さらに、GaimがまだGoogle Talk向けの音声機能をサポートしていないことに私はひどくがっかりした。GoogleはLinux用のクライアントを提供していないため、この機能はLinuxユーザにとっては大きなメリットになるはずなのに残念だ。

こうした不満はあっても、Gaimが私の好みに合ったチャットクライアントであることに変わりはなく、いつかは満足できるものになるだろう。Gaimには私がチャットクライアントに求める機能がほぼすべて揃っており、またプロトコルについては私が使う必要のあるものすべてに加えてさらにいくつかがサポートされている。

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