STUXライブCD:一部に技術的な問題あり

STUXはSlackwareおよびKnoppixをベースとしたライブCDであり、カスタムISOを構築できるMorphixライクな機能を備えている。この組み合わせは大きな可能性を秘めているが、今回の実装には、求められて然るべき部分なのに手つかずになっているところがいくつかある。単純に新しいディストリビューションを楽しみたいのなら試してみる価値はあるが、今使っているデスクトップOSの置き換えを考えているなら、他をあたるのがよさそうだ。

ダウンロードしたSTUXのバージョン0.9.2を焼いたCDは順調にブートが進み、申し分なく構成されたシステムが華やかな壁紙と共にグラフィカルなデスクトップ上に現れた。シンプルな背景によってアイコンとのコントラストを強調する代わりに、このディストリビューションは名前の由来になった画家Stefan Stuxの絵を壁紙に採用している。すぐに、この壁紙がブートのたびに別の絵に変わるのに気付いた。最初はこうした華美な壁紙に違和感を覚えたのだが、そのうちブートのたびに今度はどんな興味深い絵が出てくるのかが楽しみになってきた。慣れてしまえば、STUXならではのユニークな趣向だと感じた。

STUXのハードウェア検出はKnoppixベースのシステムによって行われていると以前読んだことがあり、それなりの結果を期待していたが、確かに失望させられることはなかった。私がSTUXのテストに用いたマシン6機種では、ハードウェアの検出が正しく行われた。ただ、モニタの1つでちょっとした問題が起こって処理できない周波数を使用する設定になっていたのだが、この問題は容易かつ迅速に修正できた。ところが、しばらくSTUXをメインのマシン(Sempron 2800+、オンボードのSiS製ネットワーク/グラフィック/サウンド・カード、250GBのSATAドライブ2基を搭載)で利用しているとフリーズしてしまった。メインマシンでしか起こらないのでハードウェア関連の問題だろうとは想像がついたのだが、使い始めてから数分後にフリーズという挙動を繰り返したため、このマシンのハードディスクにSTUXをインストールするのは無理だった。

事実、インストールを試みた2台のコンピュータ(SATAドライブ搭載のメインシステムおよびIDEドライブ搭載の旧システム)において、STUXはいずれのハードディスクの検出にも失敗した。どちらのドライブもlvmdiskscanでは表示されたものである。救いを求めて訪れたSTUXのフォーラムには実質的な活動がほとんど見当たらず、スパムがあふれていた。また、回答をくれたメンテナの第一言語が英語でないというちょっとした言葉の壁もあった。それはさておき、質問を投稿して数日後には回答が得られ、結果的にはこのハードディスクのインストール問題に対処するパッチを手に入れることができた。

STUXのフォーラムでは、先のパッチを受け取る前にコマンドラインのインストーラを動作させる方法も教わっていた。それでもやはりメイン・システムの問題は解決されずSTUXのインストールを果たせなかったのだが、セカンダリ・システムには無事にインストールすることができた。このインストーラというのは、単純に指定したパーティションを完全に消去し、何の選択肢も提示せずにすべてのパッケージをインストールするものだ。システムに必要なごく普通のパッケージ(Apache、PHP、Python、MySQL、SuperTux、Dia、KOffice)をQtSwaret経由でインストールしたが、このときは放っておいてもいいくらいSTUXは順調にインストール作業を実行していた。KOffice、Dia、Pythonのインストールでは、いずれもステータスバーが99%になってから10分ほどそのままの状態が続いたが、最終的にはうまくインストールできた。

STUXは注目に値する機能を数多く提供しており、そのなかにはUSBキーへのインストール機能、ライブCDの設定をハードディスクまたはUSBキーに保存する機能、STUXのISOを新しくカスタマイズしてCDに焼く機能が含まれている。STUXが収まるほど大容量のUSBキーは手元になかったのだが、USBキーへのインストール手順には問題があると感じた。というのも、インストーラは空き容量のチェックも必要な容量の通知も行わないまま、USBキーをフォーマットしてファイルのコピーを始めたからだ。できれば、この方法ではなく他の方法を試したいと思った。また、自分の設定内容をハードディスクに保存しようとしたところ、ハードディスクが検出できないという問題は、インストール・プログラムに限ったことではないことが判明した。設定の保存先としてハードディスクを選ぼうとしたときにもこの問題が生じ、ハードディスクドライブが1つも選択肢として表示されなかったのだ。幸いなことに、ハードディスクへのインストールを行うためのパッチを適用することでこの問題も解決され、自分の設定内容をうまくハードディスクに保存することができた。

続いて、STUXのカスタムISOの作成に取りかかることにした。それまではずっと、ライブCDとUSBキーの組み合わせに、USBキーに対して設定内容と各ファイルの読み書きを行うための自作スクリプトを併用してSTUXを使ってきた。私はこの方法で不都合ないのだが、私の使うプログラムをスクリプトがUSBキーから読み込み、インストールし、必要なファイルをコピーし終えるまでに常に1、2分待たされることになる。かなり不格好なハッキングなので、STUXからカスタムISOを作成することに関心があったわけだ。

すでに設定を終えたSTUXからISOを作成してメディアに焼くのが簡単だろうと思い、STUXのISO作成プログラムを実行した。現在実行中のシステムに基づいてISOを作成できるというものだ。ところがこの処理は、必要なモジュールの一部が見つからないというメッセージを出し、始まって数秒後に失敗した。リブートして再びライブCDを実行すると今度はうまくいった。最初、進捗バーは出ないかに思われたが、数分ほどすると現れた。約30分後、進捗バーが99%のところで止まったのでフリーズしたのか確かめようと「Enter」キーを押したところ、中止の確認が求められることもなく作業は中断されてしまった。また、この時点でシステムは使用不可能になり、処理を再実行するためにリブートを余儀なくされた。ようやくリブートが終わった後、CDを焼くプログラムをRAMに読み込んでからライブCDを取り出して新しいISOを焼く方法があるかもしれないと思い到った。しかし、そんなオプションはなかったので、もう一度リブートし、自分のSTUX環境に戻ってからカスタムISOを焼かなければならなかった。

STUX Linuxには、3Dデスクトップ環境も含まれている。STUXプロジェクトのサイトに行けば、素晴らしいスクリーンショットを何枚か見ることができる。しかし、私が試したシステムでは、そのうちいくつかはLinuxの3D環境に対応したスペックを備えていたにもかかわらず、いずれも3Dデスクトップを実行できなかった。試しにNVIDIAカードを装着してブートを行ったときには「nvidia」のオプションが現れたが、それも役には立たなかった。

私が体験した限り、STUXは必ずしも賞賛に値するディストリビューションではなかった。技術的な難点が多く、部分的にせよ全体的にせよ、きちんと動作しなかった機能も少なからずあった。

このディストリビューションの開発者は、1月末までにSTUX 2007をリリースすると約束していたが、現時点ではまだその発表は行われていない。

使いやすくサポートの行き届いたディストリビューションを探しているのなら、STUXはまだそのレベルに達していない。ただし、Giacomo Picconi氏の努力には感心した。彼はSTUXの唯一の開発者らしく、このディストリビューションの設計、開発、およびサポートを一手に担っているのだ。

Preston St. Pierreはカナダ、ブリティッシュコロンビア州にあるフレイザーバレー大学(the University of the Fraser Valley)のコンピュータ情報システム専攻の学生。

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