KDE 4に新たなプレビュー版が登場

先週金曜(2月23日)、KDEプロジェクトは、来るべきKDE 4.0の開発プレビュー版の第3弾をリリースした。「Kludge」とも呼ばれるこのバージョン3.80.3には、言語ライブラリSonnet、新しいファイルマネージャDolphin、ハードウェア・ライブラリSolidなどが含まれている。

KludgeのパッケージはすでにKubuntu EdgyとopenSUSEのものが用意され、KDEのWebサイトからはソースが入手できる。ただし、今回のリリースはエンドユーザ向けではなく、KDE 4の開発や移植の支援、またはKDE 4向けのアプリケーション開発を希望するプログラマを対象としたものである。Kludgeはまだ不完全で大きなバグがあるため、日常的な作業には当分使えないだろう。

当初は誤った報道があったが、Dolphinの登場はKonquerorの終焉を予告するものではない。KonquerorはKDE 4でも引き続き利用可能だが、より簡素なファイルマネージャとしてDolphinが使えるようになるわけだ。KDE開発者のAaron Seigo氏は、前述の報道の誤りを自らのブログで次のように指摘している。「現時点の計画によると、Dolphinはデフォルトのパネルボタンや、ファイルマネージャの実行を要求するアプリケーションによって起動されるファイルマネージャとなっている。一方のKonquerorは、Dolphinの類で完全には置き換えられない(逆にDolphinもKonquerorによる置き換えは不可能)パワーユーザ向けのアプリケーションだ。両者は、想定される使用場面やターゲットユーザ層がそれぞれ異なる」

ハードウェアライブラリSolid

KDE開発者のWill Stephenson氏は、Solidライブラリを「KDE 4のハードウェア・インタフェース体系」と説明する。Solidが存在するのは「幅広いデスクトップ・アプリケーションがハードウェアの操作、そしてKDEの進歩を要求している」からだと彼は言う。

KDE 3.xシリーズのリリースを重ねるなかでLinuxは「ユーザのアプリケーションがやりとりする必要のある一定範囲のハードウェアのサポート機能」を獲得した、とStephenson氏は語る。彼によると、以前はこうしたハードウェアのサポートが「ほとんどなく、あるいはドライバのサポートはひどい状態だったため、そうしたハードウェア向けにKDE 3の各アプリケーションが独自のインタフェースを開発する傾向があった」という。

これは「KDEらしくないやり方だ」とStephenson氏は述べる。むしろ、KDEプロジェクトなら、すべてのアプリケーションが使えるライブラリを用意する ― つまり、安定性の高さとメモリ使用量の少なさの点でより優れたコードを提供するアプローチ ― を取ろうとするだろう。KDE 4では、この問題がSolidによって解決されている。「SolidはKDE 4におけるハードウェア関連のコードの集大成であり、十分な設計とドキュメント化が行われ、ライブラリ並みの質を備えたハードウェア・インタフェース群を提供する」

Stephenson氏によると、Solidのコアな部分に対する作業は終わっており、次のステップは「リムーバブルメディアの枠組みやKNetworkManagerのような」KDE 3用に書かれたコードの改良と、他の開発者向けのマニュアル作成になるという。「すでにAPIマニュアルはかなり出来上がっている。また、Solidがもっと多くのアプリケーションから利用できるように、KopeteからWebCamのコードを取り出してSolidに組み込む作業にも取りかかっている」

マルチプラットフォームなKDE

抽象化されたハードウェア・インタフェースを提供する理由は、Linuxをはじめとする*nix系OS以外にもKDEを広めることにもある。実は、Kludgeリリースのもう1つの目玉が、WindowsやMac OS XでのKDE 4サポートの改善なのだ。一部のユーザには奇妙なコンセプトに思えるかもしれないが、Seigo氏は「こうしたプラットフォームでもKDEのテクノロジを利用したいとの要望は多く、なかでもソフトウェアを開発したいという人々の意見が目立っている」と語る。

「最新のデスクトップ・アプリケーションを書こうとする多くの人々にとって、KDEは、移植性とオープンソース・ツールという2つの大きな問題の解決に役立っている。例えば、軽量で高機能、オープンで組み込みが容易なHTMLコンポーネントの欠如がクロスプラットフォーム化の最大の障壁になっているアプリケーションは少なくない。Internet Explorer、Gecko、Operaはいずれも上記の要件の1つまたは複数を満たしていない。その結果、これらのアプリケーションはWindows上に取り残されてしまっている。KDE 4では、こうした問題の解決に取りかかる」(Seigo氏)

プロプライエタリなプラットフォームへのアプリケーションの移植を容易にすることで、KDE開発者たちは「オープンソースのアプリケーション、あるいはオープンソースのコードを利用したアプリケーションを書く人々を急増」させようとしている、とSeigo氏は言う。「ソフトウェアの世界では、開発者、とりわけその数がものを言うからだ」

しかし、KDEシェルそのものをWindowsやMac OS Xに移植する「つもり」はない、とSeigo氏は語る。「その理由は、KWinのようなウィンドウマネージャには単にそのねらいがまったくないからであり、また我々の関心がフリーソフトウェアに携わるWindowsやMac ユーザのために全体的な環境を作り上げることにあるからでもある。我々のパワフルかつポピュラーなアプリケーションの多くはいずれWindowsやMac OSでも利用できるようになるだろうが、それでも我々はKDEのワークスペースと、自分たちがフリーのオペレーティングシステムに提供する‘付加価値’としてそこで行われるインテグレーションの改善に気を配っている」

スケジュールと今後のスナップショット

これまでのところはKDE 4の各プレビュー版のリリースに時間がかかっているが、今後KDEプロジェクトでは定期的にスナップショットをリリースしていく予定だ、とSeigo氏は説明する。「というのは、以前よりも効率の良い進め方がリリースチームに定着したのと、開発が容易に把握できるようになったためだ。『Little Engine Who Could(決して諦めなかった小さな機関車)』の話(できると思えば何でもできる、というメッセージが込められた童話)のとおり、ついに我々は峠を越えることができた」

Stephenson氏も、KDE 4の開発が加速していることに同意している。「コアのライブラリの移植とバグ取りがほとんど終わり、みんなマニュアルやチュートリアルの更新に時間を割けるようになった。長い間ずっと、基本となるライブラリの変更が続き、その内容を把握するだけでその日の仕事が終わってしまうという状態だった。アプリケーションの作者のほとんどは、自分のコードはもちろんkdelibsの修正も嫌がる傾向がある。だからこのライブラリが落ち着いた今では、KDE 4に携わる開発者の数が確かに増えている」

Seigo氏によると、プロジェクトは「早期の完成に向けて努力したこともあって今や大きな進展を見せている」が、「並のプロジェクト」ではないことも重々承知しているという。

「今回の開発対象範囲はKDE 2のときと似ており、KDE 3のときのような安易な内容ではない。KDE 3のときよりも大規模な取り組みが必要とされ、これからもますます多くの人手が要る。そして4.0のリリースが終われば、みんな言っていることだが、忙しさは緩和され、今ほど厳しくないKDE 4シリーズの開発サイクルに入ることができる」

では、KDE 4.0はいつリリースされるのだろうか。はっきりとした日程は決まっていないが、Stephenson氏は次のように話している。「(6月上旬の)Akademyが終われば、一般の人々にも使ってもらえるパッケージが出るだろう。その後、各ディストリビューションにプレビュー版が入り始めるので、4.0のリリースはその後になる」。Seigo氏もまた、具体的な日付は示さなかったが、2007年の末までにKDE 4.0を出すという公約をKDEプロジェクトはまだ取り下げてはいない、と語った。

KDE開発者の主たる関心はこれから登場するKDE 4に向けられているが、Seigo氏によると、KDE 4の開発期間中、そして4.0がリリースされてからもしばらくは、既存の安定版リリースの面倒も見続けることになるという。「そのうち、おそらくは2007年春の半ばか終わり頃に、3.5.xシリーズの新しいバージョンがリリースされる。使えそうなバグ修正版や機能追加版が存在する限り、3.5シリーズのリリースは続くだろう」

「KDE 3のインストール環境を対象としたサポート契約を結んでいる企業は少なくない。多くの企業、行政機関、学校は、使い始めてから3~7年ほど経たないとシステムのアップグレードを行わないので、現在3.5を利用している組織にとって、本当に市場の実状に即した選択肢は3.5を使い続けること以外にないのだ」(Seigo氏)

KDE 3.5.xのサポートを突然打ち切るなどはもってのほかであり、3.5シリーズは「段階的に収束させていくのが当然だ」とSeigo氏は語る。「これはフリーソフトウェアの美点の1つである。自分たちの行為が下流の市場に与える影響を意に介さず、Vistaの売り込みに必死になって旧製品を使わせまいとするMicrosoftと彼らのやり方とは大違いだ。KDE 3の息の長さは、こうした企業やユーザに認められることになるだろう」

とは言え、KDE 4がKDEプロジェクトの「最重点領域」であることは間違いない、とSeigo氏は話している。「KDE 4のリリースは、ユーザ側にその準備さえ整っていれば、エンドユーザに近い企業パートナー数の増加とユーザベースの拡大を確実にもたらすだろう。もちろん、早期導入にこだわるユーザや熱烈な支持者には、今すぐにKDE 4に飛びついてもらっても構わない」

「誰もが望んだものを手にできる。そして、ほんの少し行動を起こすだけでその可能性は2倍になるのだから」

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