CD1枚でサーバをセットアップ――CentOS 4.4 Single Server CDの簡易導入ガイド

 先日私は、1基のサーバを新規に用意しなければならない事態に陥った。その際に求められていた要件は、Web、メール、ファイル共有という一般的なサーバコンポーネントを備えると同時に、堅牢性と信頼性を有していること、というものである。いずれにせよ、ネットワーク経由で4GBものソフトウェアをダウンロードすることは避けたかった。そこで選択したのがCentOSというディストリビューションのSingle Server CDバージョンである。

 CentOSとはCommunity ENTerprise Operating Systemを省略した名称であり、Red Hatからフリーな利用が許可されているソース(GPLないし同様のライセンスが適用されているもの)を基に作成された、エンタープライズ向けLinuxディストリビューションの1つである。特にCentOS 4はRed Hat Enterprise Linux 4をベースとしており、x86(i586およびi686)、x86-64(AMD64およびIntel EMT64)、IA64、Alpha、S390/S390xアーキテクチャをサポートしている。

 Single Server CDに関しては、GUIを除いた基本的なサーバ用セットアップに必要なアイテムの大半が取りそろえられている。こうした構成は、即座に利用可能なインストールを必要とするユーザに適していると言えるだろう。またメモリ要件の高いGUI系コンポーネントが省かれているため、サーバとしての基本機能だけならば最低128MBのRAM環境で使用することも可能であるが、大型データベースを運用するような場合は当然それなりのリソースが必要となる。

インストール手順の詳細

 Single Server CDのインストール作業は非常に簡単であり、過去に何らかのLinuxディストリビューションのインストールを体験した人間であれば特に戸惑うことはないだろう。必要な操作は、ミラーサイトからSingle Server CDのイメージをダウンロードし、それを焼き込んだCDからサーバを起動するだけである。

 先に触れたようにSingle Server CD本体にGUI系コンポーネントは同梱されていないが、インストール作業そのものについては、操作性に優れたグラフィカルインタフェースで進行するようになっている。実際、画面に表示される指示に従って作業を進めれば、インストールは問題なく終了するはずだ。ここでヒントを1つ。持ち越すべき既存のデータが存在せず、すべてのディスクを再フォーマットして差し支えないという場合は、Disk Partitioning Setupというステップで提示される「automatically partition」(自動パーティション)オプションを選択することで、作業時間を大幅に短縮することができる。

 また、SELinuxおよびファイアウォール機能はオフにしておくことをお勧めする。特にローカルのLAN内部で安全にサーバを運用できる環境の場合、これらは不要なはずである。なおファイアウォールについては、system-config-securitylevelというコマンドを使用することで、後から設定変更を行うこともできる。

 インストール時に行うソフトウェアパッケージの選択は、デフォルトのままで問題ないだろう。デフォルト設定のCentOSシステムには、Web、メール、FTP用の各サーバを始め、DNSやSamba経由のWindowsファイル共有といった諸機能が一通り取りそろえられているからだ。サーバのインストール作業は、標準的なスペックを有すマシンに対して行うのであれば、作業終了までに20分もかからないはずだ。

 こうしたインストールによって、CDに同梱されているすべてのパッケージが利用可能となる訳ではない。たとえばPostgreSQLが使いたければ、別途インストールする必要がある。PostgreSQLの具体的なインストール手順は、CD-ROMをマウントしてから(mount /media/cdrom)、yumを用いてクライアントライブラリおよび同サーバをインストールするという流れになる(必要なコマンドは下記)。

yum localinstall /media/cdrom/CentOS/RPMS/postgresql-7*
yum localinstall /media/cdrom/CentOS/RPMS/postgresql-server-7*

PHP 5およびMySQL 5へのアップグレード作業

 CentOSはその信頼性と安定性の高さを1つの特長としている。そうした長所を実現しているのは、最新版ソフトウェアをあえて排して実績のある古参パッケージで固めた構成にあると言っていいだろう。ただし、必要なソフトウェアの最新版がインストールされないというのは、弱点であると見なせなくもない。私の個人的な見解として、PHPおよびMySQLのバージョン5が同梱されていないのは非常に大きな問題だと思うが、これらのパッケージに関してはCentOS Plus Repositoryから入手することができる。

 デフォルトのCentOS 4.4でインストールされるのはPHPのバージョン4.3.9である。このPHPをバージョン5にアップグレードさせるには、サーバのインターネット接続を確立してから、下記のコマンドを実行すればいい。

yum --enablerepo=centosplus upgrade php*

 同様の事情はMySQLに関しても当てはまる。デフォルトのCentOS 4.4でインストールされるのはMySQLのバージョン4.1.20であり、これをバージョン5にアップグレードさせるには下記のコマンドを実行すればいい。

yum --enablerepo=centosplus upgrade mysql*
yum --enablerepo=centosplus install mysql-server-5*

各種の設定に必要な基本コマンド

 CentOS 4.4 Single Server CDにはGUI系コンポーネントが含まれていないので、すべての設定はコマンドラインを介して行う必要がある。ここでは、サーバの基本設定に必要なコマンドとファイルをいくつか紹介しておこう。

 サービスの始動および停止は、下記のコマンドで行える。

service XYZ start
service XYZ stop

 XYZにはpostgresqlなどのサービス名を指定する。

 ネットワークの設定は、下記のコマンドで行える。

netconfig

 プリンタの設定は、下記のコマンドで行える。

system-config-printer

 WebサーバやMySQLサーバを含めたシステムサービスの一部は、デフォルトの設定ではブート時に始動されないようになっている。必要なサービスをブート段階で自動的に始動させるには、下記のコマンドのうち該当するものを実行すればいい。

chkconfig --levels 235 httpd on
chkconfig --levels 235 mysql on
chkconfig --levels 235 smb on
chkconfig --levels 235 vsftpd on

 POP3およびIMAPサービスを使用する場合は、dovecotデーモンの設定が必要となる。デフォルト設定のdovecotデーモンではIMAPサービスだけしか提供されないが、POP3も利用したければ/etc/dovecot.confを編集して下記の行を追加しておけばいい。

protocols = imap imaps pop3 pop3s

 このdovecotデーモン自体もデフォルト設定のままでは自動的に始動されない(標準パッケージとしてインストールはされる)ようになっているので、ブート時の始動を設定したければ、下記のコマンドを実行しておけばいい。

chkconfig --levels 235 dovecot on

 必要なすべての設定が完了したら、一度リブートをしておく。これはLinuxを扱う限り不要な手順だが、設定通りにすべてのコンポーネントが始動して正常に動作するかを確認しておくためである。

まとめ

 CentOSは信頼性と堅牢性を備えたLinuxディストリビューションであり、特にそのSingle Server CDバージョンについては、ネットワーク経由で多数のインストール用CDイメージをダウンロードする必要もなく、必要最小限の機能を備えたスリムなサーバディストリビューションを求めているユーザにとって最適な選択肢だと言っていいだろう。

Gary Simsは、イギリスの大学にてビジネス情報システムに関する学位を取得した後、ソフトウェアエンジニアとして10年間活動し、現在はフリーランスのLinuxコンサルタント兼ライターとして活躍している。

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