Win4Lin Pro Desktop 4.0:他の無料の仮想化製品にも及ばず

 古参の仮想化製品の一つである「Win4Lin」には今や老朽化の兆しが見え始めている。Win4Linは競合製品の数が乏しく、しかも高価であった2000年当時は全盛を極めていた。しかしそれから7年を経た現在、仮想化製品は多数存在するだけでなく無料で入手可能になっているものまでいくつもある。Win4Lin Pro Desktop 4.0には前バージョン以来特に目立った改良点はなく、今となっては時代遅れであり他製品に大差をつけられている。

 以前行なったWin4Lin Pro 2.0のレビューでは数多くの問題点を指摘したが、中でも最大の問題点はVMware Workstationと比較した際の性能の低さだった。とは言え当時VMwareの値段はWin4Linの値段よりも100ドルも高かったため、Win4Linは過去の遺産的なWindowsアプリケーションを実行するのにコストパフォーマンスの良い一選択肢となり得ていた。その後その次のバージョンのWin4Lin Pro 3.0がリリースされたときにはそのような性能の問題は改善されていたのだが、その頃にはすでにVMware Serverが無料化されていたうえ、VMware ServerにはWin4Lin Pro 3.0では利用できない機能も備わっていた。そして今回、最新版であるWin4Lin Pro 4.0がリリースされるに至ったのだが、わくわくさせられるような新機能は特に含まれていなかった。

いまだにコマンドラインの利用が必須

 Win4Lin Pro Desktop 4.0のインストールにはいくらか準備が必要だ。Win4LinはQEMUをベースとしており、エミュレーションの高速化のためにKQEMU Linuxカーネルモジュールを使用している。KQEMUをコンパイルするためには、GNU Cコンパイラと、利用するディストリビューションで使われているカーネル用のカーネルヘッダとが必要になる。

 以上は準備の半分に過ぎず、おまけにWin4Lin経由でのWindowsのインストールはコマンドラインで行なうことが推奨されている。One-Click-2-WindowsというGUIのインストール用ツールも存在するが、One-Click-2-Windowsではコマンドライン用のインストールツールでは使用可能であるいくつかのオプションを使用することができない。

 なお私が試したところ、特に問題なくインストールを完了することができた。とは言え、インストールに関して前バージョンと比べ特に改善された点もなかった。またWin4Linには、インストールした複数のWindowsの管理、表示方法変更、メモリ設定変更などのグラフィカルインターフェースがいまだに存在しない。これはもはや驚きに値する。

Win4Lin
Win4Lin(クリックで拡大)

及第点ぎりぎりの使い心地

 今回、私は1.2GBのRAMを搭載する1.5GHz Celeronマシン上のUbuntu 6.06 LTS上にWin4Linをインストールした。Win4LinPro Desktop 4.0は、Windows 2000とWindows XPのみをサポートしている。これは、VMware WorkstationやVMware ServerやVirtualBoxなど他の仮想化製品ではWindows 98やMEといったより古い版のWindowsもWindows Vistaのようなより新しい版のWindowsも新旧両方とも動作可能であることを考えると、大きな制約だ。

 Win4Linを使ってのWindows XP(Service Pack 2)のインストールは問題なく完了したが、私のシステムの性能は、謳われているような「ほぼネイティブ」の性能の足下にも及ばなかった。またWin4Lin上のWindowsは、Automatix2スクリプト経由でワンクリックだけでインストールしたVirtualBoxでの性能さえも下回っていた。ただしマルチタスクを行なっている際、例えばVLCメディアプレイヤとFirefoxウェブブラウザなどのアプリケーションを2つ動作させた状態でMicrosoft Wordなどの3つめのアプリケーションを立ち上げると、3つめのアプリケーションはVirtualBoxで同じことを行なった場合よりもやや短い時間で立ち上がった。一方、音楽を再生しているときにWin4Linがプロセッサを集中的に使用するタスクを行なうと、音飛びが起こった。またWin4LinはまだDirectX APIを扱うことができないため、Win4LinではWindows用のゲームを実行することはできない。

 一方、Win4Linの優れた点としては、追加ソフトをインストールしなくてもはじめから、ゲストOSのWindowsからホストOSであるLinux上の自分のホームディレクトリにアクセスできるという点がある。また、ホストOSのLinux上で動作しているアプリケーションとゲストOSのWindows上で動作しているアプリケーションとの間でテキストをコピー&ペーストするということもできる。ただしこれらの機能については、VMwareのvmware-toolsやVirtualBoxのWindows Guest Additionsといったアドオンパッケージをインストールすることで他の仮想化製品でも同じ機能を実現することができる。

貧弱なハードウェアサポート

 Win4LinがUSBメモリを直接認識するようになるのを心待ちにしていた人は、残念ながら今しばらく待つ必要がある。一方、USBマウスとUSBキーボードは動作可能だ。またもう一つ実現しなかったこととして、プリンタを直接的に取り扱うということがある。Win4Linでは相変わらず、ホストOSのLinux上で動作するプリンタのみが使用可能となっている。

 今回Core 2 Duoマシンでも試してみたところ、Win4LinがWindowsをインストールすることができず、Windowsのグラフィカルなインストール画面の立ち上げ直前でWin4Linが停止してしまった。それでも2、3回インストールを試みたが結局成功しなかった。そこでWin4Linフォーラムに投稿し、Win4Linチームに電子メールも送ったが、反応は得られなかった。

 Win4Linはかつて私がはじめて試した仮想化製品の一つだったのだが、残念ながら今では意味のある選択肢ではなくなってしまった。Win4Linには、69ドルという価格を支払うだけの価値がある機能は一つもなかった。Win4Lin Pro Desktop 4.0にアップグレードする可能性があるのは、Win4Linとともに購入することのできるサポートが必要な人で、かつ無料の仮想化製品に含まれている高度な機能や選択肢は不要という人だけだろう。

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