伝統を受け継ぐSlackware 12が装いを一新して登場

 Slackware Linuxは、現存するLinuxディストリビューションの中では最も歴史が長いが、現在も非常に広く普及しているものの1つである。先週リリースされたバージョン12.0はデフォルトで2.6.xカーネルを採用した最初のSlackwareであり、開発チームにとっては重要な意味合いを持っている。

 ほかにも新たなコンポーネントとしてKDE 3.5.7Xfce 4.4.1、Xorg 7.2.0、GCC 4.1.2が収められ、今やSlackwareは、安定性を損なうことなく最先端を行く存在へと近づきつつある。こうした理由から、今回のリリースは非常に刺激的な内容になっている。

 私が入手したのは最初の3つのCD-ROMイメージであり、torrentとしてダウンロードしたのだが、シーダ数が多いためかtorrentにしては意外に早く作業が終わった。

 Slackwareのインストーラは以前とほとんど変わっておらず、ncursesベースのメニュー対話形式のものになっている。インストールの基本的な流れは、ドライブのパーティション設定(必要な場合のみ)、swapパーティションの有効化、rootパーティションの指定、ソフトウェアの選択、rootパスワードの設定、LILOのインストール(必要な場合のみ)となる。Slackwareには、カーネルの選択肢として、汎用のカーネル、generic-smp(マルチプロセッサ/マルチコアのマシン用)、huge(カーネルのほぼすべてのドライバを使って構築したもの)、huge-smpの4つが用意されている。今回は、私のHewlett-Packard製dv6105ノートPC向けにhugeカーネルを選んだ。このマシンは2.0GHzのAMD Turionプロセッサと512MBのRAMを備えており、わずか30秒で起動する。インストール中に利用できる新しいオプションの1つとして、ブート用フロッピーディスクの代わりにUSBブートスティックが選択できるようになっていたが、私の環境では何の役にも立たなかった。USBブートスティックのフォーマットも書き込みもまったく行えなかったからだ。

 かなり前から私はSlackwareが気に入っているが、その理由はハードウェアの設定の簡単さにある。今回はLinux 2.6.21.5、udev、HALにより、ハードウェアの設定がさらに簡単になっているはずだが、それでも手動で設定が必要な部分はある。一般的なハードウェアの大部分はブートの段階でうまく機能したが、無線チップセット、ACPI、CPUスケーリングについては設定に手を加えなければならなかった。しかし、/etc/rc.d/rc.modulesファイルを手作業で編集すればこれらの設定を容易に有効化できることがわかり、この点に関する不満は解消された。ただ、リムーバブルメディアについては、cdromおよびplugdevグループのメンバになっていれば自動的にマウントできるはずだが、私の環境ではうまく機能しなかった。USBスティックではエラーが発生し、CD-ROMやDVDドライブでも空のウィンドウが表示されるだけだった。

 Slackwareには、私が使っているネットワークアダプタを機能させるのに必要なNdiswrapperが含まれていない。そのため、最新の安定版をSourceForge.netからダウンロードし、コンパイルを簡単に済ませて、インターネットに接続することになった。ここに、Slackwareが私の心とハードディスクに居座るようになったもう1つの理由がある。自らの記憶をたどる限り、これまでSlackwareでコンパイルできなかったソースパッケージは1つもないのだ。

 それどころか、実は、ほとんどコンパイルを行う必要さえない。Slackwareには、十分なソフトウェアが揃っているからだ。

 これまでのSlackwareと同様、KDEは、同プロジェクトの開発者によってパッケージ化されたままの形で用意されている。そこで、自分好みの背景やウィンドウ装飾を求めてkde-look.orgサイトを訪れ、3、4項目ほど調整を行ったところ、5分後には他のどんなディストリビューションにも負けない外観のSlackwareができあがった。

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Slackware 12のデスクトップ(クリックで拡大)

 Slackwareにはグラフィカルな設定ユーティリティがあまりなく、自動設定が行われない項目の一部はデスクトップ環境で設定できるようになっている。たとえば、私は適切なカーネルモジュールを読み込んだ後、KLaptopを使ってノートPCのバッテリ監視とCPUのパフォーマンスプロファイルの設定を行った。これらの設定は、サスペンドとハイバネーションのオプションこそ利用できなかったものの、それ以外の点では問題なく機能した。また、プリンタ設定用には、CUPSのブラウザインタフェースが用意されている。ただし、WPA(Wi-Fi Protected Access)を使った無線接続の設定や、画面の解像度調整などの作業では、標準の設定ファイルを使うか、コマンドラインを使わなければならなかった。

 KDEのKpackageを使えばパッケージ管理が容易になるのだが、Slackwareでは、各種パッケージの追加、削除、アップグレードを行うためのメニュー形式のコンソールツールpkgtoolが基本的なソフトウェア管理ツールになっている。残念ながら、pkgtoolでは、相変わらずリモートサイトからパッケージをダウンロードできない。かつてはslapt-getやswaretをインストールしてその機能を利用できたのだが、これらのプロジェクトはずっとアップデートされていないようだ。pkgtoolを使ってソフトウェアをインストールするには、ローカルマシンにSlackware用のパッケージをダウンロードし、そのダウンロード先のフォルダを開く必要がある。Slackwareのリポジトリ以外にも、Linuxpackagesのようなサードパーティによるサイトや多くの個別プロジェクトがSlackware用のパッケージを提供している。また、各種ソースディレクトリから独自のSlackwareパッケージを作るためにpkgtoolを使用し、管理を容易にすることもできる。

 今回のリリースには、slackpkgツールを使ってSlackwareをバージョン11.0から12.0にアップグレードする機能も用意されている。この機能の使い方はCHANGES_AND_HINTS.TXTファイルに記されているが、どうやら時間のかかる複雑なもののようだ。私には、必要なファイルをすべてバックアップしたうえで最初からインストールし直したほうが簡単で早く済むように思える。もちろん、この機能を使ってみたいという人は自由に利用することができる。

 KDE以外のデスクトップ環境を選びたいという人のために、Slackwareには他のデスクトップも用意されている。たとえば、Xfce 4.4.1は、KDEと同じように元々の開発者が意図したとおりの形で提供されている。Xfceには、背景、アイコン、テーマ、ウィンドウ動作などに対するグラフィカルな設定項目が存在するため、そのカスタマイズはきわめて容易に行える。また、Fluxboxを選ぶことも可能で、これはライトウェイトなデスクトップ環境を必要とする誰もにとって申し分のない選択肢だ。その他にも、WindowMaker、Blackbox、FWMVが利用できる。以前のバージョンのSlackwareではサードパーティ製GNOMEパッケージも利用できたが、今回の12.0ではまだサポートされていない。

 この最新バージョンにおけるあらゆる改善によって、Slackwareはこれまでで最高の仕上がりになっている。ハードウェアサポートや自動設定は、他のほとんどのディストリビューションと比べても遜色はない。また、各ソフトウェアで最新バージョンが利用できるようになっただけでなく、私が使ってきたなかで最も安定したシステムとしての座も今までどおりに維持している。ただ、今回のSlackwareには、パッケージ管理機能の制限、複雑なアップグレード手順、リムーバブルメディアのサポートの不具合、グラフィカルな設定ツールの欠如といった問題点もある。

 それでもやはり、どこか懐かしさを感じさせ、ディストリビューションのなかで最も歴史があり、なおもシンプルさを追求しているという点で、これまでのSlackwareの伝統はこのSlackware 12.0にも受け継がれているといえよう。

Linux.com 原文