Linuxレビュー:FaunOSは私のお気に入り

  FaunOS は完全なKDEデスクトップ・システムと豊富なアプリケーションを含むディストリビューションだ。ライブDVDも可能だが、想定されているのはライブUSBフラッシュドライブ。基礎にしているのはArch Linuxで、Archのパッケージ管理システムが付いている。このFaunOSは、使えば使うほど感心させられるディストリビューションである。

 USBメモリーは、CDやDVDディスクよりも利点が多い。可動部品を持つ専用のドライブを必要とせず、傷が付きやすい記録面が露出しているということがない。動作が速く、しかも小型だ。FaunOSは、通常のUSBメモリー用のイメージを無償でダウンロード提供している。大きさは934MBなので1GBのUSBメモリーに収まるが、カスタマイズした設定情報を保存したければ、これより大きな容量のものを使った方がよい。

 USBメモリーのほかに、500MHz以上のx86系マシンが必要だ。RAMは512MB以上。USBデバイスからは起動できないマシンの場合は、専用のブートストラップCDを作り、これを使って起動することもできる。

 FaunOSをUSBメディアにインストールするのは簡単だ。イメージをダウンロードし、コマンド「dd if=faunos-fortytwo-0.3.2-usb.img of=/dev/sdX 」(Xには実際のデバイスを指定)を実行する。ddは、私のように古くからLinuxを使っている者には懐かしいコマンドだ。Linuxが出始めた頃、このddコマンドを使ってブート・イメージをフロッピーにインストールしたものである。この方法は一般の利用者にも簡単に使え、開発者も安心して利用者に勧められる。

 FaunOSの大きな特徴の一つは、シャットダウン時にあらゆる変更を保存できること。シャットダウン時に保存すれば、そのセッションでインストールしたパッケージも、変更したシステム設定も、作成したファイルも、失われることはない。

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FaunOSのデスクトップ

 試行では、初回は確かに保存した状態が完全に復元されたのだが、2回目はそのセッションでの変更が失われてしまった。システム・パーティションの空き容量が2度目のセッションに関するファイルを保存するのに十分ではなかったのだ。私の失敗は、変更情報はそのセッションで使っていたドライブに保存されると思っていたこと。実際には、イメージが置かれているシステム・パーティションに保存される。

 対策としては、イメージをインストールした直後、FaunOSを起動する前にパーティションの大きさを変更すればよい。私はfdsikを使ったが、GPartedやQtPartedなど、信頼できるパーティション・マネージャーであれば何でもよい。これで、カスタマイズした状態が失われることなく、復元できるようになった。

 試用に使ったマシンは、HP Pavilionノートパソコンと自作のAMD 64デスクトップ・パソコンの2台。どちらも、問題なくハードウェアの自動構成を完了した。ノートパソコンでは、イーサネット・アダプターを使うのにNdiswrapperが必要であり、省電力オプションの完全活用にはモジュールを数点追加ロードしなければならなかったが、サウンド、グラフィックス、キーボード、タッチパッドは、起動後すぐに動作した。デスクトップ・パソコンでは、インターネット接続、グラフィックス、サウンド、スキャナーはそのままで動作し、プリンターの構成もクリック2回で完了した。

 FaunOSは、カスタマイズするまでもなく、十分な機能を備えた素晴らしいシステムだ。Linux 2.6.21、Xorg 7.2.0、GCC 4.2.1を中核に、KDE 3.5.7、OpenOffice.org 2.2.1、GIMP 2.2.17、Firefox 2.0.0.6のほか、Tuxracer、Inkscape、PidginFrostwire、Google Earth、MPlayer、Amarok、Juk、Codeine、Audacityなど、便利なソフトウェアが揃っている。システム用のツールやユーティリティーも有用なものが豊富にある。ブラウザーには便利なプラグインがすべて導入済みで、デスクトップのプレーヤーだけでなくブラウザーでもマルチメディア機能を満喫できた。問題は次の2点だけだった。FirefoxでFlashコードを含むサイトを見ていたときに一度クラッシュしたこと。これはFlashコードに問題があったのだろう。もう一つは、Berylの動作で、ノートパソコンでは少々バグ含み、デスクトップ・パソコンではまったく動作しなかった。

 FaunOSには、2種類のインストーラーが付いている。その一つ、FaunOSインストーラーはオペレーティング・システムをUSBドライブに、あるいは「frugal」インストールをハード・ドライブにインストールする。frugalインストールはシステムをそのままコピーする。したがって、セッションを保存しない限り、新品のライブUSBから毎回起動するのと同じだ。もう一つのインストーラーは、Arch Linux Installerで、これはSlackwareにあるような従来型のハード・ドライブ・インストーラーだ。完全なFaunOSシステムと使用されているアプリケーションを、そのときのライブ環境で使っていたユーザー名(大概はデフォルトのguest)による個別のカスタマイズとともにインストールする。

 FaunOSのもう一つの特徴は、Arch Linuxパッケージ・マネージャーpacmanだ。構成ファイルのArchリポジトリーは設定済みのため、すぐにsyncすることができる。Debianのapt-getに似ており、同様に信頼性が高く使い方も簡単だ。FaunOSは比較的完備された状態で配布されているが、私はパッケージを数点インストールしてみた。いずれも問題はなかった。グラフィカル・インタフェースの方がよければ、Synaptic風フロントエンドjacmanをインストールすることもできる。コマンドは、「pacman -S jacman」だ。

ヒント
 Xorg構成を恒久的に変更する場合は、/etc/rc.localファイル中の/usr/sbin/mkxorgconfをコメント化し、シャットダウン時にセッションを保存する。

 FaunOSはパフォーマンスでも優れている。起動画面からデスクトップが表示されるまで30秒ほど。デスクトップ画面からアプリケーションを開くのに1~2秒。FirefoxやOpenOffice.orgでさえ数秒だ。メニューは瞬間的に開き、カーソルは遅れることなく追随する。ウィンドウの動きも自然で滑らかだ。私が使った限りでは、システムもアプリケーションも非常に安定して動作する。FaunOSは楽しく使えるシステムである。

 FaunOSのコミュニティーにあるwikiは蓄積されているデータが少なめだ。しかし、フォーラムで情報を探したり質問したりすることはできる。利用者の質問には、開発者自身が迅速かつ優しく回答している。

 最後に、プロジェクトへの注文を2つ挙げておこう。一つは、パーティションを作る際その大きさを指定できるようにすること。もう一つは、保存された変更をロードするかどうかを選べるようにすること(複数のプロファイルを保存できればなおよい)。パーティションの大きさを指定できるようになれば、セッションの保存に関連して初心者が混乱に陥り途方に暮れるということがなくなるだろう。また、保存したプロファイルを使うかどうかを選ぶことができれば、xorg.confのカスタマイズが異なる複数のマシンで1つのUSBスティックを共用することができる。

 このように、FaunOSは優れたディストリビューションだ。わずか2回目のリリースということを考えれば注目に値する。壁紙も、現代的なアイコンも、相応しいフォントも、透明性も、従来にはないパネル配置も素晴らしく、パフォーマンスもハードウェア・サポートも非常によい。用意されているソフトウェアも豊富で一通りのものが揃っている。しかし、何を差し置いても重要な点は、FaunOSは確実に動作するということだ。

Linux.com 原文