CinelerraをUbuntu Studioに比較的簡単にインストールする方法

 Cinelerraは、Linuxで利用可能なビデオ編集ツールの中でも実用レベルに達している数少ない存在の1つだが、これをUbuntu Studioにインストールする場合は様々なトラブルとの遭遇を覚悟しなければならない。そして私が行った何度かの試行錯誤の結果、それほど手間をかけずに同アプリケーションをインストールする方法を確立できたので、今回はその過程を報告する次第である。

 Ubuntu Studioは比較的最近登場したばかりのディストリビューションで、その位置づけはUbuntuをベース(私が使用中のバージョンは7.04 Feisty Fawn)にマルチメディア機能に特化させたフレーバというものであるにもかかわらず、CinelerraをUbuntu Studioにインストールしようとすると悪夢が待ちかまえている。この問題については、以前に本サイトにてNathan Willis氏がレポートしたUbuntu Studioについてのレビュー記事の中でも取り上げられているが、同様の現象が生じていることはインターネット上の関連フォーラムでも確認されている。

 現行のCinelerraには2つのバージョンが存在し、その1つはHeroine Virtualと呼ばれる謎の人物/団体からリリースされたオリジナルのコードベースであり、もう1つはオリジナルコードに改訂と改善を加えたコミュニティバージョン(CV: Community Version)である。CinelerraはGPLライセンスの適用下でリリースされてはいるのだが、オリジナルのコードベースに関する合法性についての論争が生じているため、大部分のLinuxディストリビューションにおいてそのオフィシャルリポジトリには登録されていない。そのためDebianおよびUbuntuにインストールするのであれば、サードパーティ系リポジトリからコミュニティバージョンを入手するのが現状では最も堅実な方法であり、実際に多くのユーザがそちらを選んでいるようだ。

インストール成功までのイバラの道

 私が最初にCinelerraのインストールを試みた際の手順は、コミュニティバージョンのWebサイトに一覧されていたリポジトリを/etc/apt/sources.listファイルに追加してから「sudo apt-get install cinelerra」を実行するというものであった。Christian Marillat氏の運営するdebian-multimediaのリポジトリを使うこともできる。

 ところがインストールの終了後にCinelerra起動用のアイコンをクリックしたところ、何も起きなかったのである。次にコマンドラインからの起動を試みたが、その結果も「cinelerra cinelerra: symbol lookup error: /usr/lib/libquicktimehv-1.6.0.so.1: undefined symbol: faacDecDecode」というエラーが出て終わることになった。この件を解決する情報をインターネット上で検索してみたが、めぼしい成果を得ることはできなかった。

 次に試したのは、アプリケーションをソースからコンパイルする方法だが、その際にはSubversionのインストールが必要となった。その後も多数の依存性ファイルをインストールすることになったが、それでも最終的に膨大な数の不足ファイルの存在が./configureから確認できたため、この方法も断念するしかなかった。

 事ここに至って私が検討し始めたのは、Cinelerraが完全にプリインストールされた環境をそのまま入手できるdyne:bolicをインストールすることによって一気にすべての問題にけりを付ける、という選択肢である。とは言うものの私にも意地があるし、Ubuntu Studioのルックアンドフィールも気に入りだしてきたところでもあったため、もう少し悪あがきをして見ることにした。そうしてついに突き止めた原因は、libfaadライブラリをダウングレードする必要があるという事である。とりあえずSynapticで「Package」→「Force Version(Ctrl-E)」を試してみたが、これは失敗に終わった。その結果必要となったのが、手動操作によるパッケージのダウンロードおよび、コマンドラインでの「sudo dpkg -i filename 」の実行による手動インストールである。これによりCinelerraはようやく正常に起動できるようになった。

よりお手軽なインストール手順

 そして最近、Ubuntu Studioの再インストールを行う機会に遭遇したのだが、その際にもっと簡単にCinelerraをインストールする方法が存在していることに気づいたのである。この作業にも多少の試行錯誤を伴ったが、結果としてよりお手軽なソリューションを確立することができた。

 最初に行ったのはTrevino氏の運営するUbuntuリポジトリからFeisty Fawnをインストールすることだが、それというのも、このディストリビューションには各種の最新版マルチメディア系ソフトウェアのリストが収録されており、その中にはCinelerraも含まれているからだ。このインストール手順には2つの選択肢があり、その1つはSynapticで“trevino”を探して該当するパッケージをインストールするというもので(その際に/etc/apt/にあるsources.listが上書きされるが、オリジナルのファイルは事前にバックアップされる)、もう1つはsources.listファイルをTrevino氏のWebサイトから直接ダウンロードして、手元にあるファイルと自分で入れ換えるというものである。

 私が選んだのはSynaptic経由でCinelerra(バージョン2.1.0-2svn2007424ubuntu3)をインストールする方式であったが、その際にSynapticからは、Cinelerraがlibquicktimehvに依存しているという旨の警告が出された。よって先にそちらをインストールすることにしたところ、Synapticからは「Depends: libfaad0 (>=2.5-2.1cafuego0) but it is not installable」という新たなエラーメッセージが出されてしまった。このlibfaad0をSynapticで探しても見つからなかったのでfaadで検索したところ、libfaad0およびlibfaad2-0がヒットした。そのうちlibfaad0(バージョン2.5-2.1)はインストールできたが、libfaad2-0についてはlibfaad0 2.5-2.1cafuego0が必要という理由でインストールできなかった。

 それでも私はあきらめなかった。そして別バージョンのlibfaad2-0(この場合は2.0.0+cvs20040908+mp4+bmp-0ubuntu3)を試したところ、先にインストールできていた方のlibfaad0が削除されてしまったのである。この現象には一抹の不安を覚えさせられたが、その他すべての依存性ファイルおよびCinelerra本体のインストールは問題なく進めることができた。

 この作業の終了後にCinelerraを起動させたところ、スプラッシュ画面が表示されたのだが、この喜びもCinelerraからメモリ関連の問題がレポートされるまでの束の間の幻想にすぎなかった。この件に関しては「sudo echo "0x7fffffff" > /proc/sys/kernel/shmmax」を実行しろという指示があったので、それを試したところ今度はpermission-deniedエラーが出されてしまったのである。この問題についても2つの回避法が存在している。1つ目は、「sudo gedit /etc/sysctl.conf」を実行してこのファイルの末尾に「kernel.shmmax = 0x7fffffff」を追加しておくという方法である。その後はファイルを保存してからコマンドラインから「sysctl -p」を実行すればいい。2つ目の方法は、「sudo su」により最初からルートとしてログインしておき、「echo "0x7fffffff" > /proc/sys/kernel/shmmax」を実行するという手順である。これによりCinelerraの起動時に警告メッセージは出されなくなるはずだ。

 ここまでのステップをまとめると、Synapticを介したTrevino氏のUbuntuリポジトリからFeisty Fawnのインストール、libfaad2-0のバージョン2.0.0+cvs20040908+mp4+bmp-0ubuntu3の強制使用、残りすべての依存性ファイルとCinelerra本体のインストール、そして最後にメモリ問題の解決を行うという手順になる。実際に私はこの方法でセカンドマシンにUbuntu Studioをインストールしてみたが、その際に問題が生じることはなかった。

新米ユーザへのアドバイス

 Cinelerraの起動に成功したとしても、Cinelerraからユーザが受ける最初の印象は最悪なものかもしれない。私自身、Cinelerraのインタフェースデザインは過去に見た中でも最も不細工な部類に属すると思っているのだが、幸いなことに同アプリケーションはテーマ変更に対応している。具体的な手順としてはメインウィンドウに移動して「Settings」→「Preferences」(あるいはShift-Pキー)を選択してから「Interface」→「Theme」を選べばいい。ただしこうしたテーマの選択肢は現状ではそれほど多くはない。これをもう少し増やしてもらうのはCinelerraにとっても悪い話ではないと思うのだが。

 見てくれの問題はさておくとしても、Linux用のビデオ編集アプリケーションとしてCinelerraが最高と評価されている理由については、新規ユーザでも直ぐに気づくことになるはずだ。またこのアプリケーションの場合、関連ドキュメントも最高レベルに整備されている。インターネット上の各種ガイドやwikiの形で散在していたドキュメント類の大半を1箇所に集めてくれたのはCVバージョンのメンテナ陣の功績だが、彼らは独自のマニュアルへの再編集も行ってくれているのである。

 Cinelerraの一部ユーザからは、突発的なクラッシュの発生が報告されている。私が今使っている設定でもクラッシュは起こるが、その頻度はそれほど高くはない。対策としてはプロジェクトをこまめに保存するようにして、Cinelerraがクラッシュした場合は、再起動後に「File」→「Load backup」を選択して読み込み直すしかないだろう。

 Ubuntu Studio 7.10(Gutsy Gibbon)については、そのファイナルリリースが間近に迫っている。私としてもアップグレードしたい気は山々なのだが、可能であればCinelerraがプリインストールされているか、同ディストリビューションの初心者ユーザでも簡単にインストールできるようになっていればという要望が存在している。同じくUbuntu Studioの開発陣に対しては、将来的なリリースにおいてビデオ編集ツールにもっと力を入れて欲しいと願う次第である。

Rui Lopesはポルトガル人Webデザイナであり、映画製作も手がけると同時に、様々な分野の最新テクノロジを常に追いかけ続けている。

Linux.com 原文