コンパクトながらもアプリケーションを充実させたPuppy Linux

 Puppy Linuxは、数年前から旧式ハードウェアに生命を吹き込んできた。だが、ほかの単なるミニマル(最小構成)ディストリビューションとは異なり、Puppyの特徴はリソースの節約によってアプリケーション数の削減を免れている点にある。最新のメジャーリリースPuppy 3.00でもこの方針は維持されており、100MB未満というサイズながら、Slackware 12との間のバイナリ互換性を備え、その他の機能強化も施されている。

 Puppyのメイン開発者Barry Kauler氏によると、Puppy 3.00の主要目標の1つは、各種Slackwareパッケージのインストールを可能にすることだったという。そのため、PuppyにはGlibc 2.5、GCC 4.1.2、GTK 2.10.13など、Slackware 12で必要となるすべてのライブラリが揃っている。その一方で、Slackwareからライブラリを借用してもPuppyがSlackwareのクローンになることはない、とKauler氏は明言する。Puppyを依然としてユニークなディストリビューションにしているのは、独自のカスタムブート機能、設定、シャットダウンの各種スクリプトであり、これらは3.00になって完全に書き直されている。

優れたハードウェア検出機能

 Damn Small Linux(DSL)のようなKnoppixベースのミニマル・ディストリビューションと比較した場合、Puppyにはスクラッチからの構築というアプローチゆえのハードウェアサポート不足という欠点があった。バージョン2.0を契機に、Puppyがこの問題にどのように取り組んできたかについては、Kauler氏が1年以上前のインタビューで語っている。

 Puppy 3.00のハードウェア検出機能はかなりのレベルに達している。無線カード(外付けのLinksys無線カード、内蔵のAtherosアダプタのどちらの検出、設定とも)、モニタ、グラフィックカード、USBマウス、キーボード、PS/2-USBコンバータなど、一般的なハードウェアの検出は何の問題なく行える。

 また、Puppyは私の所有するすべてのコンピュータ ― クロック周波数がそれぞれ1.3GHz、1.7GHzのCeleronノート2台と2.0GHzのCore 2 Duo E4400デュアルコア・デスクトップ ― で動作した。ただし、Core 2 Duo E6300デュアルコアとDG965RYマザーボードを組み合わせたマシンでは、CD-ROMドライブが検出できず、ブートできなかった。このマザーボードのMarvell PATA IDEコントローラには既知の問題が存在するが、Puppy 3.00に採用されているカーネル 2.6.21.7には、このMarvell製コントローラ用のドライバが含まれている。

 結局、USBペンドライブを使ってこのマシンでPuppyをブートしたところ、19インチ液晶モニタの1440 x 900ワイド画面の解像度が正しく表示できなかった。私がPuppy 3.00を試した一番古いマシン ― 先ほどの1.3GHzのCeleronノート、256MBのメモリ、有線のイーサネットカード、標準的な1024×768のIntelグラフィックカードを使用 ― ではすべてのハードウェアの設定と動作がうまく行われたが、Puppy 3.00には古いカーネル(2.6.18.1)を使用したレトロ版(3.00retro)も存在する。このバージョンは、比較的新しいカーネルが動作しない可能性のある旧式ハードウェアをサポートするために用意されたものだ。

アプリケーションの豊富さと使いやすさ

 最小構成とはいえ、このディストリビューションのアプリケーションの品揃えはなかなか立派である。ワードプロセッサAbiWord、PDFリーダ、PDFコンバータ、表計算ソフトGnumeric、メモ帳ソフトDidiWiki、用事や約束事を管理する予定表、IRCおよびIMクライアントPidgin、メディアプレーヤGxine、CDおよびDVDリッパー、BitTorrentクライアントTransmission、ダウンロードアクセラレータAxel、Mozilla Seamonkeyスイートのほか、トラフィックの監視、ファイアウォールの設置、Windows共有フォルダの設定、無線接続の設定といった各用途のネットワークツールが用意されている。

 これらの収録アプリケーションに加え、Puppyにはその他のハードウェアデバイスを設定するためのカスタムツールもいくつか存在する。また、独自のパッケージマネージャPETgetも含まれており、これは公式、非公式を問わずユーザから提供されたPuppy用パッケージのインストールに使用する。Puppy 3.00では、取得したSlackware 12用のパッケージをtgz2petユーティリティによって.pet形式に変換し、PETget経由でインストールすることも可能だ。

 さらに、Puppyユニバーサルインストーラが存在し、これはPuppyをIDE/SATAハードディスクまたはUSBハードディスクやフラッシュメモリにインストールするのに役立つ。また、ディストリビューションそのものをカスタマイズすることで、Puppyを固定記憶デバイスにインストールすることなく各種アプリケーションをインストールできるようになる。そのうえ、現時点のPuppyインスタンスのスナップショットによるカスタムISOの作成や、CD-RWへの焼き込みオプションの用意が可能な2つのリマスタリングツールが含まれている。

いくつかの問題点

 どんなディストリビューションでも同じだが、Puppyにも不可解または予想外の動作が見受けられる。私のシステムでは、使い出して随分経ってからPuppy 3.00デスクトップのユーザインタフェースが異常な挙動を見せるようになった。最も多いのが、ウィンドウやメニューを閉じたあとに灰色の領域が残るというものだ。また、それほど気にならないがファイルの関連付けが失われるという問題もある。

 もう1つ大きな欠点は、シャットダウン時のファイル保存がワンショットしか行われないことだ。Puppyの使用中にどこかのパーティションのあるフォルダにすべてを保存させようと考えていて、そのパーティションをマウントし忘れてシャットダウンしてしまうと、すべての作業が失われてしまうことになる。このあたりは、シャットダウン時のファイル保存ウィザードの実行前にパーティションがマウントされていない場合は、それらのマウントが行えるようにすべきだろう。

 それでもやはり、Puppy Linuxは古いコンピュータをよみがえらせることのできるすばらしいディストリビューションだ。100MBに満たないISOイメージとはいえ、Puppy 3.00にはインターネットの閲覧やチャットの実行、報告書やスプレッドシートの作成、DVDの鑑賞やリッピング、ネットワークデバイスの設定やファイアウォールによる監視といったあらゆるタスクに対応できるアプリケーションが揃っている。ほかに必要なものがあれば、Slackware 12のリポジトリから入手可能などんなアプリケーションでもインストールできる。こうした利点は、このディストリビューションの多少の欠点を補って余りあるものといえよう。

Linux.com 原文