UbuntuとWindowsベースのネットワークの統合はもっと簡単になるべきだ

 私は約6年前からフリーソフトウェアを使用し唱道してきた。学生だったときやその後フリーランスの記者をしていたときには、職場の環境を移行することなど単純なことだと思っていた――同種のプログラムの対応表を作成して、適切な時間をかけて、職場で働くスタッフ全員の環境を移行させれば良いだけだ。しかしこの数週間Windowsをベースとした職場にある自分のデスクトップPCでUbuntu Gutsyを使おうと思って試してみたところ、ほとんどのものは問題なく動いているとは言え、実際に移行しようとしてみると期待していたようなシームレスな統合とは程遠いということが分かった。

 現在私はロンドンにある環境団体で働いている。事務所はこの手の団体としてはごくごく普通の環境だ。Windows 2003サーバが2台あって、電子メール/カレンダー/アドレス管理のためのExchangeを実行している他、いくつかの共有フォルダ/プリンタ、事務所の外からのアクセスのためのPPTP VPN、IP OfficeというVoIP電話ソリューションに使用している。デスクトップでは、月並みながらWindows XP、Office 2002/3、Adobe Creative Suite(Acrobat Reader、Acrobat Professional、Photoshop、Illustrator、Dreamweaver)、Sage、その他いくつかのプログラムを利用している。

 私は仕事の一つとしてIT関連の契約の管理も担当していて、現在、それなりに適正な中期的なICT(情報通信技術)計画を作成する作業に取り組んでいる。そこで時間の余裕があるときに(そういうときはあまりないが)、フリーソフトウェアへの移行という案を検討することにした。というのも最近、事務所のICTシステムのTCO分析を行なったところ、ライセンス料金が全ICT経費の18%を占めていることが判明したためだ。なお経費の中で最大の割合を占めていたのは、ハードウェアとサポートの費用だった。そして仮にフリーソフトウェアに移行することになるとすれば、最初の段階ではサポート費用が増えて新たにトレーニング費用も必要となるため、移行の現実をこの目で確かめたいと考え、Windowsベースの職場環境へのUbuntuの統合を試してみることにした。

 Ubuntu Gutsyのインストールは簡単だったが、Windows 2003ログインサーバと連携させるのは非常に難しかった。Windows XPでは、単にシステムプロパティでサーバが使用するドメインを入力して、クライアントを認証しておけば、自分のネットワーク用のユーザ名とパスワードでログインすることができるようになる――簡単だ。Ubuntuでは、決して簡単とは言えない手順に従う必要があって、私の場合もきちんと動くようにするために苦労した。Novell Linux Desktopではインストーラが用意されていて、それを使用して文書化された手順に従えば良いだけらしいのだが、今はNovellのディストリビューションを購入することができる余裕のある立場にはいないので、この作業を簡単に行なうことができるようにするためのツールがUbuntuでは見当たらなかったことが残念だった。

 設定が終わった後はGNOMEを使い始めた。私は以前KDEプロジェクトにかなり関わっていて、今でも個人的にはKDEを好んで使っているのだが、統合という観点からはGNOMEデスクトップの方がいくつかの点でより優れていると感じた。特に画面のいちばん上にあるPlaces(場所)メニューが気に入った。サーバ上の共有フォルダとリモートにあるウェブサーバをPlaces(場所)に追加すると、画面のいちばん上にあるメニューの中だけでなく、Nautilusなどのアプリケーションの中にも表示されるようになった。主観的な印象かもしれないが、いくつかの点においてGNOMEはKDEよりもWindowsよりも実用的で設計が優れているように感じた。ちなみに私の肩越しに覗き込んでいた同僚も、GNOMEが全体的に見掛けが非常に良くて使いやすそうだと言っていた。

 共有フォルダはかなりシームレスに利用することができた。閲覧中の共有フォルダを簡単にPlaces(場所)に追加することもできた。ただし残念ながらファイルのセキュリティ設定を確認したり変更したりすることはできなかった。そのためパーミッションを変更するためだけに、GNOMEのrdesktopクライアントを使用してサーバにリモートから接続しなければならなかった。

 私がもっともよく行なう作業の一つに、Microsoft Office文書の編集がある。ほとんどの作業についてOpenOffice.orgは申し分なく、十分だ。しかし例えば文書やスプレッドシートにテキストを貼り付ける際に整形処理をせずに文書をそのまま張り付ける機能など、一部の機能がないのは残念だった。図について言えば、現在のところ円グラフの各部に数値やパーセントを表示することができないので非常に困っている。また別のユーザの編集中にファイルを読み取りのみ可にするというような、文書をロックするための機能も見つけることができなかった。さらにレイアウトと整形処理が意図した通りではないため、他の人が作成した文書を使用する前にかなり時間をかけて調整する必要があった。一方良かった点としては、Writerでフォームを作成した際にPDFのエクスポート機能が非常に優れていて、入力可能なフォームが含まれている文書のPDF文書も生成できるのが嬉しかった。そうでなければこの単純な機能のためだけにAdobe Acrobat Professionalの非営利団体向け割引ライセンスを購入しなければならないだろう。

 もう一つ、働いている人の時間をまるでブラックホールかのように吸い取っているアプリケーションとして電子メールがある。Evolutionは、Outlook Web Access機能(要するにウェブメール)を一種のプロキシのような形で使用することでMicrosoft Exchangeと連携することができる。これをスムーズに動かすためには設定を何回か調整してやり直す必要があったものの、最終的には問題なく動くようになった。カレンダーも表示することができるようになって、他のユーザのカレンダーを確認することもできるようになったが、内容の表示に時間がかかり、たった一日分の予定を表示させるのに10秒もかかることがあった。また共有フォルダ内に共有カレンダーがいくつかあるのだが、あらかじめWindowsでOutlookからお気に入りとして登録しておいたものしか見ることができなかった。うっかりとその中のカレンダーの一つを自分のプロフィールから削除してしまったので、元通りにするためにWindowsマシンにログインしなければならなくなった。

 Evolutionのアドレス帳はうまく動いたが、いくつか奇妙な問題点もあった。どういうわけか名前と電子メールアドレスを混乱していて、時折Jonathanという名前の同僚にメールを送る際に、自動補完機能がもう一人の別のJonathanの電子メールアドレスと同僚の名前を混同しているようだった。またアドレス帳を閲覧する際にExchangeのグローバルアドレス一覧が最初は空になっていて、名前を入力し始めるまで登録内容が表示されなかった。なお名前を入力し始めると、グローバルアドレス一覧内のマッチする項目が自動補完された。

 またEvolutionにはいらいらする点がもう一つあって、ファイルへのリンクがWindows形式で書かれている場合に機能しなかった(バグ報告)。事務所ではいつもファイルを添付するのではなくリンクを送り合っているのだが、クリックするだけでフォルダやファイルを開くのではなく、リンクを目で読んでNautilusでフォルダを手動で移動しなければならなくなってしまった。さらに悪いことには、ファイルへのリンクを含めた電子メールを送りたいときには、NautilusのURLをコピー後WindowsのURLのようになるように手動で編集しなければならなかった。これはMicrosoft Officeでは単にWebツールバーを表示させてアドレスをコピーして、電子メールの本文中に直接貼り付けるだけで良かった。

 印刷も、おそらく経験を積んだ人にとってはすでに簡単なのかもしれないが、もっと簡単になるべきだと思う。事務所にはOKI ES1624とInfotec ISC2525がある。どちらも標準的なレーザープリンタで、Windowsサーバ経由で共有している。これら2台のネットワークプリンタをGNOME上で追加しようとしたところ、Windowsサーバ用の共有プリンタ名をそれぞれについて手動で入力しなければならず、そのためサーバ上でプロパティを確認しなければならなかった。またインストールの際にドライバの指定をする必要があったのだが、リストの中にどちらのプリンタの名前も見つけることができなかった。汎用PostScriptドライバで何度か試みて失敗したが、その後、設定ページをプリンタから印刷することができて、それにプリンタが対応している言語のリストも載っているというヒントをウェブ上のフォーラムで見つけることができた。結果的に、汎用PCL 5cドライバを利用してどちらのプリンタも動かすことができたが、このドライバで印刷はできるものの、Windowsドライバでは提供されていた多くのオプションを利用することができなかった。一方、Windows XPでならドライバを見つけるのも追加するのも使用するのもウィザードを使って簡単にできる。

 最後に、まったく利用できなかったものもあった。事務所では、事務所のVoIP電話システムをデスクトップでフル活用するためのPhoneManagerというデスクトップユーティリティを使用しているのだが、Wineを使ってもまったく利用することができなかった。また自宅からVPNを利用できるようにするためにできる限りのことを試してみたものの、問題解決のための手がかりをまったく残さないまま接続前に停止してしまうだけだった。

 全体的に言えば、ほとんどのものを動かすことができて、日常的な作業には間違いなく十分だと思う。しかし同僚のためにUbuntuを使用できるように新しいPCを設定しようとすると、おそらく午後の時間のほとんどを費やすことになるだろう。新しいコンピュータにプレインストールされているWindows XPの場合であれば、30分ほどで完了する作業だ。

 とは言えあまり悲観的になっていると思われたくはない。Ubuntuは多くの点――デスクトップの雰囲気、組み込みの機能、APTから利用可能なソフトウェア、私の職場のWindowsベースの環境における特定の作業のしやすさなど――でWindowsよりも優れている。またフリーソフトウェアということ自体が私にとっては非常に重要であるし、私の勤める組織にとってもかなりのプラスになる。

 しかし環境の統合は期待していたほどスムーズに簡単には行かなかった。どのステップにおいても、設定を調整したり欠けている機能に対処したりするために、Windows XPを利用した場合よりも長い時間が必要だった。当然ながら今回私が遭遇した問題の中には解決策が用意されているものもあったと思うが、デフォルトで用意されていたわけではなく、簡単には見つからなかった。このような状況なので、私の事務所の場合Ubuntuに移行するのは難しいと思う。というのも実際に移行を行なう唯一の方法は、まずサーバを移行して互換性の問題を解決して、その後に十分な再教育をしながらデスクトップを全面的に移行するというやり方なのだが、そのような時間も予算もかかる大規模な移行が不可能というわけではないが、非営利組織のIT予算(長期的な投資のための資金の獲得は難しく、ソフトウェアのライセンスは比較的割り引いてもらいやすい)という制約や事情があるため、経営陣に長期的な考え方やかなりの理解がないと、それほどまでに大規模な移行の妥当性は認めてもらうことがなかなか難しいからだ。

Linux.com 原文