Paldoレビュー:ソースベースとバイナリベースのディストロの合わせ技

 Paldo Linuxは、ソースベースのディストリビューションとバイナリ・ディストリビューションの合わせ技だ。インストールはバイナリ・システムとして行われ、短時間で簡単にデスクトップ環境を構築できる。稼動後は、Gentooのようにソースからパッケージをビルドすることもできるし、Debian、openSUSE、Mandrivaのようにバイナリ・パッケージをインストールすることもできる。Paldoの特徴としては、手軽なハード・ドライブ・インストーラ、デスクトップ環境GNOME、パッケージ管理システムUpkgなどがあげられる。安定版のバージョン1.12が先月リリースされた。ここしばらくでは屈指の将来有望なディストロだというのが私の感想だ。

 Paldo Linuxは、インストール可能なライブCDの形でリリースされており、x86アーキテクチャ用とx86_64アーキテクチャ用のバージョンがある。ブート画面では、各国の英語のほか、ポルトガル語、オランダ語、ドイツ語など、いくつかの言語を選択可能だ。ブートは短時間で完了する。私の環境では、デスクトップに至るまでに、Nvidia用プロプライエタリ・ドライバのスプラッシュ画面が表示された。デスクトップはすっきりまとまっており、青とグレーのグラデーションが目に映える。今回の試用は、Hewlett-Packard Pavilion dv6105usノートパソコンで行った。解像度の設定や、サウンド・カードなどの基本的なハードウェアの設定は、自動認識で正しく行われた。また、このノートパソコンに搭載されている無線イーサネット・チップ用のドライバを、Ndiswrapperでインポートして読み込んだところ、GNOMEネットワーク・アプレットでWi-Fi Protected Accessネットワークに接続できた。

 見栄えのいいデスクトップを備え、私のハードウェアもきちんとサポートされているので、このシステムを完全にインストールしてみることにした。ハード・ドライブ・インストーラは4つの手順で進めていく。最初は、言語、キーボード・レイアウト、タイムゾーンの選択で、次は、パーティション、ファイル・システム、ブートローダの設定だ。その後に、ホスト名とrootパスワードの設定があり、最後にユーザ・アカウントの設定を行う。インストールはほぼ順調に進んだ。ただ1つ、小さな問題があったのがブートローダの設定である。ブートローダをインストールするチェックボックスはオフにしたのだが、PaldoとWindowsのみを含む新しいテキストGRUBがインストールされてしまった。

paldo_thumb.jpg
Paldo

 Paldoのベースは、Linuxカーネル2.6.23.9、Xorg 7.3、GNOME 2.20.1、GCC 4.2.2である。加えて、十分なアプリケーションが標準装備されており、最初のブート時から使用できるようになっている。アクセサリは、GPG Keyring Assistant、Multisync-qad(予定表やアドレス帳などの個人情報同期用)、Revelation Password Managerが入っている。グラフィックス・アプリケーションは、F-Spot Photo Manager、gThumb Image Viewer、GIMPが入っている。インターネット・アプリケーションは、Deluge BitTorrent Client、Pidgin(インスタント・メッセンジャー)、Firefox(Webブラウザ)、Evolution(個人情報管理)、Liferea(フィード・リーダー)が入っている。マルチメディア・アプリケーションは、Totem Movie PlayerとRhythmbox Music Playerが入っている。さらに、ディスク作成ソフトのBraseroと、オフィス・ソフトのOpenOffice.org 2.3も入っている。また、Glade Interface Designer、MonoDevelop、Anjuta IDEなど、プログラミング・アプリケーションもいくつか入っている。

 Paldoの設定やハードウェアの設定をGUIで行うための、気の利いたグラフィカル・コントロール・ツールの類は用意されていない。というより、Paldo専用のグラフィカル・ツールは特にない。GNOMEデスクトップの通常のカスタマイズ・モジュールはあるが、一部の処理についてはコマンド・ラインに頼るしかない。私の場合は、バッテリを長持ちさせ、熱の発生を抑えるために、CPUスケーリングを活用したかったのだが、使用しているアーキテクチャ用のドライバを手動で読み込まざるを得なかった。幸い、ログアウト画面のSuspendボタンとHibernateボタンはきちんと動作した。

 グラフィカルな設定ツールがないのに加え、グラフィカルなパッケージ・マネージャも用意されていない。コマンドラインのパッケージ・マネージャはある。GentooのPortageとMandrivaのURPMIの中間のような、Upkgという名のマネージャだ。ソースまたはバイナリ・パッケージをダウンロードして、そのパッケージと依存関係にあるパッケージをインストールできる。システムのアップグレードさえUpkgで行うことが可能だ。処理内容に応じた複数のスクリプトが用意されており、スクリプト名の先頭はすべてupkgとなっている。中でも、特によく使用するスクリプトに、upkg-installがある。名前のとおり、目的のパッケージのバイナリをインストールするスクリプトだ。「upkg-install package name 」という形で使用する。次に示すのは、今回の試用時にパッケージをインストールしてみたときの例だ。

# upkg-install compiz-fusion
Generating script...
Writing script...
Executing script...
The following extra packages will be installed:
compiz compiz-bcop compiz-fusion-plugins-main compiz-fusion-plugins-extra emerald emerald-themes

Do you want to continue? [Y/n] Y
Installing compiz-0.6.2-1 (stable)...
Installing compiz-bcop-0.6.0-1 (stable)...
Installing compiz-fusion-plugins-main-0.6.0-1 (stable)...
Installing compiz-fusion-plugins-extra-0.6.0-1 (stable)...
Installing emerald-0.6.0-1 (stable)...
Installing emerald-themes-0.6.0-2 (stable)...
Selecting compiz-fusion-20070827-1 (stable)...

 このほか、ソース・パッケージのビルドとインストールを行うupkg-build、パッケージのアンインストールを行うupkg-remove、システム・ソフトウェアの更新を行うupkg-upgradeといったスクリプトがある。リポジトリ設定ファイルは/etc/upkg.confにある。XML形式のファイルで簡単に修正でき、ローカルやリモートのリポジトリを必要に応じて追加できる。Paldoの公式リポジトリは標準で設定されている。

 Paldoやそのパッケージ管理システムは楽しくテストすることができた。Upkgはきちんと動作し、メニューへのエントリの追加も行われるが、インストールには長い時間を要する。バイナリ・パッケージの場合であってもだ。また、ソフトウェア・リポジトリには、期待したほどのラインナップが揃っていない。だが、Paldoは今年登場したばかりのまだ若いプロジェクトなので、時間と共に充実していくことであろう。現時点で用意されているパッケージには、Abiword、Amarok、Blender、KDE、MPlayerなどがある。

 ドキュメントは不足気味であるが、wikiに多少の情報が掲載されている。加えて、ユーザ・フォーラムの数も増えてきている。ユーザ・フォーラムにざっと目を通したところ、Upkgのグラフィカル・フロントエンドを開発するプロジェクトがあることにも気付いた。

 経験豊富なユーザやGentooを使用しているユーザは、Paldoにもすぐになじむことができると思う。ただ、Gentooで使用できるような豊富なソフトウェアのラインナップが揃っていないことを不満に思うかもしれない。また、初心者ユーザや、GUIをメインとするシステムを使っているユーザは、少し違うものにトライしてみたいときや新しいことを身に付けてみたいときに、Paldoを楽しく使用できよう。

 私は、Paldoの使用感には大いに満足できた。この先何週間か使ってみて、このシステムのことをもっと掘り下げてみようと思っている。

強み

  • 平均以上のパフォーマンス
  • 優れたハードウェア・サポート
  • 見栄えのよい外観
  • 充実した標準装備アプリケーション
  • 3Dグラフィック・ドライバがデフォルトで有効
  • さまざまなマルチメディア・フォーマットを標準サポート
  • 楽しさ満載の使い心地

弱み

  • グラフィカルな設定ツールがない
  • パッケージ管理システムを使いこなすまでにやや時間がかかる
  • リポジトリのソフトウェアのラインナップがまだ充実していない
  • ドキュメントが不足気味である

Linux.com 原文