見事なまでの完成度のSimplyMEPIS 7.0

 かねてより待望されていたSimplyMEPIS 7.0が昨年のクリスマス直前にリリースされたが、その出来映えは待たされるだけの価値はあったと断言できるレベルに仕上がっていた。高度に成熟したオペレーティングシステムであるにもかかわらず不当に低い評価を受けている感のぬぐえないSimplyMEPISではあるが、今回もその期待を裏切ることなく、調和の取れた外観と完璧なまでに動作する内実を備えたシステムとしてリリースされていたのである。

 私は旧バージョンのMEPISからのユーザなのだが、今回のバージョン7.0を見て最初に気づいたのはアートワークに関する変更くらいのものであった。ライブCDから起動する際のブート画面を始め、その後に表示されるスプラッシュ画面やログイン画面およびデスクトップに至る全体が、趣味のいい上品なテーマでまとめられていたのである。全体的な雰囲気そのものがプロフェッショナリズム溢れるディストリビューションに仕上げられているのだが、それらはこうした整合性のあるテーマで統一した開発陣の功績だと評していいのではなかろうか。また細部にまで行き届いた配慮は、ユーザエクスペリエンスを最優先事項の1つに置いていたことの裏付けと見ていいはずだ。私が新たなSimplyMEPISを最初に使い始めた際の第一印象は、以上のようなものである。

 SimplyMEPISの場合、ユーザフレンドリな操作性と高度な設定オプションのバランスをとる鍵となっているのが、そのハードドライブ用インストーラである。これは本質的に設定用ウィザードであって、ユーザは各種のドロップダウンボックスやテキストフィールドを介して必要なオプションを選択できるようになっており、例えば使用するディスクの選択、GPartedによるディスクのパーティショニング分割(オプション)、ターゲットとなるパーティションおよびファイルシステムの種類の選択など、基本設定に必要なステップは一通りそろっている。ただし、KDEデスクトップおよびアプリケーションのセットはすべてのインストールシステムで共通化されているので、これらに関するパッケージ選択用のオプションは用意されていない。こうしたインストールの終了後に行うのは、GRUB(GRand Unified Bootloader)の使用の有無およびそのインストール先、initrdを構成するか、どの共通サービスを有効化するかなどの指定である。その他、コンピュータ名、ホスト名、Sambaワークグループ名を始め、ロケール、キーボード、ユーザアカウント、rootパスワードについての指定をすることもできるが、いずれの設定も簡単かつ分かりやすい操作で行えるようになっている。

 私が特に感心させられたのは、MEPISにおけるハードウェアの検出および設定能力の高さであった。モニタの解像度が1280×800に正しく設定されたのはもとより、初回ログイン時には歓迎用のWelcomeサウンドが高らかに再生され、キーボードに装備されているボリュームコントローラすらも正常に認識されただけでなく、私が使っているワイヤレスEthernetアダプタによるWPA(Wi-Fi Protected Access)パスキーも入力可能な状態となっていたのである。

 SimplyMEPISにおけるシステム設定は、各種のアシスタントを介して行うようになっている。私も実際にMEPIS Network Assistantを用いてワイヤレスアクセスポイントのパスワード設定を行ったが、この設定後はブート完了時にネットワーク接続も確立されるようになってくれた。一般にこの種の設定ではNdiswrapperやWpa_supplicantのお世話になっても不思議ではないのだが、SimplyMEPISの場合、必要なファームウェアが使用可能な状態で最初から組み込まれているのである。またシステムトレイには、ネットワーク接続関連の各種情報へのアクセスを簡単化するためKNemoネットワークモニタが表示されるようになっている。

 その他Network Assistantについては、GeneralタブでManual(mnetwork)の代わりにAutomatic(networkmanager)を選択しておくとローミング関連の操作がいっそう行いやすくなる。これによりKNetworkManagerの使用時において利用可能なワイヤレスアクセスポイントに対するスキャンが実行されるようになり、マウスクリック1つでの接続が可能となるのだ。なおパスワード類に関してはKWalletに保存しておくことができる。

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SimplyMepis 7.0

 MEPIS X Windows Assistantはグラフィック関係の設定をするためのもので、私の場合はNvidiaのプロプライエタリ系ドライバのセットアップに使用した。これによりユーザから指定されたNvidiaオプションに対応するドライバ類のダウンロードとインストールが行われ、その後Xの設定ファイルがセットアップされる。こうした措置の施された私のシステムは、特にユーザの手を煩わせることなく、ログイン時に3Dグラフィックドライバが自動で立ち上がるようになってくれた。

 System Assistantで行えるのは、コンピュータとホストの名前およびロケールの設定、ディスクスペースのリカバリ、USBキー関連のオプション指定、GRUBの修復、パーティションの検証と修復である。

 User Assistantで行えるのは、ユーザアカウントの追加、削除、修復であるが、ここにはスケルトンファイルのセットアップや他のユーザアカウントに属す既存ファイルのコピーといった、高度な機能オプションもいくつか用意されている。特にLinuxの初心者ユーザにとって新規のユーザアカウント登録は難易度の高い設定であるため、こうしたサポートプログラムの存在が助けになるはずだ。

 SimplyMEPISの完成度を示す事例はこれだけではない。私がディストリビューションを試用する際の常套手段の1つに、動画サイトにアクセスするという試験がある。そしてSimplyMEPISの場合、YoutubeやVeohはともかく、Apple.comにある動画すらもユーザによる追加インストールなしで再生できてしまったのだ。しかもこうした対応度の高さは、さすがに暗号化DVDまでは再生できなかったものの、AVI(Audio Video Interleave)、CD/DVDイメージファイル、MPEG-4ビデオといった私が手元に所有していた各種のビデオフォーマットまでもカバーしていたのである。

 SimplyMEPISは、ポータブル型コンピュータ用の高度な省電力機能もサポートしている。例えばシステムトレイにはKPowersaveを介してバッテリモニタが表示されるが、このアイコンを右クリックするとパフォーマンスレベルとスリープ機能に関するオプションが提示される。もっともサスペンド機能は最初は正常に機能せず、その代わりに/etc/powersave/sleepファイルを編集してSUSPEND2RAM_FORCEの設定を切り替えろという旨のメッセージがダイアログボックスにポップアップ表示された。実際にその指示に従ったところ、サスペンドおよびハイバーネーションの両機能は正常に使用可能となっている。

 同梱されているアプリケーション群についても、SimplyMEPISの場合は非常に豊富な品揃えになっている。まずデスクトップ環境であるKDE 3.5.8を筆頭に、Linux 2.6.22-1、Xorg 7.1.1、GCC 4.1.2というのがその基本構成である。そしてグラフィック系アプリケーションは、GIMP、Xara Xtreme、digicam、インターネット系ソフトウェアは、メールクライアントのKMailとThunderbirdおよび、WebブラウザのKonquerorとFirefox、マルチメディア系ソフトウェアは、K3b、Amarok、KMPlayer、KsCDといったラインナップだ。その他の日常的な事務処理で必要な作業はOpenOffice.orgで賄えるであろうし、KlamAV、Keep(バックアップシステム)、GPartedといったユーティリティ群もそろっている。エンターテイメント系としては、Planet Penguin Racerなどのゲームが用意されており、デスクトップに華やかさを求めるユーザであれば、MEPISのソフトウェアリポジトリに登録されているバージョン7.0用にアップデートされたCompiz Packagesを利用すればいいだろう。

 こうしたCompizその他の追加ソフトウェアは、APTパッケージ管理システムを介してインストールすることができる。そのグラフィカルフロントエンドとしては、事前設定されたSynapticがソフトウェアリポジトリに用意されている。各自のシステムでアップデート可能なパッケージについては、パネルにAPT Notifyが常駐することでユーザに通知する方式となっており、必要時にこれをクリックすればSynapticが起動するので、アップグレード操作は簡単に済ませられるはずだ。

 マニュアルやユーザサポート関連の充実度においても、SimplyMEPISはLinuxコミュニティでのトップクラスに位置するといって過言ではないだろう。まずデスクトップから直接アクセスできる「MEPIS Users’ Manual」は、私がかつて目にした中でも内容的に最高レベルのガイドに仕上がっている。その各セクションでは、まったくの新米ユーザだけではなく中上級者クラスのユーザにとっても役立つ説明として、デスクトップコンピューティングに共通する各種のトピックが解説されているのだ。またオンライン経由でMEPIS Wikiにアクセスすれば、様々なインフォメーション、ガイド、ハウツーを入手できる。その他にはMEPIS専用のIRCチャンネルおよびディスカッションフォーラムも役に立つだろう。

 SimplyMEPISに対する私の使用体験は、非常に満足行くものであった。システムの完成度は非常に高く、然るべきものがすべて正常に動作してくれており、/etc/powersave/sleepファイルを手作業で編集したという一点を除けば、問題と呼べるレベルのトラブルには1つも遭遇することがなかったからだ。

 もともとSimplyMEPISは、私にとって以前からのお気に入りLinuxディストリビューションの1つであったが、それは実用性を第一としたユーザデスクトップの構成となっているためである。私がデスクトップに必要だと思う要素のほぼすべてがその中には取り込まれており、しかもそれらは論理的かつ操作性に優れた様式にて実装されているのだ。また同梱されているソフトウェア群も、無駄な重複の少ない均整が取れた分かりやすい構成となっている。特に初心者ユーザと上級ユーザの双方に適したシステムという点では、希有の存在と評してもいいだろう。実際私は、手元のラップトップに万が一の事態が生じた場合に備えて必要な操作を確実にこなせるシステムを最低1つは確保しておくという観点から、SimplyMEPISの適当なバージョンを常にインストールするようにしている。

 試してみる価値のあるLinuxディストリビューションの紹介を頼まれた場合、私が推薦できるシステムはそれほど多くはないが、その中において今も昔も最右翼に位置しているのがSimplyMEPISである。これは現在入手可能なもののうちで最高のディストリビューションとしてもいいだろう。可能であればより実態に即した名称として、その名をSimplyWONDERFULとしてもいいのではないだろうか?

Linux.com 原文