才色兼備なEnlightenmentの魅力を見事に引き出したEliveディストリビューション

  Elive は外観的な美しさと優れた操作性とを兼ね備えたLinuxディストリビューションである。EliveはDebianをベースとしているが、ウィンドウマネージャとしてEnlightenmentを採用することでMac OS X風のルックアンドフィールを醸し出すディストリビューションに仕上げられており、また即座に使用可能で操作性にも優れたデスクトップアプリケーションが多数同梱されている。

 当初EliveはライブCD形態で提供されていたが、現行のバージョン1.0では標準的なハードドライブインストール形式での使用が可能となっている。また不安定版ISOではあるが、バージョン1.5も近日中にリリースされるはずだ。

 私の場合、数カ月前からElive CDを使用し始めたところだが、その間において何人かの同僚に対しEnlightenmentの美しい動作画面を見せびらかすという栄誉に授かることができた。その後、妻が新型ラップトップを購入した際にそれまで彼女が使っていたHewlett-Packard Pavilion N5290を譲り受けることになったのだが、このマシン自体は750MHz Pentium IIIプロセッサ、30GBハードドライブ、256MBメモリという非常に貧弱なスペックの構成になっている。最初このマシンにはSolaris 10のインストールを試みたのだが、いくら頑張ってもネットワークインタフェースが動作してくれなかったので、その次にUbuntuの最新バージョンを試してみたところ、今度はインストール途中でフリーズし続けるという結果に終わった。

 これらのディストリビューションを断念して最終的に手を出したのがEliveであるが、このインストールは15分もかからずにあっさり完了してしまった。ちなみにこのインストレーションでは58カ国語もの言語がサポートされている。妻の新型マシンは1.6GHz Celeron Mプロセッサと1.5GBメモリという構成なので、Eliveマシンに対してハードウェア的には2倍の処理速度と6倍のメモリを装備しているはずなのに、ブート速度のみに関していうとこの旧式ラップトップはWindows Vista Homeを搭載した最新ラップトップよりも高速な起動ができてしまうのである。

elive_thumb.png
Elive

 Eliveには豊富なアプリケーション群が同梱されている。例えばデフォルトのブラウザはFirefoxをノーブランド化したIceweasel、ビデオプレーヤはMPlayer、DVDプレーヤはOxine、オーディオプレーヤはXMMSといった品揃えになっており、インターネットラジオについてもStreamtunerを使って簡単に放送局が検索できる。その他にもビデオエディタはKinoおよびCinelerra、サウンドエディタはReZound、ZynAddSubFx、Hydrogen、オフィス系プログラムはAbiword、Xpdf、Gnumeric、グラフィックエディタはGIMPおよびBlenderという多数のオプションが提供されている。

 またユーザによるソフトウェアの追加インストールについては、基本構成がDebianベースのディストリビューションであるため、Synapticパッケージマネージャを介して各種のソフトウェアタイトルを追加することが可能で、こうした形態で利用できるパッケージ数は現状で19,000を越えている。

 Eliveの場合、画面/オーディオ関連の設定、ユーザの追加、プリンタのセットアップなどはElive Panelを介して行うようになっており、テーマ切り替えによるデスクトップのルック&フィール変更にも対応している。Elive Panelの操作法については、初心者であっても簡単に理解することができるだろう。各アイコンの機能については、パネル上のアイコンにマウスポインタを重ねることで、パネル下部に説明文がスクロール表示されるからだ。このパネルはElive独自の仕様であり、同ディストリビューションを特長付ける優れた機構であると評していいだろう。

 Eliveはハードウェアサポートの面でも秀でている。例えば私のCanon製デジタルカメラを接続したところ、数分と待たされることなくGtkamでの作業ができる状態になってくれた。同様にネットワークカードを動作させるにあたって必要とされたのも、Elive Panelを開いてワイヤレス接続を有効化させることだけである。これと対照的だったのが妻のVistaマシンにおけるワイヤレスネットワーク接続で、こちらの設定作業には1時間半もの手間がかかってしまった。

 また一方でEliveには未完成な部分も残されており、この種の問題は特にアプリケーション関連の部分にて散見される。その1つがIceweaselで頻発する突発的なクラッシュである。例えば同ブラウザ上でYahoo! Mailの送信ボタンをクリックすると常にセグメンテーション違反が発生してしまうのだが、この件に関してはその後Debianフォーラムを調べたところ、TrueTypeフォント設定をオフにすることで解決できることを確認している。その他の事例では、オーディオ関係のメニューにあったElive Essenceというオーディオストリーマを試してもサーバに接続できないというマイナーなトラブルに遭遇した。手こずらせられたのはテーマ関連の設定についても同様である。この設定も他の項目と同様にメインのElive Panelにあると思っていたのだが、Eliveの場合はLook n’ Feelという独立した設定コンポーネントになっていたのだ。しかもその設定メニューではEnlightenment 16およびEnlightenment 17というアイコンが表示されるものの、現状でどちらが有効化されているかが何も表示されないのである。試しにE16を選択してからバックグラウンドセレクタに移動したところ、Elive Panelに戻ってしまった。その他にもElive Panelはデスクトップ上での移動ができないようであり、これは些細な問題のようにも感じられるが、パネル背面に表示されている内容を確認したい場合には不都合となるはずだ。

 こうしたEliveを開発しているコアチームは非常な小所帯であり、同ディストリビューションの構築にフルタイムで携わっているメインの開発者もSamuel Baggen氏1人だけであるため、ダウンロード時にはPayPal経由によるプロジェクトへの寄付金が求められるシステムになっている。

 ディストリビューションを支えるユーザコミュニティとしては、Eliveフォーラムが活発な活動をしており、またIRCチャンネルでも常時20から30人のユーザによる質問と回答のやりとりが行われているようだ。

 本稿でも言及したようにマイナーな問題点がいくつか残されているものの、Eliveの総評としてはUbuntu/Knoppixに対抗しうる手堅い構成のディストリビューションと見なしていいだろう。

Mark Scheckは、IPC Information SystemsにてUnixシステム管理者として活動しており、SunOS時代からのUnixユーザでもあると同時に、LinuxについてはRed Hatがフロッピー形態で配布されていた当時からの使用経験を有している。

Linux.com 原文