Fedora 9 インストールとアップデートを半自動化するツール

 Fedoraプロジェクトは、さまざまなタイプのインスタレーションを用意している。中でも、Fedoraの全リポジトリーを含むDVDなど、特定用途向けのインストール・イメージ群Fedora spinsがよく知られている。それらに加えて、同プロジェクトはFedora 9でさらに2つのツールを用意した。Fedoraのライブフラッシュ・ドライブを作るためのWindowsアプリケーションLiveUSB Creatorと、リリースをアップグレードするためのウィザードPreUpgradeだ。方法こそ異なるが、どちらもFedoraオペレーティング・システムの複雑なインストール作業を扱いやすくするためのツールだ。

LiveUSB Creator

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LiveUSB Creator

 LiveUSB Creatorは繰り返し使える起動可能フラッシュ・ドライブ、つまり変更やアップグレードができファイル・ストレージとしても使えるイメージを作成するためのWindowsアプリケーションで、基本的に、同じ目的のFedoraスクリプトが持つ機能を簡単なダイアログを通して使えるようにしたものだ。

 LiveUSB Creatorはダウンロード提供されているが、zipファイルなので使用する前に展開する必要がある。起動するとダイアログが開き、ここでいくつかの設定を行う。具体的には、起動可能フラッシュ・ドライブの作成に必要なライブCDイメージ(ローカルまたはダウンロード)の指定、永続的に使用されるデータ保存領域の容量、対象となるWindowsドライブ文字を設定し、「Create Live USB」ボタンをクリックする。あとは待つだけだが、作成にはしばらく時間がかかる。イメージをダウンロードする時間(インターネット環境にもよるが、およそ40~70分)に加えて、およそ5分必要だ。

 もしこのツールに弱点があるとすれば、それは説明のたぐいがないことだろう。ヘルプもないのは、プロジェクト・サイトで調べてから使えということか、あるいは説明を要しないほど易しいということか。いずれにしても、データ保存領域として確保すべき容量については何らかの説明があってもバチは当たるまい。たとえば、フラッシュ・ドライブをすべて利用しますか、それともオペレーティング・システム用に領域を残しておきますか。データ保存領域が大きいとこういう利点と欠点があり、小さいとこういう利点と欠点がありますなど。こうしたことにほんの数百ワードを費やすだけで、このツールはグンとよくなるだろう。現状では、容量の指定はあれでよかったのだろうかという不安を抱えながら、プログレス・バーと処理状況のごく短い説明が流れていくのを眺めているしかない。

 プロジェクトのWebサイトを見るとGNU/Linux版LiveUSB Creatorの完成が間近いとあるから、Windows版のリリースはWubi(UbuntuをWindowsと同じファイル・システム上にインストールするプログラム)への一つの解答だったのだろう。ライブCDは当然のことながら動きが鈍いことが多い。したがって、関心のある人にLiveUSB CreatorやWubiでGNU/Linuxを試してもらうことができれば、よりよい印象を残すことができる。フラッシュ・ドライブで動作するFedoraはNTFSパーティションで動くUbuntuよりは遅いが、そこそこ動くからだ。さらに、GNU/Linux版LiveUSB Creatorでは、Wubiとは異なり、ファイルが占める領域以外にシステムが永続的に変更されることはない。使っていないフラッシュ・ドライブがある人にはもってこいの方法だろう。

PreUpgrade

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PreUpgrade

 6か月ごとのリリースのたびに、Fedora Listにはアップグレードの仕方を尋ねる質問が殺到する。詳細なアップグレード手順を用意しても、Fedoraリリース・パッケージを見てくれと口を酸っぱくして言っても、初日だけは開発者向けのRawhideを新リリースのリポジトリーにリダイレクトするという伝統行事によっても、こうした質問がなくなることはないようだ。おそらくそのためだろう、Fedora 9のリポジトリーにはアップグレードに必要なことを何から何まで案内してくれるウィザードPreUpgradeが用意された。

 LiveUSB Creatorでは解説がほとんどなかったのに対して、PreUpgradeの各ダイアログには質問されそうな情報はすべて用意されている。ウィザードは開始早々、アップグレードには数時間かかるがその間もコンピューターは使えること、最後に再起動する必要があることを説明する。次の画面では、アップグレードしたいリリースを一覧から選ぶ。一覧にあるのはRawhideリリース(画面では「アルファとベータ」)だけだ(Rawhideリリースを表示すると設定した場合)。処理が始まると、処理状況の説明が個条書きに表示され、処理を中断しても、その時点から再開することができる。

 そして、必要なパッケージとブート・イメージのダウンロードが終わると、再起動のメッセージを表示する。つまり、利用者が作業していると、Fedoraインストーラーが現れアップグレードの準備ができたと告げる、そこで作業中のファイルを保存するなどして再起動するという段取りだ。

便利になる人は?

 LiveUSB CreatorもPreUpgradeも期待通りに機能はするが、どれほどの利用者がいるのだろうか。熟練者は実用性が不十分だと批判するだろうし、初心者にとっては手順はまだまだちんぷんかんぷんで近寄りがたく見えるだろう。対象となるのはその中間層、つまりライブフラッシュ・ドライブや自動アップグレードの御利益を理解できるだけの知識はあるが、自分でできるほどではない人たちだ。LiveUSB Creatorの場合は、Fedoraに関心のあるWindows利用者も対象になる。

 しかし、Fedora Listを見ると、デスクトップ指向の利用者が大半のこうした中間層は存在するばかりか、急速に増えているようだ。こうした利用者にとって、また、おそらくは全部自分の手でやるのではなく適当に便利にやりたい熟練者にとっても、この2つのツールはインストール処理の複雑さを多少は軽減してくれるツールになる。

 どちらのツールも、それだけでは新しい利用者を引きつけるほどの魅力はあるまい。しかし、システム・インストールというものを単純化し、達人にしかできない作業から一般人にもできる作業にしてはくれる。これで、GNU/Linuxを敬遠する理由が1つなくなるだろう。こんなに簡単で便利なのに、どうしてこれまでなかったのだろう。そう思わせるアプリケーションではある。

Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.comに定期的に寄稿している。

Linux.com 原文