レビュー:Mandriva Linux 2008 Spring

 先月Mandrivaが発表した最新 Mandriva Linux 2008 Spring の2種類の版を数週間に渡って試してみた。その結果、小さな難点がいくつかあるものの、使いやすさ、ソフトウェアの豊富さ、古いCeleronマシンから新しいマルチコアマシンまでに至る幅広いハードウェア上での安定性といった観点から考えて、GNU/Linuxの世界とプロプライエタリの世界の良いとこ取りのディストリビューションをついに見つけたと感じた。

 今回は2種類のMandrivaディストリビューションを試してみた。一つはMandrivaのフラグシップ版である Mandriva One で、6種類のライブCDがリリースされている。6種類のうちの3種類ずつがKDE(バージョン3.5.9)デスクトップ版とGNOME(バージョン2.22)デスクトップ版で、KDE版/GNOME版の各3種類はそれぞれ、国際化サポートのみが異なる版になっている。なおMandriva OneにはDVD版はない。もう一つ試してみたのは Mandriva Powerpack で、サポートも含まれている有料版(ダウンロードは59ドル、箱入りは89ドル)だ。Mandriva Powerpackはインストール専用のDVD版としてリリースされている。

含まれているソフトウェア

 Mandriva OneはCD 1枚に収められたディストリビューションで、今時の流れには逆行していて、マルチコア対応や3.3GBのISOも数時間でダウンロードできる高速インターネット接続などといったものと無縁であることはもちろん、ありとあらゆる類いのフリーソフトウェアや3Dデスクトップのアドオンや3Dゲームなどといったものは含まれてない。しかしそのような小さなサイズにも関わらず、KDE版でもGNOME版でもCD 1枚のディストリビューションとしてはこれまでにないほど充実したソフトウェアが取り揃えられている。私の(シューティングゲーム用ではない方の)マシンの用途はインターネット閲覧、文書作成、画像/ビデオ編集などなのだが、Oneにデフォルトで含まれていたソフトウェアでそれらすべての目的を満たすことができた。OneでもPowerpackでも、カーネルには手を加えたLinux 2.6.24.4、サウンドにはPulseAudio、グラフィックにはXorg 7.3、3D効果にはCompiz Fusion 0.7.2とMetisseが使用されている。

 OneのすべてのライブCDには、OpenOffice.org 2.4.0、Mozilla Firefox 2.0、GIMP 2.4.5、Totem 2.22.0などが共通して含まれている。一方CD/DVDの作成、写真の管理、IM、電子メール、音楽再生などについては、各ライブCDが使用しているデスクトップ環境向けのソフトウェアが含まれていた。例えばKDEライブCDにはビデオエディタが含まれておらず、GNOMEライブCDにはKinoが含まれていて、PowerpackのKDE版にはKdenliveビデオエディタが含まれていた。また仮想化ソフトウェアはどのライブCDにも含まれておらず、Powerpackでもデフォルトのパッケージグループを選択している限りはインストールされなかった。なおOneのライブCDに欠けている最大の分野としてはゲームがある。

 とは言え実際的には、何十種類ものゲームもVirtualboxやXenなどの仮想化ソフトウェアも、また最新のKDE 4も、Mandrivaのリポジトリからダウンロードすることができる。さらにMandriva Linux Springのリリースノートではリポジトリ内の新しいソフトウェアとして、メディアセンターのElisa、Mac OS Xに影響を受けたタスクマネージャのAvant Window Navigator、データ同期ソフトウェアのConduit、インターネットTV用のMiroなどが挙げられている。

 ライブCDでは初期状態では音楽ファイルとしてMP3と、FLACやOggなどの特許のかかっていない形式を再生することができる。それ以外の形式については、Fluendoから有料のデコーダを取得するか、リバースエンジニアリングによって作成されたデコーダをMandrivaのリポジトリから取得するかを尋ねるメッセージがCodeina経由で表示される。リポジトリを設定するには、ソフトウェアインストールユーティリティを実行して、メッセージにしたがってリポジトリを更新するオプションを選択すれば良い。

 有料であるPowerpackには、ライブCDに含まれているソフトウェアに加えてゲームも含まれている。また、Windows用ゲームをするためのCedegaや、28ユーロ相当のFluendoのコーデックなどに加えて、サポートやオンライントレーニングも付いている。

OneとPowerpackを使ってみる

 GNOMEライブCDとKDEライブCDとで、壁紙や設定ツールも含めてブート時とデスクトップ起動後のルック&フィールが同じだった点は良いと思った。またデスクトップの起動前に行われるキーボード/地域/日時などを設定するための基本的な質問も、どちらのライブCDでも同じだった。コンピュータに適切なリソースがあると判断された場合には3Dデスクトップを使用するかどうかの質問も行われて、Compiz FusionとMetisseの選択肢が表示された。

 1.8GHzのIntel Core 2 Duo E6300 CPUとIntel DG965RYマザーボードを搭載したデスクトップマシンで音楽再生を試してみたところ、スピーカ(オンボードのSigmatelサウンドカードを使用)からブーンという音が継続的に出ていて、音楽はほとんど聞こえなかった。そこで設定ツールのMCC(Mandriva Control Center)を見てみたのだが、サウンドのオプションを変更することができないようになっていた。一方Powerpackではサウンドに関するオプションを変更することはできたのだが、このブーンという音についてはやはりどうすることもできなかった。なおこの問題は他のマシンでは起こらなかった。

 次に2.0GHz E4400デュアルコアデスクトップでKDEライブCDとGNOMEライブCDを試してみたところ、まったく問題なく動いた。文書作成、インターネット閲覧、音楽再生の目的でライブCD環境をほぼ丸一日使用してみたが、特にストレスを感じることになりそうなことは何もなかった。また1GBのRAMを搭載した1.3GHz CeleronノートPCでも試してみたが、同様にしっかりと安定していた。

 ライブCDからハードディスクへのオペレーティングシステムのインストールは素早く簡単にできた。使用するインストーラはKDEライブCDでもGNOMEライブCDでも同じだった。このライブCDのインストーラにあるパーティション分割ツールを使えば、パーティションの作成/サイズ変更/削除ができるのだが、このインストーラには一つ問題点があり、多くの人のマシン上に存在するであろうWindowsパーティション用のGRUBのエントリを追加することができないということがあった。

 デフォルトで作成されるパーティションはext3のパーティションだ。ライブCDからインストールする場合もPowerpackインストーラを使う場合も、LVM(Logical Volume Manager)パーティションを作成したい場合には、Expert(エキスパート)モードを選択する必要がある。ライブCDのインストーラではLVMパーティションを作成する前にlvm2パッケージをインストールするように求められたのだが、PowerpackインストーラではLVMパーティションの作成に役立つツールやパッケージはあらかじめすべて用意されていた。

ハードウェアのサポート

 デュアルコアマシンのうちの一台でサウンドに関する問題があった以外は、3台のテストマシンに接続してあったデバイスはすべて適切に認識/設定されて有効になった。ただしLinksys Wireless USBアダプタについては、検知はされたものの組み込まれていたドライバでは正しく機能していないようだったので、その後Ndiswrapper経由でWindows用ドライバをインストールしたところ適切に機能するようになったようだった。一方、ノートPCのLinksys Wireless PCMCIAカードや、デスクトップの(ワイヤレスではない)Ethernetカードについては特別な対処はまったく必要なかった。

 19インチ(1440×900)のLCDモニタと17インチ(1280×1024)のLCDモニタは、OneでもPowerpackでもどちらのデスクトップでもすべての版で正しく設定された。また2台のテストマシン上のオンボードグラフィックスはどちらも正しく設定されて、3DデスクトップもTorcsやTremulousといった3Dゲームも問題なく利用することができた。

 ウェブカメラのQuantum QHM500LMについては動かすためにGSPCAドライバをインストールする必要があった。しかしSony HandycamについてはKinoでもKdenliveでもFireWireポート経由で接続後すぐに使うことができた。またCanon 400D DSLRカメラについてはUSBポート経由で接続後、自動的にマウントされた。

 手元のハードウェアについて既知の問題があるかどうかは、Mandriva Linux 2008 Spring Errataのページで確認することができる。

各種機能

 無料であるOneと有料のPowerpackとの違いが、Powerpackにはプロプライエタリなソフトウェアとサポートが含まれているという点だけだったのはとても良いと思った。機能的な観点から言えば、OneとPowerpackはまったく同じだ。

 どちらの版にも同じMCC(Mandriva Control Center)が含まれていて、これまでのリリースにはなかった新たな機能がいくつか追加されている。例えばシステム全体のバックアップ機能に加えて、特定のフォルダや複数のフォルダ(あるいはシステム全体でも)のスナップショットを定期的に取るように設定しておくことが可能になった。

 MCCには設定済みのセキュリティレベルが5つあって、システム侵入に対して用心したい度合いによって選択することができる。検査についてのパラメータやネットワーク設定や定期的なバックアップなどの作業に必要となる認証のレベルは、設定/確認することもできる。

 子供のコンピュータ利用について懸念する親なら、MCCを使ってペアレンタル・コントロールを設定すれば(ホワイトリストとブラックリストを使用して)一部のサイトをブロックしたり、設定した時間外のインターネット利用を制限したりすることができる。

 パッケージのインストールに関して言えば、特定のパッケージの実行ファイルを最後に実行した日時などの統計情報を含めシステム上のパッケージについて追跡可能な小さなユーティリティがあって、システムから削除しても問題ないパッケージを選択する際などに役立つ。

 Mandriva Linux Spring 2008ではソフトウェアインストールユーティリティも改善されていた。パッケージをクリックするとパッケージマネージャがそのパッケージについての追加情報をダウンロードして表示する。今までよりも分かりやすいため、リポジトリからのパッケージの追加がかなり素早くできるようになった。またパッケージマネージャはデフォルトではGUIのあるプログラムだけを一覧表示するようになったので、パッケージマネージャでのソフトウェア/ライブラリ選びにまごつく初心者にとっては便利だろう。上級ユーザは、パッケージマネージャの中の分かりやすい場所に表示されているプルダウンメニューで適切なオプションを選べば、すべてのパッケージを一覧表示したり検索対象にしたりすることができる。

 PowerpackではDVDをリポジトリとして使用することができるので、新たなソフトウェアをインストールする際にはDVDから取得すれば時間の節約になる。このことはGNOME/KDEライブCDでも可能であれば良いと思った。というのもOneをGNOMEライブCDからインストールした場合、そのシステムにKDEをインストールするにはオンラインのリポジトリから行うしかないためだ。通常はそれで良いのだが、私の場合OneのKDEライブCDも手元にあったので使用することができれば嬉しかった。

 Mandriva Linux 2008 Springには、今回は手元に必要なハードウェアがなかったために試すことができなかった新たな改善点が2つあった。一つはMandriva Linux 2008 SpringがAsus Eee PC上でも利用可能になったことで、もう一つはWindows Mobile 5/6を使用したものやBlackBerryやNokiaの大半の携帯電話など様々なタイプのモバイルデバイスとの同期が可能になったことだ。

まとめ

 Mandriva Linux 2008 Springは、完璧なLinuxディストリビューションにかなり近いところまで到達している。各版もリポジトリもソフトウェアが充実しているし、便利なwikiベースのオンライン文書、フォーラム掲示板やIRCチャンネル(Freenodeの#mandriva)、初心者専用のものを含むいくつかのメーリングリストなどコミュニティのサポートも活発なので初心者にも安心だ。

 マルチコアプラットフォームからシングルコアプラットフォームまで、あらゆる種類のハードウェア上でまったく問題なく動くことを一つのディストリビューションに要求するのは酷なことのようにも思えるが、Mandriva Linux 2008 Springでは(1台のデュアルコアマシン上でのサウンドの問題を除けば)まったく苦労せずに手元のすべてのハードウェアデバイスを利用することができて、システムを管理するために端末を起動する必要性を感じたことは一度たりともなかった。ワイヤレスカードもFireWireデバイスもUSBデバイスもグラフィックカードもモニタもすべて検知/設定された。また定期的なバックアップ、リポジトリからの更新/新たなパッケージのインストール、ファイアウォールの調整/利用はすべてGUIを使って行うことができた。

 Mandriva Linux 2008 Springは、Linux初心者にとってもベテランユーザにとっても、安定したデスクトップディストリビューションとしてこれ以上はないというほど優れた選択肢だ。

Linux.com 原文