クロスプラットフォームの同期化サービス

 今日、コンピューター・ファイルをバックアップする手段は山ほどある。コンピューターが1台であれば、いずれの手段でも操作は簡単で、たとえば外部ハードドライブにバックアップし、あとはうっちゃっておけばよい。しかし、コンピューターが複数台あり、しかもオペレーティング・システムが異なっていると、事はそう単純ではない。また、よく使うコンピューターが複数台ある場合は、すべてのコンピューターでファイルを同期させたいところだ。 PowerFolder は、それを実現するサービスで、プラットフォームや台数に関わらず、ファイルをバックアップしたり同期させたりすることができる。

 PowerFolderを試用するために、まず小さな.jarファイルをLinuxボックス(オペレーティング・システムはSUSE 11.0)とiMac(Mac OS X Leopard)にインストールし、Windowsマシン(Vista)上で.exeファイルを実行した。次に、PowerFolderの無償アカウント(オンライン・ストレージの容量は5GB、有料で増量可能)を登録した。インストールに数秒、登録に数分、これでファイルを同期する準備は完了した。

 GUIのSetupセクションにある「Mirror a folder」をクリックすると、フォルダーを選択するダイアログボックスが開く。オプションとして、Documents、Music、Pictures、Videoなどがあり、WindowsとLinuxでは、FirefoxやThunderbirdのフォルダー全体の同期をとるオプションさえ用意されている。カスタム・ディレクトリーを選べば、既存のフォルダーを指定することもできる。残念ながら複数のフォルダーをまとめて指定することはできないようだが、1つずつ設定を繰り返すことで複数のフォルダーを指定することはできる。

 バックアップするファイルを選ぶと、ファイルへのアクセスを許容する人に「secret access code」が記載された招待状を送るよう指示される。招待状はその場で送ることもできるし、ローカル・ファイルに保存しておき、あとでテキスト・ファイルの形で送ったりUSBスティックに入れたりすることもできる。自分のデスクトップパソコンとノートパソコン間なら、LAN経由で招待状を送ることも可能だ。

 同期の場合は、同期方法の詳細を設定する。操作を容易にするため、いろいろな同期プロファイルがあらかじめ用意されている。たとえば、Mirrorプロファイルは2台以上のコンピューターを双方向にミラーリングするための設定で、5分ごとに指定されたフォルダーのファイルを調べ、変更されているものがあれば同期させ、新しいファイルは自動的に転送する。また、Project Workプロファイルは自動機能は使わず、syncボタンがクリックされたときにだけファイルを調べ転送する。Customizedプロファイルは、仕様を自分で設定することができる。

 定期的に大きなファイルを同期させるとコンピューターのリソースを食い、ほかのプログラムの動作が遅くなる可能性がある。そのため、よく目立つトグル・ボタンが用意されており、変更ファイルの調査をせずにじっとしているか、あるいはハード・ディスクに負担をかける作業も実行するかを切り替えることができる。筆者の場合、自動同期のためにほかのアプリケーション、とりわけストリーミング・メディアの動きがぎごちなくなり速度が低下したとき、この機能を一度ならず利用した。

 PowerFolderは同期対象のすべてのフォルダーについて、各フォルダーにあるファイルの数、アクセスした人、フォルダー全体のサイズなどの詳細を把握している。この情報は、ユーザー・インタフェースを介して確認することができる。なお、各フォルダーの名前の横にカラーの円盤があるが、色の意味はついにわからなかった。

バックアップ、その他

 ファイルをオンライン・ストレージにバックアップする場合も、設定の仕方は同期の場合とほぼ同じだ。主な違いは、ローカルに管理フォルダーを少なくとも1つ用意しておく必要があること。用意ができたら、ユーザー・インタフェースのパネルにあるOnline Storageをクリックし、バックアップの詳細を設定する。

 バックアップ中に他のシステムでは使えない文字を含むファイル名があると警告が表示され、措置を尋ねてくる。選択肢は、そのファイルをバックアップまたは同期の対象から外す、自動的にリネームする、同期を続行する、の3つだ。

 フォルダーをオンラインに置くことの利点は、招待された人もそこにあるファイルを閲覧したりダウンロードしたりできるようになることだ。この機能を利用すれば、きわめて容易にチーム間のコラボレーションを実現することができる。また、複数のコンピューターを相互に同期させ事実上いつも同じ状態にできるため、オンラインでのチームワークが容易になる。この機能を設定するのは簡単で、コンピューター間で招待状を送るだけ。PowerFolderはプライベートなピアツーピアのネットワークとして機能し、中央サーバーがなくてもファイルをチーム内で共有することができるようになる。

 PowerFolderの本当に素晴らしいところは、そのアクセシビリティーだ。どのコンピューターからでもFirefox、Opera、Safari、Internet Explorer 7を使ってオンライン上に置かれたフォルダーにセキュアにアクセスしダウンロードすることができる。これは普通のコンピューター利用者にとっては便利というだけのことだろうが、よく移動する人にとっては必須機能だ。仕事を持ち帰るために夜ごとCDを焼く必要がなくなるのだから。欲を言えば、一定間隔でフォルダーを自動バックアップする機能がほしいところだ。ひょっとしたらすでにあるのかもしれないが、設定や解説書を見た限りではそれらしき記述は見あたらなかった。

 解説書は、残念なことに、PowerFolderの大きな欠点の1つだ。Webサイトやwikiには多くの情報が掲載されているのだが、そのほとんどはあまり明確には書かれていない。オンライン・ストレージの設定など、特定作業の手順を概略したものでしかなく、十分な包括的情報がないのだ。

 たとえば、Quickstart Guideに「もしOnline Storageをフレンド・リストに追加するかと尋ねられたら、そうする」とあるのだが、尋ねられない状況はあるのだろうか。あるとすれば、どこかで失敗した場合だろうか、それとも手順を飛ばしてしまった場合だろうか。フレンドリストを必要とする機能があるのだろうが、必要としない機能はあるのだろうか。

 Quickstart Guideとwikiの分量からPowerFolderの使い方を説明しようと努めていることはわかるのだが、そこに記された手順は曖昧で精確さに欠けるきらいがある。GUI自体が曖昧なことが多く、ときにはきわめて紛らわしいことがあるため、利用者の不満が余計に募ってしまうのだ。たとえば、Setupボタンをクリックすると、ダイアログボックスが開き7つのオプションが示される。最初の2つはMirror a folderとBackup a folderだが、この2つの違いの説明がない。それに続く画面を見ると、設定の手順はほぼ同じなのだ。解説書をひもといても新たな情報はほとんどない。結局のところ、経験をたよりに推測し両者の違いを理解するしかなかった。幸いなことに、PowerFolderの開発者たちはユーザー・フォーラムをよく見ており、質問には迅速に対応しているようだ。

まとめ

 PowerFolderが提供するバックアップと同期サービスの信頼性は実証済みで、どのプラットフォームでも同様に良好に機能する。多様なオプションと明快な警告メッセージから、「汎用のソフトウェアを作ってみました」というレベルのサービスではなく、オペレーティング・システムに関わらず機能するよう手を尽くされていることは明らかだ。明確な解説書があれば、筆者は、使っているすべてのコンピューターでバックアップおよび同期のツールとしてPowerFolderを常用するだろう。

Linux.com 原文