FreeNASサーバの調査

オープンソースのNASサーバであるFreeNASを使えば、PCをネットワーク接続のストレージサーバに変身させることができる。FreeBSDとSamba、それにPHPに基づくFreeNASは、さまざまなソフトウェアRAIDモデルとWebユーザインタフェースをサポートするオペレーティングシステムを備えている。WindowsコンピュータやApple Macintoshのほか、FTP、SSH、およびネットワークファイルシステム(NFS)からのアクセスに対応し、ハードディスクまたはリムーバブルメディア上に置かれるプログラム容量は16MB足らずだ。

FreeNASの利用および導入は自由に行うことができ、費用はかからない。このプロジェクトは、BSDライセンスの下で公開されているオープンソースプロジェクトである。FreeNASは非常に好評で、先月のダウンロード件数は20,000以上にのぼる。

早速、私もFreeNAS 0.66のISOイメージをダウンロードしてCDに焼いた。FreeNASを立ち上げるには、最低でも96MBのメモリを備えたPCまたはサーバと、ネットワークアダプタ、それに少なくとも1基のハードディスクが必要になる。ここでは、4基のIDEハードディスクドライブを搭載した古いPCを利用する。ハードディスクドライブの1つにFreeNASをインストールし、ほかの3つをRAID 5構成にしようと考えた。この実験用PCは4つまでのIDEドライブにしか対応していないため、一時的にハードディスクドライブの1つをCD-ROMドライブと入れ換え、FreeNASのインストール後、ハードディスクの設定を行う前にCD-ROMを元のハードディスクと再度交換した。

PCをCD-ROMからブートするとFreeNASが起動して実行されるのだが、やはりFreeNASを設定する必要がある。『FreeNASのセットアップおよびユーザガイド(FreeNAS setup and user guide)』に記された手順に従って行うことになる。

初期設定の途中で注意すべき点の1つは、FreeNASサーバではネットワークカードの自動割り当てが一切行われないことだ。私の構成にはネットワークカードが1枚しかないので、そのカードがシステムのネットワークカードとして自動的に割り当てられるものと思い込んでいたのだが、それは間違いだった。機器の接続と配線のチェックに1時間もかけた後でようやくそのことに気付いた。ユーザガイドの「LANインタフェースおよびIPの設定(LAN interface and IP configuration)」セクションに説明があるように、ネットワークカードの割り当ては自分で行わなければならない。

サーバマシンが正常に起動したら、このFreeNASサーバに割り当てたIPアドレスをWebブラウザのアドレスバーに入力する。すると、ユーザ名とパスワードの入力を求められるはずだ。これらのデフォルトは”admin”と”freenas”になっている。開始ページには、バージョン番号やメモリ使用量などのシステム情報が表示され、その左側にメニューが並ぶ。

まずは、RAIDディスクの構築に取りかかるとしよう。再び、ユーザガイドの出番だ。このガイドには、RAID構築の手順が明確に順を追って説明されている。

RAID構築にはハードディスク内の全領域を使う必要があるため、(USBペンドライブではなく)ハードディスクの1つにFreeNASサーバをインストールしてしまうと、そのディスクはRAID構成の一部としては使えなくなる。また、RAID構成の容量を最大にするには、各ハードディスクの容量は同一または同程度にする必要がある。FreeNASのバージョンによっては、バグが原因で、各ハードディスクドライブを同じ容量にしなければならないものもある。

RAID構成のマウントポイント作成で1つ注意すべき点は、ソフトウェアRAIDのパーティションの種類を変更する必要があることだ。私は、最初のRAIDのセットアップ時にこれを行わなかったため、うまく行かずにしばらく悩むはめになった。

ネットワーク上でこのボリュームを利用できるようにするための最後の手順は、CIFSやFTPのようなネットワークサービスの設定である。Windowsコンピュータの場合、ネットワーク経由のファイルアクセスにCIFSプロトコルを使っている。CIFSの設定は、[Services]セクションの[CIFS]ページで行う。そのためには、ページの右上にある[Enable]チェックボックスをオンにしてから、ワークグループ名を設定しておく。最も簡単にCIFSを動作させる方法が匿名認証である。そのために、ローカルで定義されたユーザの認証、および、ドメインベースの認証利用の各オプションが用意されている。設定後に[Save]をクリックすると、WindowsコンピュータからFreeNASサーバにアクセスできるようになった。いくつかのファイルをコピーする間、ハードディスクを見ていると、各ディスクが一斉に動作するのに伴い、小さなLEDが点滅した。これでようやくFreeNASサーバが機能するようになったわけだ。

FreeNASのWeb管理インタフェースはかなり広範囲のことが行えるので、サーバの管理にコマンドラインを使う必要はない。SSHを介してシェルにフルアクセスできる機能も用意されているが、それを試す必要性を感じることはなかった。主たるサポート用リソースになっているfreenas.orgのフォーラムによると、もっと特殊な設定を行うためにコマンドラインを使っている人もいるようだが、初級ユーザの場合はWeb管理インタフェースで十分に事足りるだろう。

私が試した範囲では、コアのFreeNASシステムは安定していたのだが、システム設定がおかしくなることがあった。たとえば、初めてローカルユーザを作成する際、最初にグループの作成が必要です、というメッセージを無視して先に進み、ユーザの作成を試みたことがあった。その結果、何らかの内部エラーが発生し、それ以降はローカルユーザの認証がすべて失敗するようになった。この状況を脱する唯一の方法は、FreeNASサーバを初期デフォルト状態に戻して最初からシステム設定をやり直すことだった。警告やメッセージにきちんと従っていれば、こうした問題が起こることはないはずだ。

サーバのセキュリティを高めるには、Web管理インタフェースのデフォルトパスワードを変更する必要がある。サーバへの物理的なアクセスを制限していない場合は、コンソールメニューを無効にしてもよいかもしれない。

FreeNASの制約の1つは、共有フォルダに対するアクセス権の設定を詳細に行えないことだ。ローカルユーザの認証では、柔軟な設定がまったくできない。一部のユーザに読み取り専用のアクセス権を与えたり、特定の共有フォルダだけに対するアクセス権を与えたりできないのだ。ユーザにアクセス権を与えようとすると、そのユーザはすべての共有ストレージに対してフルアクセス権を持つことになってしまう。

FreeNASサーバの潜在的な能力は高く、現在も開発が続いている。しかも、2006年の最初の4カ月だけで11回ものポイントリリースが行われている。FreeNASは、LinuxやFreeBSDの完全版をインストールしなくても、単純なネットワークサーバを構築できる優れた方法である。また、現在の標準に比してかなり控えめなシステム要件なので、古くなったハードウェアを活用できる点もすばらしい。

Gary Sims氏は、英国の大学でビジネス情報システムに関する学位を取得後、10年間はソフトウェアエンジニアとして活躍。現在はフリーランスのLinuxコンサルタント兼ライターをしている。

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