iXsystemsはなぜPC-BSDを買収したのか

PC-BSDは使いやすいパッケージの裏にFreeBSDカーネルの安定性を秘めたデスクトップ指向のディストリビューションだ。グラフィカルなシステム・インストーラとポイントアンドクリック式のPBIパッケージ管理システムが、BSDベースのオペレーティングシステムを使ったことのないユーザを引き込んできた。今週、このプロジェクトがiXsystemsに買収された。iXsystemsはハイエンドなエンタープライズ・ハードウェア・ソリューション・プロバイダである。コミュニティはこの動きに疑念を表明しているが、PC-BSDとiXsystemsの開発者たちは、この提携はディストリビューションを前進させるだけだと言っている。

PC-BSDの創設者で指導的開発者であるKris Mooreは、2005年の初めから自由時間を使ってこのプロジェクトに取り組んできた。言語コーディネータのCharles-Andre Landemaineを含めて何人かのボランティア開発者と崇拝者に助けられ、PC-BSDは活発なフォーラム・ボードを運営しており、50以上の言語でインストールできる。

Mooreは事態はよくなるだけだと言っている。「これからはフルタイムでプロジェクトに取り組めるだろう。プロジェクトが大きくなって、初期のころより注意が必要になっているので、大いに助かる」 そしてPC-BSDのロードマップについてこう語った。「ロードマップは変わらないが、私がフルタイムでやれるので、物事が前より速く進むはずだし、PC-BSDのもっと野心的な部分の開発に着手できるかもしれない」

彼はまた、PC-BSDが他の開発者のサポートもできるようになるだろうと示唆した。しかし、LandemaineはPBIDir(PC-BSDアプリケーションのオンライン・レポジトリ)も持っており、これまでどおり自力でやりたがるだろう。「私は趣味としてプロジェクトを手伝っている。金銭的な移転があるとすれば、私の側からプロジェクトへの寄付になるだろうが、私は何も要求するつもりはない」

PC-BSDフォーラムでニュースを話題にしている何人かのユーザは、PC-BSDがコミュニティサポート・ディストリビューションと企業サポート・ディストリビューションという2つの部門に分割されるのではないかと思っていた。「PC-BSDの”商業”バージョンを作る予定もないし、通常のフリー・バージョンを廃止する予定もない。このプロジェクトは引き続きオープンソースでBSDライセンスであり、それが買収で影響を受けるはずはない」とMooreは言う。彼はプロジェクトのWebサイトがフォーラムとフリーPBIとともにオンラインであり続けることを指摘した。

実際、Mooreは有料サポートを必要とするユーザにそれを提供することで、ユーザ・ベースをさらに拡大するつもりだ。「そうすることがPC-BSDの成長に寄与するだろうと思っている、特に商業セクタで」

この取引で熱くなっているのはMooreばかりではない。iXsystemsでCTOを務めるMatt Olanderも上機嫌だ。「FreeBSDとPC-BSDの採用率が上昇すれば、長期的に見て、我々のビジネスとBSDコミュニティの利益になるだけだ」とOlanderは言う。

iXsystemsのハイパフォーマンス・コンピューティング・クラスタ、ブレード・サーバ、ラックマウント・サーバ、ストレージ・ソリューションのどこにPC-BSDがうまくとけ込むのだろうか。OlanderはiXsystemsが多くの顧客にハイエンドなワークステーションも販売していることを指摘する。「それは我社のメイン・ビジネスではないが、PC-BSDは企業デスクトップ・デプロイメントにとっての実行可能な代案になると思う」

Olanderは、BSDに慣れ親しんで使用するユーザが増えるほど、ベンダがドライバやドキュメントでBSDをサポートする可能性も高くなると確信している。「デスクトップ・フレンドリなPC-BSDに焦点を合わせることで、FreeBSDが堅牢で安定していて成熟したオペレーティングシステムだという事実に新しいユーザが気づくようになるだろう。デスクトップで目覚しい働きをするなら、サーバ上ではさらにうまく働くはずだ」

iXsystemsでマーケティング・ディレクタを務めるDenise Eberyによれば、同社が注目しているのはPC-BSDのサーバとラップトップのバージョンだが、デスクトップでBSDが採用されるように頑張れば長期的には利益をもたらしそうだという。「自分のデスクトップでPC-BSDを使ってみて、慣れ親しんで満足したら、あなたは会社のデータセンターで何を使うように勧めますか?」

現在、MooreはiXsystemsで新しいPC-BSDソフトウェア部門を指揮しており、PC-BSDの1.3ベータ・バージョンの準備に追われている。「PC-BSDの開発と生産にiXsystemsのリソースを利用したいと思っている。FreeBSDに対するiXsystemsの膨大な経験を利用して、PC-BSDを新たな高みに持っていくつもりだ」とMooreは言う。

「このプロジェクトに関して、iXsystemsは私に大きな自由を与えてくれた。私はこれからも開発やPC-BSDのリリースといった通常の活動を行っていく」と彼は言う。Mooreを全面的に支持して、Olanderは次のように付け加えた。「彼の計画は我々の計画でもある」

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