レビュー:PC-BSD 1.3

iXsystemsは、昨年末、PC-BSD 1.3のリリースを発表した。昨年2月にバージョン1.0のレビュー記事を掲載して以来、若干の改良がなされ、オーナーが変わったが、完成までの道程はまだ遠い。

PC-BSD 1.3はKDE 3.5.5とFreeBSD 6.1を基にしている。システム要件は控えめで、Pentium II、RAM 256MB、ハードドライブの空き容量4GB、ネットワーク・カード、サウンド・カードがあれば動作する。レビューに当たり、提供されているVMwareイメージを動作させ(RAMは512MB)、それをRAM 1GBのPentium 4システムにインストールした。

PC-BSDのインストーラーは使いやすい。ユーザーが操作を求められる場面は極めて少なく、標準セットアップの場合、インストールの種類(サーバーかデスクトップか)、ユーザー名、パスワード、シェル、rootパスワードの設定だけだ。詳細セットアップにすれば、ディスクのパーティション、ネットワーク、ファイアウォールの設定も可能。セキュリティーが気になるなら、システムのスワップ領域を暗号化することもできる。

ハードウェア・サポートもよい。しかし、Linuxディストリビューションの中には更に上を行くものがある。Linux用はあってもBSD用はないドライバーが存在するのだからやむをえない面はあるが、構成ユーティリティにも問題がある。たとえば、手元にあったワイヤレス・カードを試すと、認識はしたようだが、カードの管理やWEPパスワードの設定などを行う構成ツールがなかった(少なくとも見あたらなかった)。

しかし、大半のデバイスでは、Network DevicesとNetwork Settingsという2種類の構成ツールが使える。もっとも、ある種のデバイスではNetwork Settingsを使う必要があるが。難点はもう一つある。ノート・パソコンのワイヤレス・ネットワーク接続を構成しようとして説明書を探したが見つからなかったのだ。Network Settingsツールのヘルプ・ボタンをクリックしても、KDE Help Centerウィンドウが現れ「There is no documentation available for /index.html」というメッセージ――デバイスを設定し使いたいと思っている者にとって役に立つとは言い難いメッセージ――が表示されただけだった。

The PC-BSD desktop
PC-BSDデスクトップ――クリックすると大きな画像が見られます

Ubuntuデスクトップの場合、USBサウンドカードを増設して特定目的(Skypeの利用など)に用い、システムのサウンドカードは別の目的で使うようにすることができるが、PC-BSDで提供されているツールでは複数のサウンドカードを管理できないようだ。

要するに、PC-BSDのハードウェア・サポートはLinuxよりも若干遅れている。標準的なデスクトップ・パソコンであれば、それで十分だろう。しかし、ノート・パソコンによっては、あるいはハードウェアの使い方が少し複雑になれば(複数のサウンドカードを使うなど)、高度な構成を行う必要が出てくるだろう。

PC-BSDのデスクトップ

PC-BSDインストール・ディスクを使った場合、非常に簡素なデスクトップが表示される。下端にKDEタスクバーが1行と、プレインストールされている必要最小限のソフトウェアがあるだけだ。同梱されているアプリケーションはいずれもKDE用のもの、したがって、GIMP、Gaim、OpenOffice.org、Firefoxなどはない。

有用とは言い難い少数のアプリケーションしかプレインストールしていないのはPC-BSD Installer(PBI)を使わせたいからではないかと思わせられる。と言うのは、PBIファイルとしてパッケージされているアプリケーションはかなりあり、しかも、PBIは、PBIファイルをダウンロードしてダブルクリック、rootパスワードを入力すればインストーラーが起動し、数秒でアプリケーションのインストールが完了するというすぐれものなのだ。

簡素なデスクトップとは言え、通常行われる作業の多くには足りる。電子メールにはKMail、Webの閲覧ならKonqueror、PIMアプリケーションはKontact、PDFを見るにはKPDFなど。ただし、パッケージの選定は少々風変わりだ。

OpenOffice.orgはデフォルトではインストールされない。これには驚かないが、それならそれで、なぜKOfficeをプレインストールしないのだろうか。しかも、KOfficeのPBIはバージョンが古い。12月に1.6がリリースされているのに、pbiDIRからインストールできるのは1.5.2までだ。

更に、オフィス・スイートはないのに、なぜかKPovModelerはある。3Dでモデリングしたいユーザーの数とオフィス・スイートを必要とするユーザーの数では、一体、どちらが多いと思っているのだろう。

前回はマルチメディア・アプリケーションがないことに衝撃を受けたが、今回はKaffeineがデフォルトでインストールされる。これはほとんどのメディアを扱えるが、素晴らしい音楽プレーヤーというわけではないので、お気に入りのAmarokをダウンロードすることにした。

AmarokはPBIディレクトリーにあるがバージョンが古く、昨年10月に1.4.4がリリースされているにもかかわらず、1.4.1のままだ。その上、インストールはできたものの、xineがオーディオ・ドライバーを初期化できないという理由でどうしても立ち上がらなかった。

そこで、PBIからK3bをインストールしてみたところ、これは動いてくれた。試しにCD-Rをノート・パソコンのCDバーナーにセットして何枚か焼いた。CDのリッピングも問題ない。音楽CDをセットすると自動的にマウントされ、KAudioCreatorユーティリティが起動。初回だけはリップのフォーマットを指定する必要があるが、エンコーダー(Lameを含む)もすべてインストールされていた。

また、Firefox、OpenOffice.org、GIMPをインストールし、更にPBIディレクトリーを眺めてパッケージのバージョンを見てみた。調べた範囲では、GIMPは数バージョン古いが、多くは現行バージョンだった。OpenOffice.orgは、英語版は2.1だが、ローカライズ版は少し古い。

PBIでインストールされたパッケージは、該当するKDEメニューの下にではなく、PBIメニューの下に置かれる。たとえば、GIMPをインストールすると、KDE Graphicsメニューの下ではなく、PBI Programsの下に置かれる。また、PBIの削除はSettings→System Administration→PC-BSD Software Manager、PBIのアップデートはSettings→System Administration→PBI Update Manager、システムのアップデートは通常Settings→System Administration→PC-BSD Online Updateだ。こうしたてんでんばらばらな状態でも必要なことはできるが、いい加減、ソフトウェア管理を1つのアプリケーションに統合したらどうだろうか。

オンライン・アップデート・ユーティリティは簡単で十分に使える。ただし、試したときにはアップデートはなかった。アップデート管理ユーティリティは、インストールしたままではアップデートを自動チェックしないようになっている。したがって、インストールしたら、自動チェックに変更することをお忘れなく。今回は、毎日チェックするように設定した。

1.3リリースの目玉機能の一つに、Packet FilterというBSDファイアウォールがある。外部からの接続要求に対するPFルールはインストールの際に構成できるが、私が見た限りでは、インストール後にルールを設定するGUI管理ツールはない。詳細セットアップ時のPacket Filterファイアウォールを構成する際と同じインタフェースだが、PBIにFirewall Builder――現行バージョンより数バージョン古い――があるので、これを利用することはできる。

まとめ

BSDベースのデスクトップを使いたいなら、おそらくは、PC-BSDでもよかろう。しかし、まだ荒削りで、UbuntuやFedora Coreのようなディストリビューションに比べると多くの点で機能不足だ。簡素なBSD風デスクトップを望む筋金入りのBSDユーザーにはよいだろうが、使いやすくハードウェアの互換性を求めるユーザーにはお薦めできない。

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