メンバー募集: Linux Guitar Projectはソロ活動でなくオーケストラを目指す

芸術好きのコンピュータオタクがテクノロジとアートを融合させたクリエイティブな手法を見い出すというのはよくあることだ。優れたソフトウェアと美しいギターをこよなく愛するカナダ在住の弦楽器製作家Mark Kett氏がLinux Guitar Projectを立ち上げたのも正にその好例と言えよう。

Kett氏はオンタリオ州ポートペリーにかまえる自分の工房でクラシックギターやスティール弦ギターを受注製作している。その一方でKett氏は1996年より「Linux界隈で生活し働いている」グラフィックアーティストでもある。しかしKett氏がこの「エコシステム」へ本気で飛び込んだのは約6ヶ月ほど前のことで、彼の得意客の一人でトロントのコーヒーショップlinuxcaffeとLinux Internet caféを経営するDavid Patrick氏に影響されてのことだった。

Kett氏は最近「スタジオ機能搭載ギター」というアイデアを思いついた。Kett氏によるとそれは「Linuxで動くiPodか何かが差し込まれていて、そのギターで演奏した音楽を録音できるようなもの」だという。Kett氏はそのアイデアをPatrick氏に話してみた。そしてそのことについて2人でいくらかブレインストーミングを行ない、その結果考え出されたのが「オープンソース」のエレキギターというアイデアだ。オープンソースのエレキギターはLinuxテクノロジを搭載し、コミュニティのみんなの協力のもと、一から設計されることになるとのことだ。Kett氏は「僕らは、究極のギターを作るとしたら一体どんなものになるだろうかということについて、とことん話し合った–するとそれは、Linuxオペレーティングシステムを丸ごと走らせていて、かつ、レコーディングスタジオにあるような設備機能のすべてを備えているようなギターだということになったんだ」と説明する。

これまでのところ、自身もギターの愛好家であるというPatrick氏がLinux Guitar Projectの最大のアイデア提供者だ。Patrick氏は「CPUを搭載したエレキギターを作ることはできないだろうかとMark(Kett氏)が言うと、そのアイデアは、何人かのミュージシャンやLinuxプログラマたちの心だけでなく、組み込みシステムのスペシャリストたちの心までをもつかんだのさ。どうやらこのプロジェクトはコンピュータオタクと音楽オタクの両方の人たちの想像力をとりこにしてしまうようだね」と言う。

Linux Guitar Projectではエフェクタやミキサーの代わりとしてタッチスクリーンインターフェースがギターに備え付けられる予定だ。そしてそれにより、エフェクタ/ミキサーの設定を演奏中に変更したり、よく使うパターンなどを予めプログラミングして登録しておくことが可能になるという。また、ギターでの演奏のすべてやその他の楽器との合奏全体を録音することが可能になる予定だ。なおKett氏は「タッチスクリーンはギタリストが変更を行ないやすい場所に取り付けるつもりだ」としている。

また現在検討中のアイデアの一つとして、ギターに複数のUSBスロットを備えるということがある。Patrick氏は「絶妙なソロ演奏を決めた後にさ、USBメモリを引き抜いて、録音されたその演奏をそのままどこにでも持って行かれるってことを想像してごらんよ。さらに今、デジタルな方法を使ってもメカニックな方法を使っても、自動チューニングや再チューニングができるようにしたいっていうことまで話し合ってるんだ」と言う。

Kett氏とPatrick氏は、Linux Guitar Projectに寄せられるみんなからの反応をうれしく思っている。Kett氏によると「すごくポジティブな反応を得られているよ。最初はみんな首をかしげるんだ。それから微笑み始める。そして最後には圧倒されて目を回し始めるんだ」とのことだ。

一方Patrick氏はこの点に関してはKett氏に異を唱える。「目を回すのは主にオタクじゃない友だちだね。僕らが説明しても、彼らには『…なんだかんだ…ギター…なんだかんだ…Linux…』としか聞こえてないのさ。だけどミュージシャンや技術者の友だちはたいてい、自己レコーディング機能や自己チューニング機能を備えていて、MIDIで演奏させながら無制限にオーディオ効果を処理できるギターというアイデアに思いを馳せ、驚きで目を見開くんだ。そのギターが持つ可能性を考えると圧倒されるものがあるからね」。

ギターはデスクトップマシンと接続する必要はなく、スタンドアロンで機能する予定だ。Patrick氏によると「Linuxの役割はオーディオ入出力を低遅延に行なうってことだけで、オーディオ処理の大半をシングルボードのコンピュータ上でハードウェア的に行なわせることができれば、CPUは入出力処理にのみ必要となるだけなので、CPUはそれほどパワフルなものでなくても大丈夫なんだ」とのことだ。

Kett氏によると、今のところはギターの大量生産は計画していないという。しかし、もしLinux Guitar 1.0が成功したら、より多くのギターを製作することも検討するとのことだ。Kett氏は「このプロジェクトはコミュニティの参加を爆発的に増やすことができて初めて成功させることができるんだ。そして願わくば “コミュニティ” という考え方をもっと多くの人に伝えることもできればいい」と考えている。

Patrick氏もまた、製作前の段階からもっと多くの人に参加してもらうことを望んでいる。Patrick氏は「もしプロジェクトを広くオープンに保つことができ、かつ、Linux Guitarというものがそもそもコミュニティからの本格的な開発協力を惹き付けるだけの魅力を潜在的に持っているとしたら、多くの参加者を得て多くのことを学ぶことができるようになるだろうし、それに楽しいと思うんだ。その結果として、ハイブリッドでスーパーなLinuxベースのギターが新しく生まれるなら、さらにいいね」としている。

Linux Guitar Projectではあなたのアイデアを求めている。プロジェクトのページLinuxGuitar.orgでは、ギターのプロトタイプの図を見たり、現時点でのアイデアを見たり、あなたのアイデアを付け足したりすることができる。

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