Ubuntu、Feisty Fawnでは非フリーのビデオドライバをデフォルトでは入れないと決定

UbuntuプロジェクトCTOのMatt Zimmerman氏が、今年4月にリリースされる予定の次期Feisty Fawnに影響するUbuntu Technical Boardによる2件の決定についてアナウンスを発表した。内容は、Feisty Fawnリリースのデフォルトインストールにプロプライエタリのビデオドライバは含まれないというものと、UbuntuのPowerPCポートが非公式リリースに降格されたというものだ。

Ubuntu Technical Boardは、Zimmerman氏、Ubuntu創設者のMark Shuttleworth氏、Ubuntu開発者のScott James Remnant氏、同じくUbuntu開発者のMatthew Garrett氏の4名から構成されている。Zimmerman氏に本日のアナウンスには書かれていなかった詳細についていくつか話を聞いた。

発表によるとFeisty Fawnでは「プロプライエタリのビデオドライバについては今までと同様の取り扱いとする」とのことだ。なおこれはUbuntuがプロプライエタリのソフトウェアを完全に一掃するという意味ではない。Ubuntuにはまだ「十分なハードウェアサポートを提供するために必要」との理由からワイヤレスネットワークカード等のデバイスのクローズドソースのドライバが含まれている。

しかし、ビデオドライバがクローズドソースであること自体を理由としてクローズドソースのビデオドライバを除外したのではなく、そもそも(クローズドソースのビデオドライバの検討の大きな理由の一つであった)Compositeのサポートの導入に必要となる一部のソフトウェアの完成度が次期Ubuntuのリリースにデフォルトで含めることができる程度にまで到達していないとUbuntu Technical Boardは判断した。

つまり、クローズドソースのドライバが完全に検討対象から外れてしまったというわけではない。Zimmerman氏によると「まだ機が熟していないということです。これからも開発を追いかけ続けて、状況が大きく変わったときには再び検討を再開するつもりです」とのことだ。

その代わりに現在のところは、デフォルトとしてではなくオプションとして、ユーザがプロプライエタリのドライバやCompositeのサポートを簡単に利用できるようにする方法が用意される予定とのことだ。Zimmerman氏によるとFeisty Fawnリリースにはプロプライエタリなドライバや3Dのサポートのための「インフラ」の準備は整っていることになるはずだという。

Ubuntuプロジェクトではまた、プロプライエタリなNvidiaドライバに代わるものとして現在開発中であるNouveauドライバについても開発状況を追跡していく予定とのことだ。ただしNouveauドライバは2007年中に動作可能なドライバを作成できる見込みがあまりなく、ましてFeisty Fawnのリリースに間に合うことはなさそうだ。

PowerPCポートの降格

Ubuntuプロジェクトは昨年11月に開催されたUDS(Ubuntu開発者会議)以来、完全にサポートする公式アーキテクチャのリストからPowerPCを外すことを検討していた。そして今回Ubuntu Technical Boardが正式に決定を下したことにより、PowerPCは非公式アーキテクチャに降格されることとなった。それにより今後、PowerPCのパッケージとISOの作成は今まで通りに続けられるものの、PowerPCアーキテクチャはプロジェクトの優先事項ではなくなり、例えばPowerPCに関して問題点が残されているからと言ってUbuntuのリリースを遅らせるというようなことはなくなることになるようだ。

開発者会議の後、UbuntuプロジェクトはPowerPCをプロジェクトの公式アーキテクチャの一つとしてサポートし続けるために「何らかの方法で資金源を確保する道」を探ったが、今日の発表によると「そういった資金源を確保することができず、PowerPCアーキテクチャの公式サポートを続けるのに必要な労力を確保することができません」とのことだ。

しかしどちらにしても、このことによって影響を受けるUbuntuユーザの数は多くはないだろう。Ubuntu開発者会議用に作成された資料によると、2006年11月時点におけるarchive.ubuntu.comからのダウンロードのうちPowerPC用のものは0.8%に過ぎなかった。なおこの値は2005年7月の1.95%と比較してさらに減少した数字となっている。

とは言え今回の決定はPowerPCユーザにとって暗いニュース一色というわけでもない。というのもPowerPCに取り掛かるためのチームが発足しているからだ。そしてそのためPowerPCポートについてのコミュニティのサポートが十分に活発であれば、たとえ「非公式」という位置付けであったとしても、UbuntuがPowerPCユーザにとって申し分なく使えるものであり続けるという可能性は十分にありうるからだ。

Ubuntu Technical Boardもまた、PowerPCポートの昇格を再検討する余地を今後も残しておくとのことだ。「品質を保証するために必要となる資金源を確保することができれば、PowerPCが今後再び完全にサポートされた公式アーキテクチャの一つに返り咲く可能性はあります。PowerPCアーキテクチャは組み込みデバイスやコンソールデバイスで確実に多くのユーザを獲得しつつありますし、PowerPCプラットフォームの開発を続ける理由は数多くあります。ただそのような用途はUbuntuプロジェクトに対するリクエストの内のほんの一部に過ぎないので、PowerPCユーザのリクエストに対応するためという理由だけでその他の取り組み(サーバやデスクトップなど)からPowerPCへと資源を回すわけにはいかないのです」。

また、今後のUbuntu PowerPCユーザの置かれる状況に関しても当面は安泰と言える。というのも、Ubuntuの次期リリースには公式のPowerPCリリースがないとは言え、Ubuntuプロジェクトは既存のPowerPC LTS(Long Term Support)リリースのサポートをPowerPCサーバについては2011年の終わりまで、そしてPowerPCデスクトップについては2009年の終わりまで続ける予定となっているからだ。

なお、昨年6月にリリースされたUbuntu 6.06 LTS(コードネームDapper Drake)についてもZimmerman氏に少し聞くことができた。Dapper Drakeのリリース以来かなり多くのパッケージのアップデートがあったため、Dapper Drakeを新しくインストールしてもインストール直後に多くのアップデートが必要となる状態となってしまっている。(保守リリースである6.06.1が8月にリリースされ、6.06.1にはその時点までにアップデートされたパッケージがすべてが含まれていたが、その6.06.1リリースもまた古くなってきている。)Zimmerman氏によると、そのような理由から6.06.2のリリースが計画されているものの、リリースの時期はまだ未発表とのことだ。

NewsForge.com 原文