オープン・フォント・ライセンスSILの改訂版がリリース

 リテラシーと少数言語の研究・保存に取り組む非営利団体SIL Internationalが、SIL Open Font License(OFL)バージョン1.1のリリースを発表した。OFL-Discussを含む複数のメーリング・リスト上で交わされた数か月にわたる議論を踏まえ、ライセンスの文言が明確化され、特にフォントの埋め込みと予約フォント名の許容が明文化されている。

 OFLの最初の版は2005年11月にリリースされた。SILのボランティアNicolas SpalingerとSILのタイプフェース・デザイナーVictor Gaultneyが書き下ろしたもので、フリー・オープンソース・ソフトウェアとの整合を目指す一方、デザイナーが問題とする点についても対処した。たとえば、フリー・フォントを再販できないように、ソフトウェアに付属する場合を除いて、このライセンスを使ったフォントの単体あるいはコレクションによる販売を禁止した。また、タイプフェースのデザイン的整合性を保つために、許諾なしに派生的な作品の創作を禁ずる予約フォント名の指定もデザイナーに認めた。しかし、こうした規定を回避するのは容易だ。たとえば、「Hello, World」スクリプトを同梱すればフォントの販売が可能だし、禁止されている名称そのものではなく、その同義語であれば派生的な作品の名称に使うことができる。だが、もしこうした規定がなければ、フリー・フォントの開発という理念へのデザイナーの抵抗はさらに強くなっていただろうとGaultneyは言う。

 今回の改訂に当たってSILがオンラインで公開している変更の概要を見ると、変更個所の中には単に表現を整えたというレベルのもの――概要では「よりよい表現」という説明が付いている――もある。しかし、多くは、曖昧さを解消し問題となりうる点を改善するためのものだ。たとえば、不満が寄せられていた「standard」の定義は、デザイナーがリリースしたファイル・コレクションを指す場合は「original」という語を用いるように改められた。また、「font software」の定義もファイルの種類を列挙した部分を削除し、このライセンスでリリースされたすべてのファイルが対象となった。

 バージョン1.1で明確化されたものの中でも特に重要なのは、タイプフェースの埋め込み、つまりドキュメントへの添付に関するものだ。埋め込みはPDFのオプションになっているだけでなく、ワープロやデスクトップ・パブリッシングで文字を画像に変換する際にも発生する。このため、埋め込みが許容されているかどうかについてはいろいろなライセンスでたびたび問題となっていた。そこで、SpalingerとGaultneyは、OFLでは許容されていることを明確にすることにした。「よく問題になっていましたので、いくつかあった曖昧な点を明確にしました」(Gaultney)。具体的には、埋め込みフォントの扱いを明確にするために、OFLフォントを他のライセンスでリリースすることを禁止するという条文に「フォントを本ライセンスの下に留めるというこの要件は、フォントまたはその派生品を使って作られたドキュメントには適用されない」という文言を付け加えた。さらに、埋め込みがフォントの販売と両立することも明確にした。

 変更個所が最も多かったのは予約フォント名に関する部分だ。「作者だけが使えるようにフォント名を予約する明確な手段を与えようと苦心しました」(Gaultney)。「それができれば、同じ作者の作品と誤認されかねない名称のフォントを他人にリリースされるようなことがなくなります。このフォント名ならこのデザイナーの作とわかるように、名前の所有権を明確にしようと考えたのです」

 このため、予約フォント名にはファイル名として、あるいは、ほかのソフトウェアのフォント・リスト上で「利用者が目にする」名前を含めないことにし、著作権を表示する文言の中で指定されたものに限ることとした。また、派生品における予約フォント名使用の制約については「一部または全部」という文言が削除された。前記概要の説明によると、「たとえば、『Foobar』に基づくフォントはf、o、b、a、rという文字をフォント名に含むことはできないと解釈できる」からだ。さらに、フォント名に関する制約は「利用者に示されたプライマリー・フォント名のみに適用される」こととした。これは、フォント・ファイルのメタデータに表れる予約名に関する問題を解消するためだ。

 新バージョンへの反応は概して肯定的だ。Gaultneyによると、フリー・タイプフェース・デザイナーの多くが「数週間以内に幕を開けるOFLプロモーション・キャンペーンの準備に参加している」という。また、Open Clipart Libraryの姉妹プロジェクトであるOpen Font Libraryではすべての投稿にOFLを適用するよう検討中であり、印刷用デザインのための第一級フリー・ソフトウェアであるFontForgeのリード開発者George Williamsはフォント・ファイルのライセンス欄にOFLを加えるボタンを追加した。

 デザイナーの世界以外でも、OFLを支持する動きがある。Gaultneyによると、Free Software Foundationは「OFL 1.0と同様に、1.1がフリー・ライセンスであることを確認した」という。残る問題の中で最大のものは、debian-legalメーリング・リスト上で論じられている疑問だ。Debianのメイン・アーカイブに受け入れるための条件を定めたDebian Free Software GuidelinesとOFLの整合性について、まだ数名のメンバーが議論を続けているのだ。しかし、Gaultneyが指摘するように、これは小さな問題だと思われる。というのは、DebianのFTPサイト・マネージャーが、すでに、GaultneyのGentiumを含むいくつかのOFLフォントをメイン・アーカイブに受け入れているからだ。

 OFLの下でリリースされているフォントの数はどれほどあるのだろうか。正確にはわからないが、Gaultneyは「私が知っているだけでも20種はありますし、知らないものも多いでしょう」と述べている。

 OFLが昨年来顕著になったフリー・フォント運動を生み出したのか、あるいは、その成長を映しているだけなのかは定かでないが、この1年あまりでOFLはすっかりコミュニティーにとけ込んだように思われる。

Bruce Byfield コンピュータ・ジャーナリスト。NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalの常連。

NewsForge.com 原文