OracleのLeigh Warren、Oracle-Red Hat開発センターを語る
Oracleのアジア太平洋地区ビジネス開発部門副社長であるLeigh Warrenから、シンガポールを拠点とするこのセンターに、なぜ注目すべきかを電子メールで聞くことができた。
LEAPセンターが提供するのは何ですか。
Oracle-Red Hat Linux Enterprise Application Porting centerは、OracleとRed Hatが設立した、この類としては世界で初めての合同センターです。ここでは、独立系ソフトウェアベンダがソリューションをLinuxに移植および認定するために必要なリソースと援助を提供し、Oracleのテクノロジを動作させることのできる堅牢なRed Hat Enterprise Linuxコンピューティングインフラを供給することにより、エンドユーザの間でエンタープライズLinuxの信頼性を向上させることを目的にしています。
センターではどのような開発作業が可能なのでしょうか。
現時点では、LEAPセンターの最大の用途は移植です。しかし、徐々にほかの開発作業も行われるようになるでしょう。LEAPセンターが提供するサービスとしては、ハッカーイベントやInstallFestsなどの、トレーニングイベントや体験イベントが企画されています。これらは開発コミュニティを対象としたものです。
LEAPセンターは当初から、2つのコミュニティを集中的にサポートしています。現地の活発なLinux開発者コミュニティと、Linuxプラットフォームへのアプリケーションの移植を支援するより「正式な」活動の2つです。
センターのサービスを受けることができる地理的なエリアはどこでしょうか。また、同様のセンターはほかにも計画されていますか。
LEAPセンターは、まず東アジア、つまりASEANおよびアジアのISVを対象にしています。Oracleには現在、中国に2箇所、日本に1箇所の開発センターに加え、インドに強力なR&Dベースがあります。これらによって、アジア太平洋地域の最先端のソフトウェアR&Dをサポートしています。
今後、アジア地域のほかのエリアでLEAPセンター開設を検討することはあり得ます。たとえば、言語などの理由から、特定のマーケットにセンターを設けることに意義があると判断されれば、実現の可能性はあるでしょう。ただし現時点では、まだ具体的な計画はありません。
センターの顧客としては、どのような製品/アプリケーション/企業を想定していますか。
当初は、LEAPセンターの主なユーザは、東アジア地域のISVとSIになるでしょう。
LEAPセンターの最大の目的は、企業がアプリケーションをLinuxに移植し、Linuxマーケットに参入することをサポートすることですから、幅広い利用が可能です。
センターは、ISVおよびSIをどのように援助するのでしょうか。
センターは主に、ISVやSIが、それぞれのソリューションをLinuxで移植、最適化、認定するのをサポートします。パートナーのLinux関連スキルの向上に貢献し、Red Hat Enterprise Linuxプラットフォームで動作する、低コストで高パフォーマンス、安全で信頼性の高いOracleインフラストラクチャ・ソフトウェアへのアクセスを提供します。
LEAPセンターはさらに、サードパーティのエンタープライズ向けLinuxアプリケーションの入手をより容易にし、アジア太平洋地域でのLinuxソリューションの普及を推進します。
センターのメリットについては、このWebサイトを参照してください。
このようなセンターが必要になった理由は何ですか。
OracleとRed Hatの両社は、今後Linux普及の原動力になるのはサードパーティ・アプリケーションの利用可能性であると考えていました。また、このOracle-Red Hat LEAPセンターの創設によって、アジア太平洋地域の顧客の増大する需要に応えたのです。
多くの企業が、Linuxの普及を阻んでいる最大の問題は、サポートの不足であると指摘していました。そこでわれわれは、LEAPセンターを作り、先ほどお話ししたような方法でISVを援助することにより、東アジアの開発者コミュニティのニーズをサポートします。
LEAPは、シンガポールと周辺地域のソフトウェア業界が、エンタープライズLinuxの実力を確実に活用するためのプラットフォームとして機能します。
センターでは何人の職員を採用する予定ですか。
LEAPセンターの運営には、OracleとRed Hatのフルタイムのスタッフが当たります。社の方針として、各施設の従業員の人数は開示していません。
サポートは、センター内、センター外、その両方、どのような形で提供されるのでしょうか。
LEAPセンターは、プロのLinuxエンジニアとコンサルタントで構成されるチームを擁し、プロジェクトやLinuxアプリケーションの規模と複雑さにより、センター内外でサポートを提供することができます。
ラボの環境にIntelアーキテクチャを選択したのはなぜですか。
特にIntelに限定しているわけではないのですが、OracleもRed Hatも、Linuxプラットフォームとの相性がよい低コストのコモディティ・アーキテクチャとして、Intelアーキテクチャを多く利用してきました。これにより、顧客がIntelのプラットフォーム・ソリューションに期待する、安定性、拡張性、パフォーマンス、セキュリティを約束できます。
「W(indows)EAP」ではなく、「LEAP」なのはなぜですか。
Oracleはプラットフォーム不問で、100%標準をベースにしています。つまり、OracleはUnix、Windows、Linuxを含む幅広いプラットフォームをサポートしているのです。
われわれは東アジア地域の開発者コミュニティのニーズと、顧客からの将来的なニーズに応えるためにLEAPセンターを開設しました。顧客は、セキュリティ問題の発生しやすいその他のプロプライエタリ・プラットフォームよりも、安定性もパフォーマンスも高いコモディティ・サーバをLinuxで利用し、コストを削減しようとするはずだとわれわれは予測しています。
LEAPセンターが設立されたのは、このニーズに応え、多くの企業がLinuxに移行できるようにするためです。
センターはハードウェア・ベンダにも対応できますか。
OracleとRed Hatは、ハードウェア・ベンダを締め出すようなことはしません。確かに、LEAPセンターはISVとそのパートナー向けの組織ですが、ハードウェア・ベンダも認定プロセスに参加して、パートナー企業が安心して利用できる設定を確立することができます。LEAPセンターのサービスを利用したいというハードウェア・ベンダがあれば、Oracleは最善の対応ができるよう努力するつもりです。
センターのサービスの利用料金はどうなっているのでしょうか。
OracleとRed Hatは、エンタープライズにおけるLinuxの普及率を上げるためにLEAPに投資しています。LEAPセンターの一連の標準サービスは、追加料金なしで利用できます。たとえば、基本の移植サービスは無料です。特定のパートナーが必要とする追加サービスは、ケースバイケースの料金でOracleおよびRed Hatが対応します。
センターの追加サービスにはどのようなものがあるのですか。
上記のサービス以外に、LEAPに参加しているLinux開発者は、技術、マーケティング、ソフトウェア・サポート、トレーニングなどの幅広いサービスを受けることができます。これにより、OracleとRed Hat Enterprise Linuxでテストおよび認定済みの製品を、より早く市場に出すことができます。開発と認定用のRed Hat Enterprise LinuxとOracleソフトウェアが無料で利用できるほか、OracleのPartner NetworkとDeveloper’s Networkに自動的に入会できます。
センターの価値はいくらですか。
LEAPセンターには、Red HatとOracleが2000万シンガポールドルを共同出資しています。
シンガポールを選んだ理由は。
シンガポールは、東アジアにおけるLinuxハブとして理想的な立地だといえます。その理由は数多くありますが、まず、東アジアのIT市場の中でも主要な存在であることです。また、OracleはそのLinux業務に対し、政府から、強力かつ見識のある援助と支援を受けています。
それ以外にも、シンガポールを拠点とする企業はITに精通しており、オープンソース・ソフトウェアのコスト面のメリットを理解し、導入にも積極的です。また、シンガポールには大規模で活発なLinux開発者コミュニティがあります。
センターでは、既存のアプリケーションを移植するケースのほか、オープンソース・アプリケーションを新しく開発しようとしている新興企業のサポートも行うのですか。
はい。LEAPセンターでは、新興ISVのオープンソース・アプリケーション開発を、企業とアプリケーションの両面から、さまざまな方法でサポートします。
技術面のサービス:
LEAPセンターにハードウェアとストレージを含むテスト環境が用意され、そこで移植、QA、テスト、トラブルシューティングを行うことができる。
Red Hat Enterprise LinuxおよびOracleソフトウェアの利用を通じて、ISVには開発および認定プロセスのためのソフトウェア・スポンサーシップが無償で提供される。
マーケティング面のサービス:
LEAPセンターの援助によりISVがアプリケーションを完成させると、Red HatのGlobal Solutions CatalogueとOracle PartnerNetwork Solutions Catalogueの各Webサイトにアプリケーションが掲載される。
ISVはOracleとRed Hat共同のLEAPプログラムのWebページに、移植済みアプリケーションとして掲載される。
ISVは、Oracle、Red Hat、ISVの情報が含まれるソリューションのホワイトペーパー・テンプレートを利用できる。 完成したホワイトペーパーは、partner.oracle.com、Redhat.com、そしてISVのWebサイトに掲載される。
Oracleイベントへの招待や、Oracleイベントでの出展料の優待がある。顧客による実装が完了すると、顧客/パートナーのケーススタディにISVも掲載される可能性がある。
サポート面のサービス:
ISVは移植が完了してから6ヶ月間、LEAPを集中情報センターとして利用し、ISVから上申されてきたエンドユーザのサポート問題にアクセスすることができる。また、Oracle Technology NetworkとOracle AppsNet(Sample Code Libraries含む)にもアクセスできる。
トレーニング面のサービス:
企業は、Red HatとOracleのエンジニアがLEAPセンターで年4回開催する開発者向けクラスに、開発者とサポート担当者を参加させることができる。
センターで認定するのは、RHEL上で実行できる製品のみでしょうか。
はい。これはOracleとRed Hatとのパートナー契約だからです。両社はコンサルタントとエンジニアのリソースを提供しあい、パートナーがRed Hat Enterprise Linux上の最新かつ完全なOracleテクノロジに関する実践的な知識を得ることができるようにLEAPセンターを創設しました。
Red Hatとのパートナー契約により、ISVは世界レベルのLinux製品リサーチおよび開発の専門知識を利用し、Linux開発のためのリソースへのより容易なアクセスを提供できるようになります。
センターでは、組織のLinuxへの移行も支援するのですか。
Oracle-Red Hat LEAPセンターが主に支援するのはISVとSIですが、プラットフォームをLinuxに移行しようとしている組織にコンサルティングを提供することは可能だと考えています。
現在、「顧客」はどの程度いるのですか。
LEAPセンターはオープンして間もないですから、具体的な数字を挙げるには早すぎるでしょう。ただ、Oracleは東アジア地域で、すでに450社のISVとパートナー・プログラムの契約を結んでいます。これらのISVはセンターのパートナー候補です。Red Hatのほうでは、Linuxプラットフォーム向けにアプリケーションを開発しているISVが全世界で900あります。
Mayank Sharma:インド人のテクノロジ・ライター/開発者、21歳。インドにおけるローカライズ作業の紹介と拡大に注力する。また、FOSSを学生と教育システムに結びつける活動も行っている。