Libranetからの別辞
Libranetは最古級のDebian系ディストリビューションである。1999年に最初のリリースを行って以来、容易なインストールと網羅的なパッケージで熱心なファンを増やしてきた。2005年4月にはバージョン3.0をリリースして気を吐いたが、その数週間後、創設者のJon Danzigを癌で失い、大幅な後退を余儀なくされた。Jonの子息でありパートナーだったTal Danzigが跡を継いだが、2005年11月に会社の「再編」――サポートとフォーラムは継続、開発と販売は中止、業務内容は再検討、2か月間のイスラエル旅行に出る――を発表するに至る。
この発表にもかかわらず、Libranetコミュニティには多くのメンバーが留まり、復活の日を待った。ビジネスからコミュニティ・プロジェクトへの移行を期待する意見さえも聞かれた。4月に実施された非公式アンケートでは、回答者の37％がLibranet 3.0をメイン・ディストリビューションとして使い続けるとし、それ以前のバージョンを使っている者も9％いた。26％は他のディストリビューションに乗り換えたが、新しいバージョンがリリースされれば復帰を検討すると回答している。Libranetが復活しても戻らないという16％の回答者でさえ、このアンケートに参加したという事実が今もこのコミュニティに関わり続けていることを示している。
Danzigの発表は「ご無沙汰しています。前回のご挨拶以来、私の人生は大きく変わりました」というコミュニティへの謝罪の言葉で始まり、「Libranetの中止」を決断したことを伝え、「今は、Libranetの運営ができるような状況にはありません」と説明、「この決断を理解し尊重してほしい」というコミュニティへの願いで締めくくっている。
Danzigは自身の人生がどう変わったのかについては説明せず、ブログを見るようにとしか書いていない。それによると、イスラエルの旅で一人の旅行者に出会ったことは確かだ。そして、カナダのバンクーバーからその女性のいるエドモントンに移って、今はプログラマーの職を探しているという。
Danzigは、長い沈黙を今になって破った理由についても説明していない。しかし、Daniel de Kokが書いた発表数日前の投稿に触発されたのかもしれない。de KokはLibranetの前従業員で、Libranetのフォーラムのモデレーターを務めていたが、この投稿で、Danzigに問い合わせても応答がないことを理由の一つに挙げてモデレータを辞任した。
Danzigは、当分の間 Libranetフォーラムを維持することを約束している。しかし、同時に、モデレーターの不在とサーバーの運営コストの問題も表明している。
フォーラム・メンバーの中には、この発表に怒りを表す者もいた。その一人は、Libranetの今回の不始末は「プロプライエタリ（フリーではない）ソフトウェアには決して頼ってはならないという教訓になった」と書いている。しかし、大多数の反応は同情的かつ懐旧的なもので、多くはLibranetを「自分の知る限り最良のディストリビューション」「史上最良のGNU/Linuxディストリビューション」と表現している。Debianはインストールが難しいと言われていた頃について触れる人たちもあり、その一人は「初めてインストールできたLinuxディストリビューション」がLibranetだったと言う。憤怒の意見もわずかにあったものの、大部分はLibranetコミュニティの親しみやすさと親切さを讃えるものである。
より実用的な点を指摘する意見もあった。「Which distro is most like Libranet?」と題するスレッドは、意見の交換が数か月も続き、Debian QuestionsにLibranetセクションが設置された。元のフォーラムを維持できるよう献金するからと送金先を尋ねるもの、Libranetのインストーラー兼コントロール・センターのようなAdminmenuと、できればLibranet 3.0の全コードベースをリリースするよう求める意見もいくつかあった。
こうした反応に対して、これまでのところDanzigは一切答えていない。Libranetホームページには、6か月前のまま、ディストリビューションの再編を告げるメッセージが掲載されているだけだ。
かなり前から予期されていた出来事ではある。しかし、かつてフリーソフト・メディアに普及率の高さを称揚されたディストリビューションの静かな終焉だった。
Bruce Byfieldは、研修コースの開発者でありインストラクター。コンピュータ・ジャーナリストでもあり、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalの常連。
NewsForge.com 原文
