Novell、「SUSE Linux Enterprise 10」のプレビュー版を公開

 米Novellは6月27日、「SUSE Linux Enterprise 10」のプレビュー版を公開したと発表した。同社のWebサイトからダウンロードできる。

 同ソフトウェアはほぼ完成版に近いプレリリース版で、NovellのLinuxマーケティング・ディレクター、ジャスティン・スタインマン氏は声明の中で、「Linux(ディストリビューション)がどのように改善されたかを、だれもが簡単に体験できるようにした。試した人のほとんどは、数週間後にリリースされる完成版を採用したいと思うはずだ」と述べている。

 プレリリース版には、オフィス・ソフトウェア「OpenOffice.org 2.0」、Webブラウザ「Firefox 1.504」、Exchange互換メール・クライアント「Evolution 2.6」、メッセージング・クライアント「GAIM 1.5」、デスクトップ検索ソフトウェア「Beagle」など、多数の多数のエンタープライズ・デスクトップ・コンポーネントがプリインストールされている。

 Windows Vistaと同じように、GUIの改良に重点が置かれており、3D仮想デスクトップ、ウインドウの透明度調節などの機能を備えている。デフォルトでは、「GNOME 2.12」デスクトップ環境をOpenGLベースのX Server「Xgl」、コンポジット/ウィンドウ・マネージャ「Compiz」とともに使用するが、オプションで「KDE 3.5」デスクトップ環境も選択できる。ちなみに、KDEのサポートを中止するという以前の計画は、ユーザーに不評だったため撤回された。

 サーバ・エディションの大きな特徴は、「Xen 3.0」ハイパーバイザを統合していること。Xenは注目を集めているオープンソースのシステム仮想化ソフトウェアで、インテルのVirtualization Technology(VT)ハードウェアをサポートしている。

 今回のプレビュー版(CDイメージとして配布されている)はx86およびx86-64アーキテクチャしかサポートしていないが、完成版ではそれ以外のプラットフォームもいくつかサポートするという。デスクトップ・エディションは約50ドルで販売され、サーバ・エディションには各種のサブスクリプション・プランが用意されている。

 なお、Novellは、SUSE Linux Enterprise 10のコードを6月中にフィックスし、7月中旬に完成版を顧客へ出荷する予定としている。

 Novellは米国ユタ州で3月後半に開催した「BrainShare Global 2006」で、サーバ・エディション「SUSE Linux Enterprise Server(SLES) 10」とデスクトップ・エディション「SUSE Linux Enterprise Desktop(SLED) 10」のベータ版の配布を開始した。その時点で同社は、SUSE Linux Enterprise 10の完成版リリースは今夏の予定だと表明していた。現在、SUSE Linux Enterpriseのサイトには、SUSE Linux Enterprise 10の完成版は「2006年第3四半期」にリリース予定と記されている。

 ちなみに、SUSE Linux Enterprise 10はコミュニティ・プログラム(openSUSEプロジェクト)で開発されたディストリビューション「OpenSUSE 10.1」をベースにしているが、Novellの社内メモによると、OpenSUSEで初めて導入されたパッケージ管理システムにかかわる問題などが、このエンタープライズ・エディションのリリース計画を遅らせてきた原因のようだ。

 OpenSuse 10.1では、旧SuSE Linuxの「YaST2」と旧Ximanの「Ximian Red Carpet」の機能要素を組み合わせようとして、オープンソースのRPMベースの新しいプログラム・パッケージ管理システムが採用された。しかし、このシステムが問題を引き起こす原因になってきた。それは、Novellがほぼ同時期に買収したSuSE LinuxとXimianの機能要素を結合しようとするその他の試みのいくつかと似た状況である。

 これまでに何人かの旧SuSE Linuxの幹部や技術者がNovellを去った理由の一端は、買収したこれらの2社の文化の間の摩擦にあると見られている。例えば、GNOMEを支持してKDEを外すという決定(不評で結局取りやめられた)は、Ximianの技術がGNOMEベースだったことに起因していると業界観測筋は指摘している。

 アナリストによると、NovellがLinuxに支えられた大手オープンソース・ソフトウェア会社に生まれ変わるという構想はまだ実現されておらず、Linuxビジネスの業績が振るわないことがCEOジャック・メスマン氏の解任に同社取締役会が踏み切る一因となったという。先週、同氏に代わってロナルド・ホブスピアン氏がCEOに就任した。

(マシュー・ブールスマ/Techworld オンライン英国版)

米Novell
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提供:Computerworld.jp