GNU/Linuxの放棄がCorelの収益回復に役立つ

7年間にわたる財政的困難と再建を経て、Corel Corp.では2006年の第1および第2四半期の業績と株式公開の再開が予定どおり順調に行っているようだ。Corelでソフトウェア開発担当副社長を務めるGraham Brownによれば、この改革の最初のステップの1つは、GNU/Linux用の同社の製品、WordPerfect for Linux、Corel Linuxを放棄したことだ。

CorelはGNU/Linuxポートを提供する最初の有力なソフトウェア会社の1つだった。このオペレーティングシステム用のWordPerfectワードプロセッサの初期のバージョンは1995年と1997年にリリースされた。その後、2000年の初めに完全なWordPerfect OfficeスイートのWineベース・バージョンがリリースされた。1999年にはCorel Linuxもリリースされた。これはKDEデスクトップに基づくDebianベースのディストリビューションだが、ファイル・マネージャなどプロプラエタリな変更がいくつかある。

Corelは1999年に60ドルの株価をつけ、しばらくの間、Officeスイート市場でMicrosoftと張り合っているように見えた。しかし、1年後には悪戦苦闘していたのだ。創設者のMichael Cowplandは、彼の辞任が同社の財政的不幸と株価の急落につながったとの憶測の渦の中にいた。2003年の10月までに、CorelはMicrosoftの脅威ではなくなっていた。それどころか、Microsoftが1億3500万ドルを投資した.Net開発を中心とするMicrosoftとの戦略的関係に入っていたのである。

2000年から2003年にかけてトップと役員の大幅な入れ替えを行い、Corelは引き続き改革努力に努めていた。2001年にはCorel Linuxコードの権利をXandrosにライセンスし、Xandrosはこれを独自のディストリビューションの基礎として使用した。Corelは2002年にWordPerfect Officeの次のバージョンをリリースしたとき、GNU/Linuxバージョンのサポートを打ち切った。2003年にはVector Capitalに買収され、Windows市場に専念する私会社になった。

前出のBrownは、Corel Linuxから手を引くという決定を次のように称している。「Corelが成功するための戦略であり、我々のビジネスの方向転換に向けての初期の一歩だ。Corelの重心をオペレーティングシステムから移し、アプリケーション製品にもっと集中すべきだと気付いた。これでCorel Linuxの顧客とユーザに提供できるサービスのレベルに影響が出ることは間違いないだろう」 Corelは収益性を回復すべく奮闘している会社として、WordPerfect for Linuxをサポートし続けることでGNU/Linux市場を開拓しようという気もないようだ。

CorelはGNU/Linuxコードを、オペレーティングシステムの商品化に力を入れている会社にライセンスすることで、コードの継続的な開発を保証したのであり、Corelが将来GNU/Linux製品を提供すると決定すれば、これは大いに価値のあることだろう。XandrosのCEOを務めるAndreas Typaldosはそう見ている。彼は言う。「我々2社の市場、消費者、ユーザ、そして株主にとって、この提携はどちらか1社が単独でやるよりも良い結果をもたらすだろう」

Xandrosは非上場企業なので、Typaldosは詳細な財務情報を提供してくれなかった。とはいえ、彼はXandrosの収入が創設以来着実に伸びていて、毎年400%の成長を示していると語った。

Typaldosは言う。「CorelはXandrosにかなり資本参加しており、Xandrosの予想される成功から利益を得るだろう」

CorelのBrownによると、GNU/Linux製品の開発を停止した後、Corelは一連の企業買収を通じて「戦略的に重要な市場」に力を注ぐことで、自社の再編を続けた。ただし、それらの買収がすべて成功したわけではない。CorelはSoftQuad(XMLエディタXMetaLの開発元)を買収したが、そのソフトウェアの権利を2004年にBlast Radiusに売却した。Paint Shop Proを製造元であるJASCや、ソフトウェア圧縮アプリケーションを販売しているWinZipも買収し、それらのソフトウェアをCorelの製品ラインにうまく統合した。

CorelはGNU/Linuxプラットフォームに関心を持ち続けている。Xandrosとの関係に加え、WordPerfect for Linuxワードプロセッサのアップデート・バージョンを2004年に約半年にわたって自社のWebサイトで販売した。Brownによると、この措置はLinuxのオフィス生産性市場の状態を探るためだった。

「このコンセプト(製品)の証拠は今はもうない」と彼は付け加えた。「現時点で、我々の中核的な消費者とスモールビジネスの顧客からの需要は少なく、もはや我々がLinux関連製品を開発することを正当化できない」 この製品はもはやCorelから入手することもサポートを受けることもできないが、いくつかのダウンロード・サイトから入手できる。

それでも、BrownはCorelがGNU/Linuxに復帰する可能性をまったく否定したわけではない――WordPerfect Officeだけでなく、Paint Shop Proなどの最近数年間の買収についてさえも。「Linuxは我々がしばらく評価してきたものであり、これからも間違いなく検討し続けるものだ」とBrownは言った。

Bruce Byfieldはコース・デザイナ兼インストラクタであり、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータ・ジャーナリストでもある。

NewsForge.com 原文