Microsoft、OfficeスイートでのODFサポートをついに決断

 米Microsoftは7月6日、現在普及しつつある「OpenDocument Format(ODF)」をOfficeアプリケーションで扱えるようにすることを決めた。アナリストらは、ODFをサポートしないと顧客を失う可能性があることに遅ればせながら気がづいたのではないかと指摘している。ODFはSun Microsystemsなどが普及を推進している標準文書フォーマットだ。

 Microsoftは、Officeソフトウェア・スイートに対応するアドイン製品を開発しているベンダー3社を支援し、Word、Excel、PowerPointにドロップダウン・メニューを組み込み、各種アイテムをODF形式で保存できるようにする方針を明らかにした。

 アドイン製品用のコードは、BSD(Berkeley Software Distribution)ライセンスに基づいて、オープンソース開発者向けのWebサイト「Sourceforge.net」を通じてリリースされる予定だ。

 Microsoftは、同プロジェクトへの投資額を明らかにしていない。ODFへの変換機能を開発、テストしているベンダーは、フランスのクレバー・エージ、インドのアズテック・ソフトウェア&テクノロジー・サービセズ、ドイツのディアロジカの3社だ。

 オーブムでオープンソース関係の調査を担当している上級アナリスト、ローレント・ラカル氏は、「Microsoftは、さんざん難色を示したあげくに、ODFをサポートせざるを得なくなった。しかし、現実的には他の選択肢はなく、起こるべくして起こったことだ」と指摘している。

 ODFは、オープンソース・アプリケーションのOpenOfficeや、その市販バージョンであるStarOfficeなどで使われている。

 OpenOfficeの普及率はまだあまり高くないものの、各国政府機関の間では、同フォーマットに対する関心が高まっている。ベルギーとデンマークは、ODFの試験的な導入を計画しており、米国マサチューセッツ州も来年1月1日からODFを使用する方針だ。

 Microsoftも、ODFのサポートを決断するにあたっては、政府機関からの要望が一定の役割を果たしたことを認めている。

 同社の標準/相互運用担当ゼネラル・マネジャー、トム・ロバートソン氏は、ファイル・フォーマットを巡る争いにより、ユーザーが自分のソフトを最大限活用するにはどうすればよいのか判断する際の意思決定に「暗雲が垂れ込めていた」という。

 同社は今回、Sourceforge.netに変換機能のソースコードをポストすることにした。Word 2007に対応するOpenDocument(ODF)変換機能の最初のバージョンは、7月5日にポストされている。

 今回の決定は、Microsoftの広報活動にもプラスになると見られる。同社に対するイメージは、5年前、CEOのスティーブ・バルマー氏がオープンソースLinuxを「癌」と決めつけたことでかなり傷ついており、これまでこの傷を修復しようとしてきた経緯がある。

 フォレスター・リサーチの主任コンサルタント、ディエゴ・ロジュディス氏は、「だからといって、必ずしも同社がオープンソースを支持しているわけではなく、今回決定した方針を自社の製品に反映させる戦略と受け取ることもできない」と指摘する。

 マーケティングの観点から見れば、この決定がMicrosoftに対するイメージをわずかながら改善するだけでなく、Microsoftとオープンソース・ソフトウェア陣営の両方に利益がもたらされ、どちらか一方が犠牲になることもない、とロジェディス氏は評価している。

 しかし、その一方でMicrosoftは、Open XML(Extensible Markup Language)のほうがODFよりも優れていることを強調し続けている。Open XMLは、Microsoftが開発した仕様であり、現在ドキュメント標準としての採用に向け検討作業が行われている。また、今後リリースされるOffice 2007のデフォルト・ファイル・フォーマットになっている。

 Microsoftの相互運用/XMLアーキテクチャ担当ゼネラル・マネジャー、ジーン・パオリ氏は、インタビューの中で、Open XMLには4,000ページに及ぶ機能説明書がついているが、ODFは700ページにすぎないと指摘した。「Open XMLこそ、機能的に完全なフォーマットだと確信している」(同氏)

 これに対し、オーブムのラカル氏は、ODFが開発途上の技術であるという点を指摘し、この比較に異議を唱えている。説明書の長さで2つのフォーマットを比較することはできないというのが同氏の立場だ。

 Microsoftによると、Officeの旧バージョンに対しては、Open XMLのアップグレードとともに変換機能も提供されるという。今年12月には、Word変換機能の最終出荷版がリリースされ、来年にはExcelとPowerPointに対応する変換機能もリリースされるという。

(ジェレミー・カーク/IDG News Service ロンドン支局)

米Microsoft
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提供:Computerworld.jp