Linuxはなぜ主流になれないか

UbuntuやFedoraなど、最近のLinuxディストリビューションはインストールもメンテナンスも使用も容易になっているのに、Linuxがそれほど普及していないのはなぜだろうと不思議に思う人もいるだろう。私は次のように考える。

まずはホーム・コンピュータだ。家庭でコンピュータを使用する人たちは、一般に職場で使っているOSと互換性のあるものを選ぼうとする。Linuxが職場にないので、家庭にもない。また、Linuxでは市販の多くのゲームを簡単に使用することができない。市販されているPCゲームの圧倒的多数はWindows専用である。他のOS向けにもリリースされているPCゲームは、たいていWindowsとMacIntoshを対象にしている。Linux向けにリリースされている市販のPCゲームはごく僅かしかない。

しかし、ホーム・ユーザがあまりLinuxを使わない第一の理由は、職場でLinuxを使っていないことである。つまり、職場環境が問題の根本原因である。私がネットワーク管理者としてデスクトップ上でLinuxを試してみたことがない理由はただ1つ、Microsoft Exchangeがあるからだ。背広族はExchangeを好む。彼らはExchangeを真似たオープンソースのグループウェアが好きでない。私の給料支払小切手にサインするのは背広族なので、私も使っている。実際、私の現在の勤め先では親組織によってExchangeが押し付けられている。したがって、私には選択の自由すらない。

私には読者が何を考えているかわかる。EvolutionがExchangeに対応しているということだろう。ところが、実際はそうじゃない。EvolutionはExchangeのOutlook Web Access機能を通じてExchangeに接続する。そのため、次のような結果になる。

  • EvolutionはOutlookよりかなり遅い。
  • Evolutionでは、一般のユーザにも簡単にわかるようなやり方でカレンダー共有に参加したりパブリックフォルダを見たりすることができない。
  • Evolutionの機能は必然的にOutlook Web Accessの機能に限定される。しかも、Outlook Web Accessの一部の機能はInternet Explorerクライアントでしか使用できないので、余計に不便である。

もちろん、WineはOutlook(Wine上で動作すべき唯一の最も有用なプログラム)を実行する能力をずっと提供できずにいる。確かにOutlook 97は動作する。しかし、だれもOutlook 97を実行したいとは思わないだろう。もう一昔も前の製品じゃないか。

したがって私の考えでは、Evolutionやその他の電子メール・クライアントがOutlook Web Accessではなく本当のMAPI接続を通じて完全なExchange互換性を提供し、Outlookの現在の(または次の)バージョンの機能をすべて使用できるようになるまで、Linuxは決して主流にならないだろう。

この問題はもっと注目されるべきではないだろうか。Linuxデスクトップからの完全なExchange互換性が実現されれば、もっと多くの組織が――したがってホーム・ユーザも――Linuxを採用することになるはずだ。ホーム・ユーザがLinuxを使わないのは、MicrosoftがOEMと小売業者にWindowsコンピュータだけを売るように強制しているからだと主張する人たちがいるが、そういう人たちには次のように言いたい。OEMと小売業者がWindows PCを売るのは、前述した理由で大多数の消費者がLinuxコンピュータを買わないからである。

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