Microsoftのメッセージング・サーバを狙う「Exchangeキラー」

数年前、企業向けのメッセージングおよびコラボレーション・サーバ市場においてMicrosoft ExchangeやLotus Notesに挑んだオープンソースベースの小さな会社が「巨人ゴリアテに挑むダビデに注目」と題した記事で取り上げられていた。今やオープンソースのメッセージングおよびコラボレーション・ソフトウェアを供給する業者は、ITビジネスの世界では珍しくない。また、OpenXchangeのマーケティング戦略担当副社長Dan Kusnetzky氏によると、同社の製品は着実に受け入れられつつあり、その傾向はGNU/Linuxとオープンソースにこだわる支持者に限られたものではないという。

確かに、OpenXchangeが2006 Boston LinuxWorldカンファレンスでIBMの巨大ブースの一画に出展した際、同社の展示に足を止めて言葉を交わしたのはわずか11人だった、とKusnetzky氏は振り返っている。しかし、2006年7月のNational Educational Computing Conferenceでは約400人が同社のブースを訪れ、少なくともその1割以上はすぐに商談に結びつきそうな顧客だったという。

かつてはその存在が特別視されていたLinuxも「単なる興味本位のものから通常のインフラストラクチャの一部」へと進化を遂げた、とKusnetzky氏は指摘している。今では、オープンソースのメッセージングおよびコラボレーション・ソフトウェア製品も同じ進化の道をたどっている、と彼は確信する。OpenXchangeとその競合であるScalixZimbraなどの製品はもはや一握りのオープンソース信者の関心の対象ではなく、「主流派の」独立系ソフトウェアベンダ(ISV)、コンサルタント、何百という再販業者(VAR)との提携を通じて広い範囲に配布されつつある (OpenXchangeだけでも650ものVARとの関係を築いているという)。

ここに、Kusnetzky氏が提供してくれた興味深いリストがある。人々が挙げたOpenXchangeを購入しない理由の数々だ。おそらくOpenXchangeの競合もまた似たような話を聞いているだろう。

  1. 企業によってはすでにMicrosoftのExchangeに慣れ切ってしまったところもある。たとえ現行のソフトウェアが完全に満足できるものではなくても、多くの場合、企業の意志決定者にとっては「すでによく知っているものを使う」ことが最もたやすいのだとKusnetzky氏は考えている。
  2. 小さな業者との取引に不安を感じている組織もある。10年も事業を続けてきた実績があり、60もの国々に顧客を持つOpenXchangeでさえ、規模ではMicrosoftやIBMにはまだまだ及ばない。またExchangeの代替製品を扱うベンダの多くはOpenXchangeよりも小さな会社だ。
  3. 企業はコンサルタントを雇っているが、Kusnetzky氏によれば、コンサルタントは「NovellのGroupwiseや、Microsoft、Lotusなど、とにかく自分が知っているものしか提案しない」という。
  4. 潜在的な顧客がすでに所有しているテクノロジに基づいてより細かい要求を出してくることがある。たとえば、OpenXchangeでは、データベースはPostgreSQL、JavaはTomcatサーバしか正式にサポートしていない。ただし、自由にダウンロード可能なオープンソースのOpenXchangeは好きなように利用できる。たとえば、PostgreSQLの代わりにMySQL、またはTomcatの代わりにJBossを使いたければ、コミュニティのサポートに頼ることができるのだが、商用のサポートが必要だと考えている企業はOpenXchangeが提供しているオプションを活かすことができない。考えられるすべてのオプションではなく、定番のオプションしかサポートしないのはOpenXchangeの意図的な選択である。「ときには、このことが原因で顧客が競合製品に流れてしまうことがある」とKusnetzky氏は話している。
  5. Kusnetzky氏が何度も聞いたという直観的には理解しがたい不満が、OpenXchangeには「機能が多すぎる」というものだ。確かにそうかもしれないが、顧客にとって必要のない機能は無効にしたり、指定したユーザだけに見えるように設定することもできる。だが、どうやらITの領域には、カスタマイズが可能な広い範囲の機能から必要なものを選択するよりも、自分にとって必要な(と考えている)ものだけがデフォルトで提供されることを好む人々がいるようだ。
さらに、熱心な問い合わせはしても購入はせず、その理由を決して言おうとしない企業も存在する。こうした見積りだけを求めてくる企業は、OpenXchangeやその他の小さな業者から聞き出した価格をMicrosoftとの取引を有利に運ぶための材料として利用するのだろう、というのがKusnetzky氏と私が一緒になって推測した結果だ。ただし、それを示すデータは一切ないので、事実としてではなく「2人の話し合い」から生じた単なる憶測と捉えていただきたい。

一般に、オープンソースのコラボレーション・ソフトウェアを扱うほかの業者は(ちょうどOpenXchangeがそうした業者の持っていない機能を備えているように)OpenXchangeにはない機能を提供しているかもしれないが、Kusnetzky氏はそうした業者との直接対決をあまり考えてはおらず、むしろ「例によってMicrosoftやIBMの製品から足を洗いたいと考えている ― またはそもそもコラボレーション・ソリューションを持たない」企業からの問い合わせに目を向けているきらいがある。

今なお電子メールシステムを組織内に持っていない企業があると聞いて私は少し驚いたのだが、そうした企業は少なくないとKusnetzky氏は説明してくれた。その多くは、HotmailやAOL、またはYahoo!といった個人用の電子メールアドレスを利用していた創立者が1人か2人で事業を始め、やがて電子メールを集中管理に移行させざるを得なくなり、カレンダーや文書の共有をはじめとするコラボレーション機能について検討し始めるところまで発展した中小企業だという。

こうした成長過程にある企業が、メッセージングおよびコラボレーション・サーバ市場の重要な一翼を担っていることは間違いない。それに、これらの企業はまだMicrosoft Exchangeやその他の古参の独占的製品に縛られていないため、低コストのメッセージングおよびコラボレーション・ソフトウェア ― その多くはオープンソースである ― にとっては非常に有望な見込み客なのだ。

Kusnetzky氏によると、OpenXchangeの売り上げは、既存の独占的コラボレーション・ソフトウェアの置き換え、ソフトウェアまたはOpenXchangeのパートナーSystems Solutionsが販売しているようなシステム構築の形でメッセージングおよびコラボレーション・サーバを初めて導入する中小企業からの引き合い、の双方において「安定して」伸びているそうだ。

しかし、OpenXchangeや同社のどの競合業者にとっても売り込みが非常に難しい顧客層があるという。それは、自分たちの好みに合ったFOSSの電子メールソリューション、自分たちのニーズを満たすカレンダーユーティリティ、また場合によっては自分たちに適した共有の住所録プログラムを見つけ出し、自ら選び出したソリューションどうしを「組み合わせる」ためのスクリプトを独自に作成している企業である。こうした企業についてKusnetzky氏は次のように述べている。「多くの場合、彼らは自分たちが手にしているシステムに満足している。自分たちですべてのスクリプトを書き、すべてのものを思った通りに機能させているからだ」

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