IBM、新たなオープンソース戦略を明らかに──LinuxWorld San Francisco 2006リポート

 米IBMは、今後オープンソース・コミュニティの関心が向かうと見られている8つの分野にフォーカスした新たなオープンソース戦略を展開するもようだ。

 IBMは8月15日、サンフランシスコで開催中の「LinuxWorld Conference & Expo San Francisco 2006」(8月14日〜17日)で、クライアントサイド・ミドルウェア、開発ツール、Webアプリケーション・サーバ、データ・サーバ、システム管理、ハードウェア、グリッド・コンピューティング、IBMリサーチ/コンサルティングという、8つの分野でオープンソース関連の取り組みを推進していくという新たな戦略を明らかにした。

 同社は、主力ハードウェア用のOSとして初めてLinuxをサポートしたハードウェア・ベンダーの1社であり、他の分野でも同様のリーダーシップを発揮したいとの意向を示している。

 米国エバンズ・データのアナリスト、ジョン・アンドリューズ氏は、「“Linuxの先を目指す”という戦略は、オープンソースの世界で事業を展開するベンダーにとってきわめて重要なポイントとなる。IBMは、Linuxを確固たる地位に押し上げることに成功した。同社は今後、オープンソース運動全体をLinuxのレベルまで引き上げることにも貢献するだろう」と述べている。

 IBMの新たなオープンソース戦略は、システムの維持だけではなく、ネットワークの改善にも予算を投じたいと考えている企業のITマネジャーにとって有益だ。アンドリューズ氏は、「メンテナンス予算を節減することで、それを技術革新関係に回すことができる」と指摘する。

 IBMが開発ツール分野において展開するオープンソース戦略では、開発プラットフォーム「Eclipse」の“てこ入れ”が行われる計画だ。Eclipseは数年前に同社が開始したプロジェクトであり、その後独立した事業体として分社化されている。また、IBMが無償で提供しているデータベース「DB2 Express-C」は、オープンソース・データ・サーバ事業の基盤になる見通しだ。

 IBMの拡大戦略のかぎとなる他のオープンソース・プロジェクトとしては、クロスプラットフォーム・アプリケーションのホスティングに対応するEclipse 3.0の「Rich Client Platform(RCP)」、オープンソースJavaアプリケーション・サーバ・プロジェクトの「Geronimo」、オープンソース・ストレージ・プロジェクトの「Aperi」、ハードウェア・プロジェクトの「Power.org」および「Blade.org」、グリッド・コンピューティングのための「Open Grid Services Architecture」と「Globus Alliance」などが挙げられる。

 IBMのLinux/オープンソース担当バイスプレジデント、スコット・ハンディ氏は声明で、新たにオープンソース・ソフトウェアのサポートに乗り出そうとしているIBMの方針を「大胆かつ積極的」と表現している。同氏は、ソフトウェアとハードウェア開発のさまざまな分野においてオープンソース・ソフトウェアをサポートすることで、自社のビジネスを永続的に変化させることがIBMのねらいと説明している。

 また、同氏は加えて、「オープン標準を拡張することで、ユーザーはコスト管理以外の課題にも対応できるようになる。特にマルチベンダー環境の管理を推進しているユーザーは、すべてのシステム要素を連携させる必要に迫られているが、オープン標準を採用すれば、管理業務が簡素化されるほか、同じコードを共有できるようになり、相互運用性も高まる」と語っている。

 この日IBMは、今後の重点目標となる8つの分野に加え、他のオープンソース戦略構想も明らかにした。その中には、64ビットのPOWERチップ・アーキテクチャを拡張した「Cell Broadband Engine(Cell BE)」プロセッサをLinuxカーネルに統合する計画も含まれていた。

 また、IBMは米Red Hatと提携し、次期「Red Hat Enterprise Linux 5」のセキュリティ強化版を提供する予定だ。さらにIBMでは現在、システム管理、セキュリティ、POWERアーキテクチャなどの分野に重点を置いた新たなオープンソース仮想化ソフトウェアの開発が進められているという。

(ロバート・マリンズ/IDG News Service サンフランシスコ支局)

提供:Computerworld.jp