LinuxWorldの最終日と総括

今年もサンフランシスコでLinuxWorld Conference & Expo(LWCE)が開催され、市内のモスコーンセンターには10,000人を超える参加者と175の出展団体が集まった。最終日17日のスケジュールは前日までよりも短く、カーネル開発者Greg Kroah-Hartman氏らによるいくつかの講演と展示が行われた。前日のレポートよりビデオ映像を増やして最終レポートをお届けしよう。

今年、モスコーンセンターのフロアを歩いた方は、例年よりイベントの規模が大きくなったという印象を受けたかもしれない。確かに今回のLinuxWorldはいつもとは別の建物で行われたが、実際にはそのフロア面積は昨年の会場より狭くなっている。IDGの副社長Melinda Kendall氏によると、参加者数に伸びが見られないので今年はLinuxコミュニティがRed Hatへの参加要請さえ行わずに独自に開催したのだという。

閉幕後の今でも、今回のLinuxWorldで最大のニュースはRed Hatが不参加に終わったことだったようだ。最終日もやはり、たくさんの人々がこの話題を口にし、Red Hatが姿を見せなかったことに若干の苛立ちを感じている参加者も多数いた。

Linuxのトラブルシューティング

木曜の午前中には、Splunkの製品マネジメント担当副社長Christina Noren氏が「Linuxおよびオープンソースソフトウェアのトラブルシューティング」という発表を行った。当初はSplunkの「最高責任Splunker」Michael Baum氏が演壇に立つ予定だったが、彼の都合がつかなくなったため、Noren氏が代理を務める形となった。

この発表では(優秀な管理者が必ず利用する)豊富なログ出力機能によるオープンソースソフトウェアの問題解決について有益な情報や助言が提供されたが、Open Source LabのCorey Shields氏によるSplunkの宣伝やデモなど売り込みの要素も強かった。

Noren氏は出席者に対して次のようなすばらしい助言を行っていた。まずは問題が発生する前に、必要なログを確実に残すようにすることで事前に問題解決に備えておくこと。また、ログ出力は容易に参照できるように集中化し、ユーザが自分で問題を調査できるようにユーザによるログへのアクセスはできるだけ許すこと。さらに、測定値の基準を得るために失敗時だけでなく成功時のログ記録も取っておくこと、というものだった。内容がSplunkに偏り過ぎることなく、また、問題を発見した後に実際に解決するための助言もあれば、もっとすばらしい発表になっていただろう。

Quiltを使ったカーネルのバージョン管理

最後のセッションでは、Quilt、Ketchup、Gitを使ったカーネルのバージョン管理について、Kroah-Hartman氏が発表を行った。内容としては、QuiltとGitは他のプロジェクトにとっても実に便利なツールであり、Ketchupもまた管理者の役に立つというものだった。そのため、この発表はカーネル開発者でない我々にとって価値のあるものだった。

Ketchupは、tarballやパッチを手作業でいじることなく、Kernel.orgのミラーシステムから直接、カーネルのソースツリーを取得するためのツールであり、しかもそのすべてをどのようにしてか自動で行う。このツールは、カーネルのコードを書いてテストする開発者だけでなく、自らカーネルを構築する管理者にとっても非常に役に立つ。

続いてKroah-Hartman氏は、パッチどうしの差分をとり、そうしたパッチを他のカーネル開発者に電子メールで送付するQuiltのデモを行った。Quiltはカーネル開発のために作成されたものだが、他のプロジェクトにも非常に適していると彼は述べている。

Quiltの後にKroah-Hartman氏は話題をGitに移し、「世の中でも最もお買い得なツールの1つ」と述べた。彼によると、Gitは処理速度の点で「これまでで最高の」分散バージョン管理システムだという。Kroah-Hartman氏はカーネル開発者が自分たちのツリーを管理するためにどのようにGitを使っているかを説明し、何か問題が起こったときにパッチの送付や承認を誰がしたのかを知ることができる、ソースコードの変更箇所やパッチの適用履歴を示すGit用のGUIツールの1つを紹介した。Gitもまたカーネルだけでなく各種プロジェクトにとっても有益であり、どんな開発プロジェクトでも利用できる。

厄介な「カンファレンス最後のセッション」はこうしてKroah-Hartman氏の講演で埋められたが、えてして最終セッションというのは相当な数の参加者がすでに帰路についているか、友人や同僚と一杯ひっかけている最中に行われるものだ。Kroah-Hartman氏の発表を聞きに姿を見せていたのは20名ほどだったのだが、彼の話が終わってからは主にカーネル開発について活気あふれる質疑応答が行われた。

ある出席者がReiser 4の状況について尋ねると、Reiser関係者はパッチを誰に送付すべきかやコーディングスタイルなど、パッチの送付についての「ドキュメントやマニュアルを読んでいない」とKroah-Hartman氏は語った。政治的な駆け引きやExt4への偏重に対する非難など物議をかもす話題だったが、Kroah-Hartman氏は、Reiserの開発者は新しいコードをカーネルに適用するための従来のルールに従っていなかっただけだ、と述べた。Reiserの開発者は今ではこうした手続きに従おうとしており、おそらく近いうちにReiser 4はLinuxカーネルに採り入れられるだろう、とも彼は話していた。

またこのセッションでも例の「Linus氏がバスに轢かれたらどうなるか」という質問が出た。具体的に後継者の名前は挙がっていないが、たとえLinus氏が関与しなくなっても、カーネル開発が継続可能なほどに開発体制は十分に健全だとKroah-Hartman氏は答えていた。

全体として、今回のLinuxWorldは少し盛り上がりには欠けたものの、まずまずの内容だった。今年の発表の質は若干落ちたように感じたが、木曜日のKroah-Hartman氏による発表は明らかにその例外だった。次のLinuxWorldは2007年2月14、15日にニューヨークで予定されている。

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今年のLWCEに関するこれまでの記事は次のとおり。

NewsForge.com 原文