OSS企業に流入するベンチャー・キャピタル、慎重な選別を

周知の通り、オープンソース・ビジネス・モデルは、今、ベンチャー・キャピタルの注目を浴びている。実際、数百万ドルの資金を獲得した企業は、最近だけでも、JBoss、SugarCRM、SourceLabs、Hyperic、Zenoss、Digiumなど、枚挙にいとまがない。しかし、たとえベンチャー投資家の目を引きたかったとしても、来た話しに直ちに飛びついてはいけない、と経験者・専門家は忠告している。

ソースコードは現在ほとんど商品と化しており、最早、プロプライエタリ製品がまとう「秘密という鎧」が製品価値を高めることはない。今は、オープンソース・コミュニティがソフトウェアを提供し、企業はサービスとサポートで収益を上げるという構図なのだ。IT調査会社IDCは、2008年までにLinuxサーバーの売り上げは28億ドルに達すると予測している。その市場にサポートを提供すれば企業を維持できるだけでなく、数百万ドル規模に成長させることも可能なのである。

DigiumのCEO、Mark Spencerは、ベンチャー・キャピタルはコミュニティに「大きな価値をもたらす」ことができると考えている。それもそのはず。Asteriskを開発するDigiumは、最近、初めてとなるベンチャー・キャピタルの調達で1380万ドルを集めているのだ。Spencerによると、投資会社を選定する際、かなり厳しく選別したという。「今すぐ必要な資金ではありませんし、今すぐ着手すべき計画もありませんでしたから。今回の募集の目的は、パートナーに当社が正当に経営されていることを確認してもらうことにあります。当社が目指す領域――中規模企業――で本当に主導権を握るために、当社がすべきことをしていると確認してもらうためなのです」

オープンソースのIT運用管理ソフトウェアを開発するZenossは、最近、480万ドルを調達した。ZenossのCEO、Bill Karpovichは、オープンソース・ソフトウェア方式は「メガトレンド」であり「誤解の余地のない現象」だという。そして、OSS企業が投資を引きつける理由の一つを、次のように説明する。「高品質のソフトウェアを作り、それを従来方式より遥かに低価格で配布できるからです。ユーザーから見れば、ソフトウェアの購入が柔軟で自律的なものになりました。ユーザーは(開発の)推進役にもなっています。最早、トップダウンの時代ではありません」

しかし、資金がオープンソースに流れてくるからといって、流れてきたものを何でも拾っていいということにはならない。ベンチャー投資家は投資先の企業に入り込むのが通例であり、オープンソースの意味合いを理解していなければ、投資先企業のビジネスモデルを歪めてしまう。

Spencerは、オープンソース企業はベンチャー・キャピタルを選別するべきだと忠告する。「ベンチャー・キャピタルを相手にするときは注意が必要です。いろいろなベンチャー・キャピタルがありますから」

Karpovichも同じ意見だ。「ベンチャー・キャピタルは注意深く選別すべきです。というのは、オープンソースを誤解していることが多いからです――オープンソースは複雑でわかりにくいですからね。投資家を見誤ると、非生産的な方向に押し流されてしまう恐れがあります。投資家はコミュニティと営利活動の均衡を理解していなければなりません。その点、当社のベンチャー・キャピタルはよく理解しており、資金の大半が非営利活動に使われることを承知しています。これも契約のうちなのです」

また、Spencerは次のように説明する。「企業の中には、プロプライエタリな価値を付加する土台としてオープンソースを見ているところがあります。黎明期のLinuxディストリビューションを思い出してください。CalderaはLinuxに付加した知的財産をすべてプロプライエタリにし、Red Hatは放棄しました。その結果、人々が選んだのはRed Hatでした。Calderaが選ばれなかったのは本当のオープンソースではなかったからです。Red Hatの目線で見ることのできるベンチャー・キャピタル――オープンソース企業は、付加価値あるいはオープンソースのドリブルウェア(頻繁にリリースやパッチが出るソフトウェア)としてだけプロプライエタリ・ソフトウェアを開発しているのではないということを理解しているベンチャー・キャピタルが必要なのです」

それでは、ベンチャー・キャピタルにとっての利点は何だろうか。Entiva Groupのリード・インダストリー・アナリストAlex Fletcherは次のように説明する。「企業では高品質のサービスとサポートの価値が認識されつつあります。製品にソースコードが含まれているということは今でも大きな価値がありますが、その価値を『現金化』するためには信頼できるサポートとサービスの仕組みが絶対的に必要であることがわかってきたのです」

こうしたオープンソース・ビジネス・モデルに対する姿勢の「本質的な変化」は、投資側だけでなくIT部門にも起きているという。「これまではオープンソース・ソフトウェアは自己責任で使う無償提供品であると理解されてきましたが、それが競争力に差を付ける重要なIT要因として見られるようになってきました。実際、この変化はソフトウェア提供のサービス化というさらに大きな流れの中にあります。これまでソフトウェア資産の調達コストはライセンス購入という形でしたが、それが加入方式のサービスとして計上されるようになりつつあります」

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