IBM、低消費電力「PowerPC」で組み込み市場の強化をねらう

 米IBMは10月3日、PowerPCプロセッサの新製品「PowerPC 750CL」と「PowerPC 970GX」を出荷した。この新しいPowerPCは消費電力が低減されており、同社は、車載用機器やプリンタ、通信機器といった組み込み市場における地位の強化をねらう。

 「PowerPC 750CL」と「PowerPC 970GX」は、90ナノメートル(nm)プロセスで製造されたシングルコアCPU。両製品とも、ゲート酸化膜の厚みを増してDC漏電を減らし、ACスイッチング電圧を下げているという。750CLは、32ビットのみの対応でクロック周波数は400MHzから1GHz。組み込み用途をターゲットとしている。970GXは32ビットと64ビットの両方をサポートし、クロック周波数は1.2GHzから2.5GHz。高帯域幅のデータ処理や高度な計算処理といった用途に適している。

 今回の新製品でIBMは、より広範な用途に対応することを目指していると、同社のテクノロジー・コラボレーション・ソリューション部門でパワー・アーキテクチャ・ソリューションズ担当ディレクターを務めるロン・マルチーノ氏は語った。現在、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation 3」、マイクロソフトの「Xbox 360」、任天堂の「Wii」といった3大ゲーム機器のすべてが、IBM製のCPUを採用している。新製品の投入により同社のCPUは、さらに広く利用されることになるかもしれない。

 CPUの低消費電力化というトレンドは、すでにノートPC、デスクトップPC、サーバといった市場に変化を促した。AMDは、Opteronが最近数カ月にわたりインテル製CPUを販売数で上回った理由として、低消費電力という点を挙げている。一方のインテルも、Core 2 Duoで実現した低消費電力化によってシェアを奪回すると意気込んでいる。

 今日、サーバが消費する電気やサーバ・ルームの空調設備に要する電気の料金が、サーバ本体よりも高額になるというケースもあるため、低消費電力化はCPUの必須要件だと、米国シリコン・インサイダーの主任アナリスト、ジム・ターリー氏は語る。同氏は、新しいPowerPCも、低消費電力化という流行に乗り遅れまいとする取り組みだと指摘し、「消費電力の低減は魅力的な特徴だが、今となっては画期的な進歩というわけではない」と評価を下す。

 また、IBMは、PowerPCのロードマップを発表した。そこで紹介された「CPC965」は、PowerPC 970シリーズと組み合わせて使うコンパニオン・チップで、入出力を効率化するなどの役割を担う。「460S」は、32ビットのコアを有し、さまざまなサイズのキャッシュと組み合わせることができる。「464FPH90」と「464H90」は、ASIC(特定用途向け集積回路)で、製造はIBM、またはシンガポールのチャータード・セミコンダクター、および韓国のサムスン電子が担当するという。464H90は2006年内、他の3つは2007年第1四半期の出荷が予定されている。

(ベン・エイムズ/IDG News Serviceボストン支局)

提供:Computerworld.jp