Ohio LinuxFest 2006、大盛況のうちに閉幕

9月30日土曜日、Ohio LinuxFest 2006は、1,000人余の参加者を集めて開催された。会場は、オハイオ州コロンバスのダウンタウンにあるGreater Columbus Convention Center(GCCC)。登壇者の顔ぶれは豪華だ――「狂犬」Jon Hall、Chris DiBona、Jeff Waugh。そして、コロンバス動物園のペンギンたち。

開催は土曜日だったが、事実上前日には始まっていた。金曜日の朝には、Linux Professional Institute(LPI)がLinuxFest参加者のために割安の受検料でLPI Certification(LPIC)試験を実施し、昼間はボランティアたちが前夜祭の準備、夜には早めに着いた参加者のための前夜祭がHoliday Innで開かれたのだから。

Jeff Waughのはずだが?

朝の基調講演にはJeff Waughが登壇する予定だった。しかし、Waughの乗った飛行機が遅れ、カンファレンスの開幕時刻になってもWaughはまだ移動中。Waughから連絡を受けた講演担当グループの責任者Richard ZackはGoogleのオープンソース・プログラム・マネージャーChris DiBonaを探しだし、代役を頼んだ。

DiBonaは1時半からGoogleにおけるオープンソースの活用について講演する予定だったが、基調講演として急遽内容を仕立て直したのは――そしてWaughをふんだんにダシに使ったのも――見事だった。

LOPSAのボード・メンバーStephen Potter – 写真をクリックするとFlash形式のビデオが、ここをクリックするとOgg形式のビデオが見られます

基調講演の中で、DiBonaはGoogleから見たオープンソースとLinuxの重要性について、そしてGoogleからオープンソースへのお返しについて語った。たとえば、Googleはコードを実行する権利に対してライセンス料を支払っていないが、それは経費節減というだけでなく、運用しているコンピューターの台数をいちいち報告する必要がないということでもある。したがって、Googleにとってオープンソースは極めて重要なのだという。Googleは使用しているサーバー数を公表していない。それ故、DiBonaは講演では「20台のコンピューター」と言い、サーバー台数に応じた使用料を支払う必要のないソフトウェアを利用できることは重要だと言うのである。

また、GoogleがOpenSolarisの使用をテストしているという報道に触れ、Googleの技術者がOpenSolarisで何をしようと勤務時間の20%以内であれば問題はない。その範囲であれば自由に自分のテーマを追究してもよいことになっている。しかし、GoogleがLinuxを捨てることはありそうもないと述べた。

因みに、Waughは、DiBonaが予定していた1時半からのコマには間に合った。

基調講演の後は、10時から6時まで一般講演が続く。セッション後の15分間の休憩では、参加者たちが談笑したり、展示を見たり、次の講演に備えて手洗いを済ませたりしていた。

こうしたカンファレンスの予定というものは、どれほどよくできたものであっても、選択に迷うことがあるものだ。筆者は、Matthew Porterの「Using Linux in Embedded Systems」か、Jorge Castroの「The Integration Holy Grail」かで迷ってしまった。どちらも、午前10時から始まるコマに割り当てられていたのだ。結局のところ、Castroの講演を聴くことにした。

内容は、LinuxシステムとWindows Active Directory実装とを統合する話だった。オークランド大学でLinuxデスクトップに統合したときの経験が、豊富な例と、異例とも言える組み合わせを実現する上での構成上のちょっとした留意点を交えながら語られた。

WindowsとLinuxの統合は、今ホットな話題のようだ。会場には数百人が詰めかけ、LinuxシステムでActive Directoryの認証を得る方法について熱心に耳を傾けていた。

Apacheについて知りたかったことのすべて

Apacheに長年関わってきた筆者としては、Richard Bowenの「20 things you didn’t know you could do with your Apache Web server」を見逃すわけにはいかない。実際、どの講演よりも学ぶことが多かった。もっとも、2つはすでに知っていたことだったが。

Apache 2.xのキャッシュ機能とmod_deflateを利用してパフォーマンスを改善する方法、mod_spelingという思わせぶりな名前(正しい綴りはspelling)が付いているApacheモジュールを使うとURLが多少違っていてもコンテンツを入手できるようになること、Apacheのディレクトリー・インデックス・ページ用のスタイルシートの作成など。総じて言えば、講演は情報満載で、楽しいものだった。

Michael Johnsonの講演は、rPathのrBuilderとConaryパッケージ管理システムの話だった。rBuilderシステムはrPathのオンライン・ツールで、ConaryとrPath Linuxを使ってカスタム・ディストリビューションを製作できる。コア・オペレーティング・システムではなく、そのディストリビューションの特長に注力できるよう、rPathをできる限り「平凡な」作りにするというのが眼目なのだという。

この講演も総じて楽しいものだったが、Conaryについてもう少し詳しい話を聞きたかった。講演の大部分はrBuilderに関するもので、筆者にはConaryの仕組みの方に関心があったのだ。

行くだけということもあるさ

カンファレンスには、講演者が来場できなくなったり講演を取り消したりすることが必ず発生するものだ。実際、筆者が出かけたトレードショーで出展取り止めが全くなかったものは一つとしてない。このカンファレンスも例外ではなく、終盤に予定されていた講演者2人が参加できなくなった。そこで、BowenとKim Brandが代役に立ち、それぞれApacheのmod_rewriteについて、Linuxの学校への普及について講演した。

BrandはServer PartnersのCEOで、昨年のカンファレンスで講演した。今年は選ばれなかったが、カンファレンスには参加していたのだ。予定されていた講演者が登壇できないことが判明した後――予定時刻の1時間ほど前だ――、主催者側のMike Meffieから講演を要請されたBrandは、間際にもかかわらず快諾した。曰く、「来年は正式に講演したいものだ」

rPathのMichael Johnson – 写真をクリックするとFlash形式のビデオが、ここをクリックするとOgg形式のビデオが見られます

展示

講演会場の直ぐ隣には小さな展示室があり、企業や.org が展示していた。IBM、Digium、Novell、Astaro、Sun Microsystems、ImageStreamなどの後援企業が参加者に製品を紹介していた。

セッションの合間を縫って展示会場を回りながら、出展しているベンダーや.orgの人たちと話をした。それで気づいたのだが、GNOMEとFree Software Foundationのブースが、ほとんどの時間、セッション中でさえ混み合っていた。Linux Link Tech Showのブースも同様。

League of Professional System Administrators(LOPSA)のStephen Potterと話す機会があったので、昨年発足以来の活動を尋ねてみた。会員は約1,000名に増え、アリゾナ州フェニックスに支部第1号を設立したという。発足時は離陸できるかどうか危ぶんだが、どうやら飛び立つことはできたようだ。

昨年見た顔もたくさんいたし、昨年やその前のカンファレンスで会った人と話もした。年に1度か2度しか会わない人たちと直ぐに顔馴染みになってしまうのは一体どういうわけだろう。

大物は最後に登場する

講演が目白押しで土曜日であることから、午後6時ともなれば、参加者が激減しても不思議ではない。しかし、多くの人たちが、イベントの最後を飾るペンギンたち、そしてHallの閉幕講演のために残っていた。

ペンギンのプレゼンテーションは、実行委員会メンバーのBeth Lynn Eicherが、カンファレンスの準備作業の傍ら企画したもの。コロンバス動物園の飼育係が2匹のSpheniscus Demersus(ケープペンギン)を連れてきて、ペンギンの種について簡単な解説をし、壇上のつがいJBとPunkyの経歴を説明した。

フラッシュをたいてもよいが、近づきすぎたり触れたりしないようにという注意を主任飼育係から受けた後、数十名がステージを囲んだ。そして、このプレゼンテーションは膨大な数の写真に収まった。ペンギン・プレゼンテーションの最後に設けられた質疑応答では、筆者が参加したセッションのどれよりも多くの質問が出された。

ペンギンがステージを去った後、筆者は光栄にもペンギンが残した「落とし物」を踏みつけ、人々をパニックに陥れてしまった。

最終講演で、Hallは、まず自身のコンピューターを巡る経歴を紹介してから、プロプライエタリ・ソフトウェアは「何かの間違い――レーダースクリーン上の小さな点です。未来はフリーソフトウェアにあります」と述べた。次いで、個人や団体がオープンソースに改宗する段階を説明した。それはオープンソースを知ることから始まり、オープンソースを他の人に奨める段階で終わる。

Hall は「目に見えない」プロジェクトを始めるよう説いたが、今使っているプロプライエタリなシステムが問題なく動いているなら、高価なハードウェアを使っているのでない限り置き換えるべきではないとも述べた。そして、Microsoftの総所有コスト(TCO)に関する主張を取り上げ、ソフトウェアの配備では総所有「価値」を見るべきであり、重要なことは、特定のアプリケーションやシステムが最終利益にどう結びつくかであって、導入費用ではないと語った。

コロンバス動物園のペンギンたち – 写真をクリックするとFlash形式のビデオが、ここをクリックするとOgg形式のビデオが見られます

懇親会

Hallの講演の後、実行委員会メンバーのGreg Boehnleinが閉会の辞を述べ、ボランティアと講演者、カンファレンスの実現を可能にした後援企業に謝意を述べた。そして、Holiday Innで開かれる懇親会に参加するよう参加者たちに呼びかけた。この懇親会は、NOTACONイベントも手がけた「カエル」ことPaul Schneiderと「トラ」ことJodie Schneiderが企画したものだ。

筆者も少しだけ顔を出したが、疲れ果て、何時間もしないうちに脱出した。集まった人たちは、幾つかの部屋とHoliday Innのバーに分散して、飲み、つまみ、大方はLinuxなどについて語り合って楽しんだようだ。

昨年の参加者は750名だったが、今年の公式最終集計は1,061名だった。実数は1,200に近いだろうと思う。参加自由であり、受け付けを通らない人もかなりいたからだ。

Ohio LinuxFest 2007 の日程はすでに9月29日と決まっており、今年よりも更によいものにしようと検討が始まっている。ご参考までに、今年の様子はウェブに写真が掲載されている。また、LinuxFest blogに、来年のカンファレンスに関する情報がある。

見た目ほど簡単な仕事ではない!

あらかじめお話しておきますが、私は今年のOhio LinuxFestに単に参加しに来たのではありません。昨年、Ohio LinuxFest 2005に参加したとき、このカンファレンスと彼らの仕事にとても感動しました。そこで、今年は何か手伝いたい、何ができるだろうかと考え、その結果、広報活動を手伝い、講演担当グループに加わったというわけです。

活動中は、このカンファレンスの準備作業を隅から隅までつぶさに観察するようにしました。たった1日のイベントですが、その1日を滞りなく進めるには多くの仕事が必要です。準備はほとんど1年がかりなのです。

コンベンション・センターの予約は開催日のずっと前ですし、支払いも遥か前。ですから、後援企業の顔ぶれが決まるよりも随分前に数千ドルを手当てしておかなければなりません。

後援企業探しと交渉も大変な仕事です。予算の管理に直結しますから。講演者の選択と意志の確認、パンフレットの編集、ウェブサイトの管理、当日手伝ってくれるボランティアの準備などもあります。イベントを成功させるには多くの仕事が必要ですが、それ以上に驚くのは、このカンファレンスを運営する人たちが全員ボランティアだということです。

カンファレンスの当日、午前6時半頃、ボランティアたちがGCCCに集合し、最終の準備作業を行い、混雑が予想される受け付けを整えました。Chris ClymerとScott Merrill、そして数名のボランティアの働きで、午前8時の開始時刻までに受け付けはすっかり整いました。

最高のイベント・プランナーがどれほど周到に準備したとしても、イベントでは予期せぬことが起こるものです。他のイベントと重なり、LinuxFestが開催される週末は、GCCCに併設されているホテルは満杯でした。そのため、遠方からの参加者はGCCCから9ブロックほど離れたHoliday Innに宿泊することになりました。あるいは、数キロ離れたMidwest Hotelです。しかし、両ホテルとコンベンション・センター間にはシャトルバスがあり、参加者がGCCCに来るのにさほど手間はかからなかったでしょう。

NewsForge.com 原文